今年も共通テストの季節がやってまいりました。大学入試問題の中から中学校理科の知識・技能と思考力・判断力・表現力で解ける問題を取り上げていく企画です。
とくに共通テストになって、思考・判断・表現力に重点を置いたために、知識面については逆に中学校理科で学習した範囲で収まってしまうなんてことが起こっており、それを丁寧に拾ってみました。
今年度最終回のこの記事では基礎を付さないがチの「物理」「生物」「地学」から取り上げます。「化学」からは今年も中学理科で解ける問題がありませんでした。
そうそう、今年から「試験終了後であっても、大学入学共通テストの試験問題をSNSに投稿する等、インターネット上に掲載することはしないでください。という注意事項が加わりました。
なので、大学入試センターのサイトにある問題pdfへリンクを張ろうかと思ったのですが、まだアップされてないこともあるのですが、センターのサイトには過去3年までしか載っていないので、4年後にリンク切れになると問題が分からなくて困るな…と思ったので却下しました。
本ブログでは、
①共通テストでも中学校の理科で解ける問題があることを示すために引用の「必然性」がある
②引用する部分は色付きの背景にして明確に区別している
③あくまでも中学校の理科で解けるよという解説がメインで問題がサブという「主従関係」
④引用は当該問題のみと必要最小限度
⑤出典はさんざん大学入学共通テストの問題だよと示している
というかたちで、著作権法を意識しながら、大学入試センターの公表された著作物である試験問題を「引用」して利用しております。
物理
第1問
問3 二酸化炭素入りの風船とヘリウム入りの風船に軽い糸を取りつけ、バスの中でのそれらの動きを考える。二つの風船の糸を結び,その結び目をバスに乗っている人が片手で握り。動かないようにした。バスが静止しているときは, 図3のように,二酸化炭素入りの風船は鉛直下向きにぶら下がり,ヘリウム入りの風船は鉛直上向きに浮いていた。図では手の代わりに黒丸(●)を描いている。バスの窓は閉じられていて。外からの空気の流れはなかった。 バスが直線道路を一定の加速度で速さを増しているときに、バスに乗っている人には二つの風船はほとんど止まって見えた。このとき図4のように車内の右側に取りつけられたカメラAで撮影された風船の様子は。図5のようで あった。
次に、図6のようにバスが一定の半径の左カーブを定の速さで進んでいるときに、バスに乗っている人には二つの風船はほとんど止まって見えた。このとき、図7のように風船の後ろ側に取りつけられたカメラBで撮影された風船の様子として最も適当なものを、後の①~⑤のうちから一つ選べ。
問3 これ、慣性の話です。バスが加速したとき、中に乗っている人が後ろに倒れる、というアレです。これは人が一定の速さで動こうとするのに、バスがそれより速く前に進むから、バスの中の人は後ろ向きの力を受けるように見えるのです。それと同じように下側の二酸化炭素の風船も、加速しているバスの中で後ろ側に傾いています。
ところが、水素の風船は前側に傾いています。どうしてか。風船の周りには水素より重い空気があることを忘れてはいけません。つまり加速するときは、より重い方が後ろに来る、と考えるとわかりやすいでしょう。二酸化炭素>空気だから二酸化炭素が後ろ、空気が前ですが、空気>水素なら空気が後ろ、そして水素が前に傾く、と考えれば説明がつきます。
次に後半のケースだと、風船はまっすぐに行きたいのに、バスは左に曲がる。そうすると、バスの中では、人が右に曲がるようにみえます。なので、先ほどの例と合わせると、下の二酸化炭素の風船は人と同じ右側に、上の水素の風船は人と逆の左側に傾くのです。 ②
生物
第4問
問3 下線部団に関連して,夜行性のコウモリは,超音波を発してその反響音から 獲物を探索する。他方,コウモリの被食者であるガの中には. 超音波を感知してコウモリを回避する種がいる。次の(1)・(2)に答えよ。
(1)コウモリの超音波に対するガの反応を調べるため,実験3 を行った。後の記述a~dのうち,実験3の結果から考えられることとして適当なものはどれか。その組合せとして最も適当なものを,後の①~④のうちからーつ選べ。
実験3 コウモリの超音波と同様な26キロヘルツの音を,野外で飛んでいるガに聞かせたときの行動を観察したところ,ガは音源から遠ざかる「定位行動」と旋回や急降下などの「非定位行動」を示した。ガがこれらの行動を示したときの音源からの距離を調べたところ、図4の結果が得られた。
