硼砂に続いて珪砂、石英砂です。こちらも「けいしゃ」「せきえいしゃ」と読みます。
珪砂と石英砂
ネットを調べてみると、複数のサイトで「ケイ砂は二酸化ケイ素(SiO2)の成分が高い石英砂の総称」と石英砂の中で純度が高い物を珪砂というと包含関係の説明をしているところもありますが、試薬会社のカタログとSDSを見ると、①名称は会社によって「石英砂」(キシダ化学、国産化学、富士フイルム和光純薬、ナカライテスク)のところと「珪砂」(関東化学、米山薬品)のところがあり、②「石英砂」でもSiO2が99%以上となっているので、特にこだわらなければ 珪砂=石英砂 と考えて困ることはないでしょう。
ただし宮崎化学薬品は「海砂、硅砂、石英砂の販売に関しては創業以来永年の実績を有しております。」と並ならぬこだわりをもっていらっしゃいます。ということで宮崎商店(宮崎化学薬品の前身:1954-1964)の珪砂。
二酸化ケイ素
そもそも珪砂ってのはどうやって作られているのかというと、大きく天然珪砂と人工珪砂で分かれていて、天然珪砂は花崗岩が風化して堆積し、地層や砂浜になったものを採取したものです。人工珪砂は石英やチャートなど、珪酸質の鉱物や岩石(まとめて「珪石」と呼びます)を粉砕して作ります。
ということで、珪砂にしろ石英砂にしろ主成分は二酸化ケイ素SiO2(CAS No. 7631-86-9)、中でも、特定の結晶構造により石英(CAS No.14808-60-7)になっている二酸化ケイ素を主成分とする砂ということになります。
シリカ
また、二酸化ケイ素は「シリカ」ともいわれます。ただこれには注意が必要です。最近は健康とか美容によいということで「シリカ水」などが登場していますが、ここでの「シリカ」は元素としてのケイ素やケイ素単体のことを指している説明も散見されます。ま、それ以前に…(ry
そして、このシリカ(二酸化ケイ素)をゲル状にしたものがあのシリカゲルです。
危険性
1~10ミクロン程度の珪砂(遊離シリカ)は、人間の肺に入って沈着したまっていくことで、病気を引き起こします。これが「珪肺」です。鉱山労働者や石工などは、職業上このような遊離シリカを吸い込むことが多いので、それが何年も続いていくうちに珪肺になるのです。
さらに遊離シリカを吸い込み続けることによって肺がんも引き起こします。珪砂(石英砂)のSDSを見ると、GHS基準による発がん性のリスクの格付けは、最も高い「区分1A」(人に対する発がん性が知られている:主として人での証拠により化学物質をここに分類する)になっています。
とはいえ、ここまでの状況になるのは、それを仕事にしていた人のようにそれなりの期間にそれなりの環境にいた人でないとここまでの悪影響は考えにくいといえます。だからたとえば高校の生物の実験で使った程度、珪砂で1回砂遊びした程度では気にする必要はないでしょう。
カタラーゼの実験
中学では石英砂が登場する場面はないのですが、高校の生物の実験で使われることがあります。
酵素であるカタラーゼは過酸化水素を酸素と水に分解する触媒の働きがあります。でも、過酸化水素を酸素と水に分解するのなら無機物ですが二酸化マンガンも同様ですね。そこで、いろいろな条件で過酸化水素が分解するか否かを調べて有機触媒である酵素の特徴を見出そうという実験です。
そのとき、対照実験としてカタラーゼや二酸化マンガンの代わりに石英砂を加えて過酸化水素が分解するか調べるのです。(もちろん分解されません)。ぶっちゃけ石英砂じゃなくてもいいじゃん…。
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