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0541 有機物の燃焼の化学反応式

 化学反応式で係数を合わせる作業というのは、初めて学ぶ中学生にとっては、難しそうなイメージがある一方で、実際にいくつか化学反応式をつくってみると、もっと他にやってみたい、できれば複雑な化学反応式の係数を合わせてみたい、という主体的に取り組む生徒も少なからず出てきます。
 最初にどの元素に着目するかで難易度が大きく変わってくるため(しかも着目すべき元素の選び方が言語化されていないため、それを習うことなく、慣れることでなんとなくわかっていくような一種の数学的センスに依存するため)一種のパズルを解くような面白さがそこにはあります。その面白さの本質が、自分は化学反応式という一見難しそうなものをつくることができることによる一種の優越感自己肯定感だとしたら、化学反応式の中でもどんどん複雑そうなものを解いてみたくなるのも納得のいくところです。

 とはいえ、例えば炭酸水素ナトリウムの分解や酸化銅の還元の化学反応式を作るのは、反応物だけでなく生成物もわからないと化学反応式がつくれません。でも作れるとかっこいい(優越感自己肯定感がより大きく得られる)のは反応物だけで矢印の先に何も書いてない。だけどそこの物質が何かも含めて係数を付けて化学反応式を完成させたいところです。炭酸水素ナトリウムの分解や酸化銅の還元の化学反応式ならば、化学反応式を完全丸暗記して再現する、ということは可能かもしれませんが、ちょっと知識再生型でつまらない。

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 それより、初めてみる化学変化で矢印の右側まで正しく作れれば優越感自己肯定感MAXじゃないですか。でも、中学生にそれは可能なのでしょうか。

 可能です。有機物(CHOの3種類の元素だけでできている化合物)の燃焼の化学反応式ならね。

 でも、どうやって?

 有機物(CHO化合物)の燃焼の化学反応式は中学生でも身につけられるやり方があります。

有機物(CHO化合物)の燃焼の化学反応式の作り方
① 有機物 + O2 →  CO2  + H2O  と書きます。
② 「有機物」に含まれるH原子の数を2で割った数をH2Oの係数とします。
  (CHO化合物の場合、Hの数は必ず偶数になります)
③ 「有機物」に含まれるC原子の数をCO2の係数とします。
④ 係数のついた CO2 H2O に、O原子がいくつあるか数えます。
⑤ ④で求めたO原子の数から、「有機物」のO原子の数を引きます。
⑥ ⑤の数が偶数なら、それを2で割ったものが、O2の係数です。
  ⑤の数が奇数なら、先に有機物、CO2、H2Oすべての係数を2倍し、⑤の数がそのままO2の係数になります。
⑦ これで完成です(ドヤ)!

 いちいち丁寧に、そしてあらゆるCHO化合物に対応できるように書いたので、分岐もあり、文量が多くなってしまいましたが、具体的な事例でやってみるとよくわかると思います。

例1 オクタン C8H18 の場合
 ① C8H18 + O2 →  CO2  + H2O
 ② H原子は18個ですから、2で割って9がH2Oの係数になります。
   C8H18 + O2 →  CO2  +H2O
 ③ C原子は8個ですから、そのまま8がCO2の係数になります。
   C8H18 + O2 → CO2  +9H2O
 ④ 8CO2 +9H2O では O原子が 2×8+1×9=25 個あります。
 ⑤ C8H18 には O原子がないので飛ばします。
 ⑥ O原子の数25は奇数なので、C8H18、CO2、H2O の係数をそれぞれ2倍し、25がそのままO2の係数になります。
   C8H18 + 25O2 → 16CO2  +18H2O

例2 イソプロピルアルコール C3H8O  の場合
 ① C3H8O + O2 →  CO2  + H2O
 ② H原子は8個ですから、2で割って4がH2Oの係数になります。
   C3H8O + O2 →  CO2  +H2O
 ③ C原子は3個ですから、そのまま3がCO2の係数になります。
   C3H8O + O2 → CO2  +4H2O
 ④ 3CO2 +4H2O では O原子が 2×3+1×4=10 個あります。
 ⑤ C3H8O には O原子が1個あるので、④の10個から引くと残り9個です。
 ⑥ O原子の数9は奇数なので、C3H8O、CO2、H2O の係数をそれぞれ2倍し、9がそのままO2の係数になります。
   C3H8O + O2 → CO2  +H2O

もし、Hの数がOの数の2倍ということもたまによくあるのですが、これにあたったら、あなたはラッキー!

Hの数がOの数の2倍ある有機物(CHO化合物)の燃焼の化学反応式の作り方
① 有機物 + O2 →  CO2  + H2O  と書きます。
② O2とCO2の係数は有機物のC原子の数、H2Oの係数は有機物のO原子の数です。

例3 ショ糖 C12H22O11  の場合
 ① C12H22O11 + O2 →  CO2  + H2O
 ② O2とCO2の係数はショ糖のC原子の数である12、H2Oの係数はショ糖のO原子の数である11。
   C12H22O11 + 12O2 →  12CO2  + 11H2O

 Hの数がOの数の2倍ということは、HとOでちょうど過不足なく水ができます。それ以外に炭素があるということでつまりこれって炭素と水、炭水化物なんですね!
 ショ糖という物質は私たちが普段「砂糖」と呼んでいるものです。まさに炭水化物ですね。

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