a ガは,コウモリの超音波の高低を感知して,行動に利用している。
b ガは,コウモリの超音波の強弱を感知して、行動に利用している。
c ガは,コウモリからの距離が遠いときは,近いときよりも定位行動を示しやすい。
d ガは,コウモリからの距離が近いときは,遠いときよりも定位行動を示しやすい。
①a,b ②a,d ③b,c ④b,d
問3(1) 音源からの距離によって行動が変わるが、音源の距離が違うということは超音波の強弱がちがうということ(b)。また、音源の距離はコウモリまでの距離に見立てている。したがって音源より5m以上という遠いときに定常行動が示しやすくなる(c)。 ③
(2)
ガの胸部にある聴覚器官には,2種類の聴細胞(A 1 ・A2)がある。図5 は,A1 とA2のそれぞれが,様々な周波数の音に対して活動電位を発生する音の強さの最小値を示している。ガの聴細胞の興奮と実験3との関係について考察した,後の文章中の[エ]・[オ]に入る語句の組合せとして 最も適当なものを,後の①~⑥のうちから一つ選べ。
コウモリからの距離によって2種類の聴細胞の興奮のパターンが異なると想定すると、図5から,音源が遠いときには[エ]が興奮し,近いときには[オ]が興奮すると考えられる。これにより,図4のような行動の違いが生じ,コウモリによる捕食を効果的に回避できると考えられる。
問3(2) グラフの縦軸は「活動電位を発生する音の強さの最小値」なので、値が小さい方が敏感に活動電位を発生させる、つまり興奮しやすいということ。
ちなみにちょうど26kHzのところでA1もA2もグラフが谷になっています。つまりコウモリに敏感に反応する(早く気づげる)ようになっている、ということですね。
音の強さが40デシベルと70デシベルを比べると、弱い(=遠くにある)40でA1は興奮することになるがA2は興奮していないが、強い音(近くにある)の70dbではA1もA2も興奮している。 ②
どうでもいいけど(よくない)、図5のグラフで縦軸と横軸の目盛りが外向きになっているのがすげー気になる。内側につけるべきじゃないのか。もっとも、エクセルのグラフがデフォルトで外向き仕様なんだよな…。
第5問
問2 下線部(b)に関連して,ヤエヤマヒルギの生育場所の土壌の特徴を調べるた め,海面の高さが異なる7月と1月に,ヤエヤマヒルギの根の周囲の土壌と, 根が生えていない離れた場所の土壌について,深さ15cm地点の土壌温度, 有機物濃度,および窒素濃度を測定し,表1にまとめた。表1の結果についての記述として最も適当なものを,後の①~④のうちから一つ選べ。
①1月に比べて7月には,根の周囲の土壌の有機物濃度が高い。
②季節によって海面の高さが異なっても,根の周囲の土壌の窒素濃度は変わらない。
③根が生えていない離れた場所の土壌に比べて,根の周囲の土壌では,有機物濃度と窒素濃度が低い。
④根が生えていない離れた場所の土壌に比べて,根の周囲の土壌では,土壌温度が低い。
問2 ①1月の2.2に対し7月は1.0。低いじゃん。
②どっちも0.25だからこれが正解だね。
③1月見ても7月見ても有機物・窒素ともに高いのだが。
④7月は低いけど1月は高い。 ②
問3問3 下線部(C)に関連して、図1のようなヤエヤマヒルギの水面上にある根の表面には皮目とよばれる穴が多く見られ,根の内部には、図2のように皮層部分に細胞と細胞のすき間である細胞間隙が発達している。皮目と皮層の細胞間隙を通して、大気と土壌に埋まっている根の内部とがつながっているかを調べるため、実験1 を行った。後の記述a~cのうち、実験1の結果から導かれることとして適当なものはどれか。それを過不足なく含むものを後の①~⑦のう
ちからーつ選べ。
実験1 水面上にある一本の根の全ての皮目にグリースを塗り,気体の移動を 遮断した。その根の土壌に埋まっている部位(側根と根の先端)の内部のO2濃度とCO2濃度を,処理開始後0時間と36時問に測定した。対照条件とし てグリースを塗らなかった根の土壌に埋まった部位の内部のO2濃度と CO2濃度も測定したところ図3の結果が得られた。

a 対照条件では根の土壌に埋まっている部位の内部のO2濃度は,処理開始後0時間と36時間で変わらないので,根の内部で呼吸は行われていない。
b グリースを塗った条件では,根の土壌に埋まっている部位の内部の呼吸で発生したCO2が根の外部に出ていかず、根の内部のCO2濃度が増加する。
c 根の内部の細胞間隙を通じて,大気のO22が根の土壌に埋まっている部位の内部まで移動している。
