0466 【物質の成り立ち2】物質の分解2 酸化銀の熱分解
炭酸水素ナトリウムに続いて、酸化銀を加熱してみよう。どんな変化が起こるかな。
課題:酸化銀を加熱するとどのような変化が起こるだろうか。
酸化銀というのはこんな黒い粉末です。
これを単三乾電池で形を作ったアルミ箔の「船」に入れ、「船」ごと試験管に入れます。
試験管には気体誘導管をつけ、水上置換で発生した気体をキャッチできるようにしておきます。
そのうえで試験管の中にある酸化銀をガスバーナーで加熱します。
酸化銀の黒い粉末はどうなるでしょうか。
白くなりました。
この白い物質は電流を通します。
そして薬さじの後ろ側でこすると、光沢が見られました。
一方、集まった気体はどうでしょうか
【考察】
酸化銀を加熱してできた白い粉末は、電流を通し、磨くと光沢が見られたところから金属であると考えられる。酸化銀という名前から銀ではないだろうか。
気体に火のついた線香を入れたら炎を上げて燃えたため、酸素だと考えられる。
したがって酸化銀は加熱によって銀と酸素に分解されたといえる。
結論:酸化銅は加熱によって銀と酸素に分解された。
余談1 分解の実験で生徒実験をするのは炭酸水素ナトリウムと酸化銀ではどちらがいいのか
酸化銀の熱分解では、黒い酸化銀が白い物質になったということで、加熱することで別の物質ができたのだな、とはっきりわかります。また、酸素と銀という2つの物質ができる、シンプルな化学変化です。
一方。炭酸水素ナトリウムは、加熱しても同じような白い粉末が残り、見るだけでは違う物質になったことが分かりません。また、二酸化炭素。水、炭酸ナトリウムと3つの物質ができ、酸化銀に比べると複雑な反応です。
そうすると、「物質が別の物質に分解された!」と生徒が考察しやすい実験は酸化銀だ、ということはわかると思います。だから積極的に生徒実験をしてみたい、炭酸水素ナトリウムは応用編だ、ということになるはずです。
ところが、すべての教科書では炭酸水素ナトリウムだけが生徒実験としてとりあげられており、あまつさえ酸化銀の熱分解の実験が難しい炭酸水素ナトリウムの熱分解のあとに紹介されている教科書さえあります。
これはどういうことでしょうか。答えは簡単。お金の問題です。酸化銀は時価ではありますが、25gで安くても6000円を下回ったことは見たことがなく、高ければ1万数千円となります。
で、1回の実験で使う酸化銀は1.0g。それを生徒の班の数だけ用意するとなると、2年生が4クラス以上ある学校や、1つの実験班を2人や3人としている場合、25gでは足りなくなりそうですね。
かといって1回の実験に使う酸化銀の量をケチると、酸素が十分に発生せず、線香が炎を上げて燃えてくれないリスクが生じます。
ということで酸化銀を生徒実験で使うことはなかなか厳しそうです。
これが炭酸水素ナトリウムなら、試薬でも1000円代ですが、わざわざそんなもの使わなくても、100均売っている重曹で実験は十分うまくいきます。
さらに重曹ならカルメ焼きやホットケーキなどを膨らませるベーキングパウダーの成分として使われていますから、生徒が興味をもつ導入としても都合がいいわけです。
かくして、教科書には炭酸水素ナトリウムの熱分解が生徒実験として大々的に扱われ、いろいろなところを問題にできるので、入試でもよく登場する実験となるのでした。
余談2 銀を簡単に酸化銀にする方法ないでしょうか。
この実験やっていると銀ができるのですが、その価値とは裏腹に使い道がありません。一方、この実験をやるには25gで6000円程度する酸化銀を買わなくてはなりません。なので、実験済みの銀をうまく酸化銀にできればわざわざ高い酸化銀を買わなくてよいのですが…
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