1847 中学理科で解ける 東大大学院入試

2025年1月19日

 「中学理科で解ける 共通テスト」シリーズもありますが、もっとインパクトのあるものはないかと探してみたら、ありましたよ。天下の東大。それも大学院。東京大学 大学院理学系研究科 化学専攻では、大変親切なことに、平成20年度からの大学院入試の過去問を掲載しております。

 で、この中から中学理科で解ける問題はないかと探したわけです。そんなもんあるかい!と思うでしょうがちょっと前向きになれそうな話題を2つほど。
 東大は「学部」(文科1類とか理科3類とかいうアレですね)で入るには多くの人にとっては確かに大変でしょう。だけど得意分野と募集人数(学部生がどれだけ進学するかも関係しますが)の巡りあわせがうまくいけば、他大の学部に進学した学生が大学院で入った方が、学部から東大に入るより相対的にハードルが低いことがままあるんですよ。まぁ学歴ロンダリングとも揶揄されてるわけですが。
 そして、外部の方にとって意外かもしれませんが、大学院の入試問題は学部1年・2年で学ぶ内容が多いと言われています。一つの専攻といっても、たくさんの研究室があり、それぞれに研究内容が異なりますから、1,2年生で履修するような内容は、その学科の学生でも「知ってて当然」な基礎・基本ですから3年で多くある選択科目っぽい内容よりはフェアであると言えます。

 ええ、それでも、高校理科ならまだしも、中学理科で解ける問題があるのか、という疑念はまだ多く残っていますよね。たしかに、物理・化学・生物領域は難しいでしょう。ということは…
 はい、中学理科で解ける問題が実際にあるんですよ。
 そう、iPhone地学ならね。

 共通テストも地学基礎や地学は中学理科で解ける問題は多くありました。そして高校で地学の履修率が大変低い(地学基礎はもはや共通テストで使う文系のための科目ですからね…)ので、高校地学を履修しないで大学で理系の学部に来る人も多いでしょう。そうすると大学とはいえ地学(地球科学)の基礎的な講義では、高校レベルの地学、もっというと中学理科で解ける地学が入り込む余地が少なくとも物理・化学・生物よりは格段に大きいわけです。

 てことで、地球科学基礎だけざっとチェックしてみました。

実際の問題を見てみましょう

 なお、模範解答は公表されていないようなので、解答は私が試しに書いてみたものです。

H21 地球科学基礎

 以下の文章は、地球上での生物活動の歴史を述べている。AからJに入る語句か数字を答えよ。 

 地球が太陽系の一員として誕生したのは約(A)億年前で、…(略)…中生代に入ると温暖な気候が続き、新しいタイプの生物が現れた。海で繁栄した(H)や、陸上で多様化した(I)が、この時代の代表的な化石生物である。…(略)…6500万年から始まる新生代は中生代に比べると寒冷化し、第四紀には氷期と間氷期を繰り返している。動物の世界では(J)類が多様化し、人類へとつながり、植物では裸子植物に変わって被子植物の多様化が進んだ。

 文章は中学理科で答えられる部分のみ掲載しております。また、実際の問題は、文中に引かれた下線部分に応じた設問もありますが、ここでは省略しました。

(A)46 (H)アンモナイト (I)キョウリュウ (J)ホニュウ

H26 地球科学基礎

(1) 火山岩と深成岩の違いについて、岩石の組織の観点から50字程度で述べよ。

 つまりこれは斑状組織と等粒状組織のことを述べればいいわけですね。うっかり詳しく書いてしまうと50字を大幅に超えてしまいますので気をつけましょう。

火山岩は大きい結晶(斑晶)と小さい結晶(石基)がある斑状組織だが、深成岩はすべて大きな結晶の等粒状組織である。 55字

H27 地球科学基礎

(2) 地球科学に関連した次の用語を(  )内のコメントに留意して150字程度で説明せよ。
 (i) 示準化石(化石の例も挙げよ)

(2)は示準化石を含めた5つの用語についてそれぞれ150字程度で説明する問題でした。他の用語はたしかに字数が150字くらい必要かな、と思うのですが、示準化石については端的に説明してしまうと、100字にすら遠く及びません。化石の例をたくさん挙げるなど、地道な字数引き伸ばし工作が必要な問題です。

地層が生成した年代を推定するのに役立つ化石が示準化石である。広範囲で生息していたが、短期間で進化または絶滅したため時代の特定がしやすい生物が用いられる。サンヨウチュウやフズリナなどは古生代、キョウリュウは中生代、ビカリヤは新生代第三紀、ナウマンゾウやマンモスは新生代第四紀の示準化石の例として知られる。 151字

 ということで、字数を確保するために、流行のあいつの話も入れながら、多くの例を挙げてみました。なお、アンモナイトがないじゃん!というツッコミがありそうですが、アンモナイトといえば中生代と中学校では学習しますが、アンモナイトは古生代のシルル紀に出現していたので、高校入試ならともかく大学院入試で「アンモナイトは中生代の化石」と明言するのは減点される危険性があるので避けました。平成21年ではアンモナイトは中生代と言っていましたが、念のため…

H30 地球科学基礎

(3) 以下の語句(i)~(l)について、各用語の違いが分かるように、それぞれ100~200字程度で説明せよ。
 (i)火成岩と火山岩

 やったな。ちゃんと過去記事でやったな。まずは、火成岩の説明と火山岩の説明を逆にしないように気をつけような。両者の関係、火成岩⊃火山岩 というところも触れておきたい。
 ここからは解答を作ってみてちょうだい。

R5 地球科学基礎

(2) 地球科学に関連した①~⑦から3つを選び、各用語の違いが分かるようにそれぞれ100字程度で説明せよ。必要に応じて図を用いてもよい。図は字数に含めない。
④花崗岩と流紋岩
⑥正断層と逆断層

④どちらも白っぽい、すなわちSiO2の多い火成岩ではありますが、花崗岩は深成岩、流紋岩は火山岩です。両者の違いはH26で説明した通り。写真ものっけておきます。


⑥「断層」は指導要領にあるものの、正逆についてまでとなると範囲外です。なので中学理科で解けないといえば解けないのですが、せっかく過去記事で熱く語ったので取り上げてみました。 

試験問題研究

Posted by rikaniga