0719 理科教師のための作問入門(3) 事実的な知識

 前回、活用する知識もあるんだ、だから活用していれば思考・判断・表現になるんだ、という時代は終わった、という話をして、とどめに令和4年度の学力調査の「知識」の説明に「活用」の2文字があることを確認しました。

「事実的な知識」の問題では,自然の事物・現象についての基礎的・基本的な理解を問う。「知識の概念的な理解」の問題では,「事実的な知識」を既有の知識と関連付けたり活用したりする中で,他の文脈で活用できる程度に概念等を理解しているかを問う。

 が、これを読むと、「知識」の問題というのは大きく2つ、「事実的な知識」の問題と「知識の概念的な理解」の問題とに分けられることが分かります。
 今日はここを深く掘り下げてみましょう。

 「事実的な知識」については、平成30年度の全国学力調査の主な視点・知識の説明

知識の問題では、自然の事物・現象についての基礎的・基本的な知識と理解を問う。

 がそっくりそのまま移動した感じですね。ただ、よくみると30年度版には「基礎的・基本的な知識と理解を問う」とあるのに対し、令和4年度版では「基礎的・基本的な理解を問う」となっており「知識と」が消えています。

 これに対しては解釈が2つ考えられます。
 一つは、「理解」という言葉の中には、「知識」を含んでいるという解釈。例えば「水素の元素記号はHである」といえば知識のようにみえますが、「水素の元素記号を書きなさい」という問題にHと書ければ、「水素の元素記号がHであることを理解している」といえなくもないですよね。さすがに活用とか概念まではいえませんが。
 もう一つは、全国学力調査では基礎的・基本的な知識を問う出題(乱暴に言うと知識を暗記したかしていないかを問う出題)はしないことにした、という解釈。例えば、平成30年度だと、目→[X]神経→脳・脊髄→運動神経→筋肉 の[x]に適する語句を書かせる問題がありましたが、令和4年では「知識」の問題ですら、感覚神経のような用語を覚えていれば瞬殺!のような問題は影を潜めてしまいました。
 唯一、次に掲げる、6(1)のXだけなら玄武岩は火成岩と覚えていれば瞬殺です。しかし、この問題はXY両方あってて初めて○になります。「火成岩では化石は観察できるか?」ときかれれば、実際に掘りに行く系の地学ガチ勢でもない限り、即答できる中学生はいないでしょう。つまり、Xはよくても、Yについてはそれなりに知識を活用する(考える)必要が出てきます。

青木さん:玄武岩は[ X ]だから,化石は[ Y ]。
(1) X , Y に当てはまる適切なものを,下のア,イの中からそれぞれ1つずつ選びなさい。
X  ア 火成岩      イ 堆積岩
Y  ア 観察できます  イ 観察できません

 作問という本来のテーマに戻すと、このような基礎的・基本的な(知識と)理解、いうなれば用語などを覚えて再生するタイプの問題は、簡単に作れてしまいますよね。

 でも、わざわざこのような場末のブログのマニアックな記事を読みにきている皆様におかれましては、こんな問題を作ったぐらいでは満足できませんよね。

 そう、「知識の概念的な理解」にいってみましょう。

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