1195 理科室の消火用品① 消火器

 この記事の内容の一部は 山口晃弘編著「中学校理科 指導スキル大全」明治出版,2022に「理科室での安全を環境面から整備するスキル」というタイトルで触れてあります。
 7ジャンル70本のすぐに使える授業技術が完録されており、授業だけではなく教科経営等の面でも役に立つ本なのでおすすめです。

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 火事で初期消火をするものといえば、まずなんといってもお馴染みの消火器ですよね。
 ふだん当たり前のようにある消火器ですが、消火器にも守備範囲や中の薬剤に種類がありますのでチェックしておきましょう。

 中の薬剤は水、強化液、泡、ガス、粉末などいろいろなタイプのものがあります。粉末と強化液を比べると、粉末の方が消火能力は高いですが後始末が大変。強化液はお掃除は楽ですが、消化能力はやや劣ります。

 また、消火器の守備範囲を説明するには、そもそもどんな種類の火災があるかを知らなくてはなりません。火災の種類と消火に向いた消火器についてみていきます。

 A火災は普通火災で、木材、紙類、繊維などの普通の可燃物の火災です。
なので水で消せる火災で、強化液、水、泡、そして粉末系の消火薬剤を使用している消火器が使用可能です。

 B火災は石油や調理油などが燃える油火災です。A火災と違って、水では消火できません。水をかけると油で巣から水に浮いてしまい、かえって火を拡散させてしまうためです。B火災を消火するための作戦戦略は酸素の供給を断つ「窒息消火」です。霧状の強化液、泡、ガス系、粉末系の消火剤を使います。

 C火災は、電気設備やコンセントなどから発火する電気火災です。消火に当たっては火も怖いですが、感電も避けなければなりません。そのため消火にはガス系、粉末系が使われます。水や消火液などを使う場合は棒状注水はダメで、やるとしたら霧状にして攻めるしかありません。泡も感電の危険があり使えません。

 これらABCの火災に対応したABC消火器を置いてある学校などの施設も多いでしょう。

 しかし、ABCは知ってても、それだけじゃ困ります。火災の種類はABCの他にもあるのです。
 金属火災はマグネシウムやチタン、タングステンなどの金属(特に金属粉)による火災です。これはちょっと手ごわい。
 金属の活性面(化学反応を起こすことのできる面)と空気中の水分が反応して発火するので、水系の消火材は論外、二酸化炭素も若干の水分を含むのでアウト(マグネシウムとか二酸化炭素中で燃えるしね)、粉末消火器も勢いよくかかると、金属の表面が空気と酸化して燃焼が弱まると思ったところに、いい具合に金属をかき混ぜて未反応の金属と空気を出あわせてしまうのでこれも厳しい。なので消火には、金属火災用の粉末消火剤か,乾燥砂などを用い、窒息消火を狙います。

 マグネシウムの火災については、このブログでも「マグネシウムに水をかけてはいけないのは」「消防技術安全所一般公開」などで取り上げています

これも読んでおこう
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マグネシウム火災に対する金属火災用消火薬剤及びABC 火災用粉末消火薬剤の消火効果に関する検証
金属スクラップ堆積物の火災事例と問題点
いかん、無駄に熱く語ってしまった…。

 ガス火災は都市ガスやプロパンガスなど、可燃性ガスの火災のことです。

 なお、金属火災は「D火災」と呼ばれることがありますが、法令上用語としてあるのはAとBだけで、「C火災」ではなく「電気火災」と呼ばれています

 あと、消火器は、中にある消火剤の有効期限もありますので注意しましょう。もっとも、学校にある消火器だったら、然るべき部署が期限が切れる前に交換するでしょうが…。