① a ② b ③ c ④a,b ⑤a,c ⑥ b,c ⑦a,b,c
問3 対照実験で36時間では酸素、二酸化炭素とも変化していないのに対し、ワセリンを塗った方では二酸化炭素が増えて、酸素が減っている。つまり本当は根では呼吸をしているけど、酸素も二酸化炭素も皮目から出入り自由ということがわかります。
a そうじゃなくて、呼吸は行われているけど酸素や二酸化炭素が自由に出入りしているので変化しないということです。
b 根の中で発生した二酸化炭素は皮目をふさいだら逃げ場がないのでたまっていく一方です。
c 酸素も出入り自由です。マル。 ⑥
地学
第3問
問4 182ページの図3の道路沿いの直立した露頭Yでは地層Bが観察され、次の図4に示す堆積構造が確認できた。この堆積構造に関連する後の文a・bの正誤の組み合わせとして最も適当なものを、後の①~④のうちから一つ選べ。
a この堆積構造から判断すると、この地域の地層は逆転していない。
b このような堆積構造は、粒径の異なる粒子が水と混ざり合いながら運ばれ、粒径の大きい粒子がより速く沈んで堆積した際に形成される。
問4 粒子が大きいものは沈みが早く、小さいものは遅いので、下から上に行くについて粒は小さくなるのが本来の姿。図4もそうなっているので地層の逆転もない。 ①
第4問
問2 かつての日本の都市部では大気汚染の影響で霧の発生が多かった。近年はキリが発生した日数(霧日数)は減少しており、それは大気汚染の改善だけでなく、都市化に伴う他の過程にもよると考えられている。たとえば、ある都市では次の図1のような家庭で霧日数が減少している。図1の[ウ]・[エ]に入れる語の組み合わせとして最も適当なものを、後の①~④のうちから一つ選べ。

問2 気温が上昇すれば、飽和水蒸気量は大きくなるよね。一方、緑地が減少すると光合成しなくなった分、二酸化炭素は増えるし、蒸散しなくなった分水蒸気は減る。つまり飽和水蒸気量が大きくなるのに、水蒸気量が減るので、湿度はダブルパワーで下がっていくわけだ。 ②
問4 夏のある日、沿岸部の高校で、ジオさんとF先生が交わした次の会話文中の[オ]~[キ]に入れる語の組み合わせとして最も適当なものを、後の①~④のうちから一つ選べ。
ジオさん:今朝の天気図から今日は全国的に晴れで、この地域の風は弱いと予想しました。確かに、朝は風がほとんど吹いていなかったのですが、昼前には[オ]風が強くなってきました。
F先生:そうですね。内陸部では日射で地表が暖められて地表付近の気圧が[カ]、気温があまり変わらない会場との間に水平方向の気圧傾度が生じて[オ]風が吹いたのでしょう。
ジオさん:海が暖まりにくく冷めにくいのに対して、陸地は暖まりやすく冷めやすいためですね。先日の授業で取り上げられた[キ]と仕組みが似ていますね。
問4 陸塊風の仕組みを参照。昼間は海風ですね(オ=海)。地表が暖められて上昇気流おきて低気圧になります(カ=下がり)。これは、スケールを大きくすると季節風と同じですね(キ=季節風)。 ②
物理・生物・地学のまとめ
ということで理科ガチの方は、それぞれ100点中、物理で1問5点、生物が4問18点、地学は3問10点と相成りました。さすがにガチの方は基礎ほど…と思ったのですが、生物は2割が中学理科、というよりはグラフなどの解釈がメインです。
これ、受験生も大変ですが、私としては出題者の苦労をお察ししたいと思います。単に知識を問うような問題だったら、どこかの問題集から引っ張ってきてパクリだと訴えられないように適当にアレンジすればすみます。しかし、共通テストのこのような問題の作問はそんな簡単ではないでしょう。今までの問題集にはない、おそらくは受験生にとって初見になる、でも高校の学習指導要領の範囲内で理解できる、できればちょっと興味深い題材を探してくるわけです。それだけでも大変ですが、おそらくその素材はどこかでの研究論文からでしょうから、その論文が信頼できるものか、場合によっては自分たちで追試して確認する必要があります。また、作問も、実験の条件が正しく伝わるような説明を限られた紙面で示し、選択肢も正答となる選択肢が正答になるかだけでなく、誤答となる選択肢が、本当に誤答なのか、条件によっては正答になる余地はないかなども徹底的に検証する必要があります。
しかも共通テストぐらいメジャーどころだったら、めんどくさそうな人たちが重箱の隅をつついていちゃもんをつけてきそうだし…。
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