「君たちはどう分けるか」シリーズは、もう2年以上前に(4)で完結したつもりでしたが、ちょっと気になることがあったのでメモしておきます。
中学校学習指導要領(平成 29 年告示)解説を見ると、第2分野(1)いろいろな生物とその共通点(ア)生物の観察と分類の仕方「生物の特徴と分類の仕方」についての学習指導要領を見ると
㋑ 生物の特徴と分類の仕方について
小学校では,生物は色,形,大きさなど,姿に違いがあること,昆虫の成虫の体は頭,胸及び腹からできていること,植物の体は根,茎及び葉からできていること,動物の誕生について学習している。
ここでは,いろいろな生物を比較して見いだした共通点や相違点を相互に関係付けて分類できることを理解させることがねらいである。
いろいろな生物を分類するためには,見いだした共通点や相違点などを基に,分類するための観点を選び,基準を設定することが必要であることを理解させる。また,この観点や基準を変えると,分類の結果が変わることがあることを見いださせ,幾つかの分類の結果を比較することを通して,生物の分類の仕方に関する基礎を身に付けさせる。
例えば,親しみのある 20 種類程度の生物を挙げさせて,これらの生物が生息している場所や,活動的な季節,色,形,大きさなどの姿,殖え方,栄養分のとり方などの特徴に基づいた観点で分類の基準を考えさせる。生息している場所を観点とした場合には,水中や陸上などを基準として設定することが考えられる。その後,別の生物を当てはめ,用いた観点や基準で分類できるかどうかを考えさせたり,他の観点や基準を検討させたりすることなどが考えられる。その際,分類の結果を分かりやすく表現させるようにする。これらの学習活動では,話合いや発表を適宜行わせることにより,思考力,判断力,表現力等を育成することが大切である。
なお,ここでの分類は,観察及び資料等から見いだした観点や基準を基にして行わせるものとし,目的に応じて多様な分類の仕方があり,分類することの意味に気付かせるような学習活動を設定することが重要であり,学問としての生物の系統分類を理解させることではないことに留意する。
と、観点、基準という言葉が7回ずつ登場してやたらに強調しています。
この観点と基準という言葉は、分類表の三つの要素における区分原理と区分肢に相当します。厳密にいえば基準は区分肢どうしを分ける線引きです。
被区分体はスルーされていますが、ここでは生物を分類することが前提となっているため、あえて口にする必要はないでしょう。
いちばん大事なのは、区分肢です。「赤と青に分ける」「燃えるごみと燃えないゴミに分別する」みたいに区分肢、つまりどんなグループに分けるかは明記しなければ分類ができません。
では、観点こと区分原理は?「赤と青に分ける」と言われれば「色で分けたな」とわかりますし、「燃えるごみと燃えないゴミに分別する」と言われれば「燃えるごみか燃えないゴミかで分けたな」と明確にわかります。(ちなみに「赤と青に分ける」だけでは何を分けるか、被区分体はわかりませんね)
なので実用上は 区分肢>被区分体>区分原理 の順に重要になってきます。
ただ、指導要領では観点と基準にこだわっています。これは一般的な分類の話ではなく、あくまでも生物を区分し、体系化していくため、生物がもつ様々な特徴から1つ選んで観点とし、それぞれの生物がどうなっているか、共通性の視点でまとめ、基準(区分肢)を作る、ということなのでしょう。
なお、中学生に基準はともかく観点は少し固い感じがします。ここでは分類ができるスキルを身につけることを目的としたいですから、あまり用語にこだわるのも違いますから、観点は「どんな特徴に注目するか」、基準は「どんなグループをつくるか」とできそうです。
また、分類である以上、区分体系を完璧にするならば区分肢にもれやダブりがあってはいけませんし(この区分肢に該当する生物はない、といえるのならもれがあってもいいのかもしれませんが)、基準も厳密にきちんと分けられるものでないといけません。とはいえ、オレンジ色の花を「赤」「黄」どちらのグループに入れるかとか、陸上と水中の両方で生活できる動物はどう分類すればいいのかとか、中1ということもあり厳密にはできないところもあります。
0010 君たちはどう分けるか(2) で登場した論文も再掲しておこう。
緑川信之、「分類をみつめなおす:区分原理に注目して」『情報の科学と技術』 2016年 66巻 6号 p.254-259, doi:10.18919/jkg.66.6_254, 情報科学技術協会
まぁ、ここでいろいろな分け方で生物を分けても、結局その分け方は次の授業からは使われず、学問としての生物の系統分類で進められるのは惜しいところです。とはいえ、使い道がないし…
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