0741 【日本の気象3】日本の天気の特徴3 梅雨と秋雨

　梅雨の天気についてはおおかた停滞前線のところでふれてしまいました。

　停滞前線を学習したときは、まだ気団について習っていませんでしたからふれませんでしたが、あそこで「暖気」とはずばり小笠原気団のことで、「寒気」はオホーツク海気団のことです。
　そしてこの小笠原気団とオホーツク海気団の勝負ですが、じりじりと小笠原気団が勢力を増す一方で、オホーツク海気団が衰え、前線を押し上げたり消滅したりして梅雨明け、そして夏になります。
　なお、9月頃の秋雨もほぼ同様な停滞前線(秋雨前線)の仕業ですが、寒気側がオホーツク海気団のときもあれば、シベリア気団のこともあります。（揚子江気団というか移動性高気圧がからむこともあります）
2021年6月20日の天気図

　と、いうことで

　梅雨の天気というのは、北のオホーツク海気団（オホーツク海高気圧）と南の小笠原気団（小笠原高気圧）の勢力がほぼつり合っているので東西に長くのびる停滞前線ができる。これを梅雨前線と呼ぶ。
　前線がずっと停滞しているので、その地域ではずっと雨が降る。これが梅雨。
　7月ごろ小笠原気団の方が勢力が強くなって、梅雨前線は北上してやがて消える。これが梅雨明けで、晴れて日本は小笠原気団の支配下（夏）になる。
　また、9月ごろにも小笠原気団が衰え、梅雨の時と同じように東西に停滞前線ができることがある。これが秋雨前線で、北側の気団はオホーツク海気団の他、シベリア気団の場合もある。

　梅雨の時期の典型的な天気図と合わせて、これだけ知っていれば中学理科で梅雨の天気については完璧でしょう。高校入試はらくらくクリアできるでしょうし、何だったら共通テストの地学基礎もいけちゃいます。

が、気象予報士の俺から言わせてもらえば今、気象予報士の間での基礎知識はやっぱり、
梅雨の気団はオホーツク海気団vs小笠原気団とは限らない、これだね。
で、それに寒冷前線や温暖前線だって梅雨の時期に雨を降らす。これ最強。

１．梅雨の気団はオホーツク海気団vs小笠原気団とは限らない
　この天気図を見てみましょう。2021年5月5日、沖縄・奄美が梅雨入りした日の天気図ですが、この後この前線が梅雨前線になっていきます。それはさておき、この寒冷前線から停滞前線になっている前線の北側に1020ｈPaの高気圧がありますが、これ、オホーツク海気団（オホーツク海高気圧）でしょうか？

　これをオホーツク海気団（オホーツク海高気圧）と呼ぶにはいくらなんでも無理がありますね。遠すぎます。

　ここからは気象庁気象研究所の資料がわかりやすいので利用します。「平成 24 年 7 月九州北部豪雨」の発生要因について …この資料の2ページにある　図１梅雨期に豪雨をもたらす仕組みを見てみましょう。
　オホーツク海高気圧と小笠原高気圧は高気圧（一応括弧付で気団名も併記している）なのに、大陸気団は気団として登場しているところにこだわりを感じます。
　その「大陸気団」とぼやかしていますが、これはあの「揚子江気団（気象庁の用語としては「長江気団」）」だったりするからまたたちが悪い。
　さらに細かいことを言うと、熱帯モンスーン気団という日本付近の4つの気団とも、そして赤道気団とも別の気団が絡んでくるのですが、詳しくは色と形で気象予報士！のサイトで詳しく分けて説明してくれています。

２．寒冷前線や温暖前線だって梅雨の時期に雨を降らす
気象庁では、天気予報の用語としては

梅雨前線　春から盛夏への季節の移行期に、日本から中国大陸付近に出現する停滞前線で、一般的には、南北振動を繰り返しながら沖縄地方から東北地方へゆっくり北上する。
秋雨前線　夏から秋への季節の移行期に、日本付近に出現して、長雨をもたらす停滞前線。

としています。

　ということで、「梅雨前線」という用語の定義は停滞前線であることをを前提としていますが、「梅雨という気象現象をもたらす前線」ならば、停滞前線とは限らず、温暖前線や寒冷前線になっていることもあります。
　例えば、次の天気図にある温暖前線や寒冷前線は、梅雨という気象現象をもたらしているといっていいですよね。用語の定義上は「梅雨前線」ではないですが。
2021年6月28-29日の天気図
2021年7月4-5日の天気図