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0355 大学院か、非常勤講師か?

 もうだいぶ昔の話だから、してみようかな。
 似た境遇の教育実習生さんいたし、参考になる事例かなと思って…。

 実は、担当した教育実習生からこんな相談を受けたことがあります。
(文面はかなり変えてあります)

実習中、大変お世話になりました。
生徒からも先生からも、いろいろなことを学ばせていただきました。
元々教員志望でしたが、さらに先生になりたいという思いが強くなりました。


実習中には言い出せずにいたのですが、実は大学院の入学試験に落ちてしまいました。

夏の試験で駄目でも2月受験をするつもりでいたのですが、実習を終えてみて、このまま教員になるのもいいかな、という考えが強くなってきました。

小学校の教員免許も取得したいと思っていて、非常勤講師をしながら通信で免許を取れると聞いたので、それもいいかなぁと思っています。

ただ、大学院に進学して理学の専門の世界を見てみたり、もう少し理科全般の理解を深めることも含め、教育のこと等も学んでみたい気もしていて、それを考えると院へ進んだ方がいいようにも思えるのです。

院へ進学するためにはもちろん院試をパスするために勉強しなければいけないのですが、教員になるために、院へ行くことがどれだけ価値を持つのかよくわからなくなってしまいました。

考えていることがうまく伝えられなくて申し訳ないのですが、院進学か、非常勤講師をしながらもう少し勉強するか決めかねていて、その相談に乗ってもらえないかと思い、メールさせていただきました。

実習が終わったばかりですが相談に乗っていただけないでしょうか。ぜひよろしくお願いします。

 少し補足をすると、大学院の入試は8月末。そして、院試の翌日からもう教育実習スタートというわけのわからないハードスケジュール。同じ時期に私の担当の実習生は4人いて、それぞれ院を受けていたので、他の人が受かっていた手前、不合格だったことは言い出せなかったようです。

 大学院か、非常勤講師かでお悩みですが、ここはただ単に傾聴して気持ちを軽くしていただくのでは不十分と考えました。もし彼女がそれを希望しているのならば、わざわざ私に相談をしてこないでしょう。明確に指針を示して背中を押してやる必要がありそうです。

 院試に失敗したくらいで、再チャンスに賭けず、「講師でもいいかなぁ」という考えは、厳しい言い方をすると、楽な方へ流れる、なし崩し的なものを感じました。これはまずい。そうすると…もう、どのような指針を示すかはおわかりですね。

 そうして、次のような返事をしました。

大学院は残念でしたね。。。

大学院に再チャレンジするか、それとも非常勤をしながら教員を目指すか悩んでいるのですね。

私は、基本的には、大学院に再チャレンジする方が良いのではないかと思っています。理由は大きく三つあります。

一つは、いま**さん自身が、教育実習を終えた直後で良い体験をした余韻につつまれているため、教員に対して魅力を実際よりも大きく感じている状態(一部で「時差ボケ」ならぬ「教育実習ボケ」と言われています)になっているのではないか、という懸念。

そもそも夏に大学院の院試を受けたと言うことは、最初は大学院に行くつもりでしたから、あと1~2ヶ月してから落ち着いて考えると、「やはり大学院へ行きたい!」と思うんじゃないかという気もします。(そのときから院試に向けて頑張っても間に合うとは思いますが)

二つめは、「院修了」「専修免許」の就職時・就職後のメリットがあるからです。
教員採用の観点から言うと、学部卒+講師経験よりも、大学院の方が有利かと思います(模擬授業だけみると学部卒+講師経験あり の方が有利のように見えますが、極端にヘタな授業でない限り-実習時の**さんはもうそのレベルから脱出していますが-その差は小さいようです)。特に私立の進学校などでは修士以上が事実上の応募条件となっているところもあります。

 教員になった後でも、副校長、校長、指導主事(教育委員会などの教育系のスタッフ)になろうとするときには専修免許は必須のアイテムです。(ちなみに対保護者でも有利にはたらくことがある、ときいたことがありますが、私の場合は特にそんなことはありませんでした)

 そして三つ目は、大学院へ行きながらでも、教員に向けての勉強は十分にできるからです。
通信教育や研究会なども大学院に行きながらでも可能です。また、大学院に行きながら非常勤講師をする、という手もあります。
 もちろん、専門を深めること、広い科学の世界を知ること、そしてその世界での人的ネットワークを作ることも、大学院に行くからこそできることの一つです。

 とはいえ、2月院試の可能性(結果)や、ご家庭の経済的な問題、大学院での研究へのモチベーションなど、諸々のことを考えると、逆の結論を出されることもあるかもしれません。

 でも、どっちの道に進んだとしても、私は、**さんを応援していますからね!

 翌年、すっかりその相談に答えたことなんて忘れたころ、彼女から院試に再チャレンジして合格したので進学します!といううれしいメールが届きました。

これから2年間、理科についてはもちろん、それ以外のことも含めていろいろと経験し、学んで、ひき出しを増やしていきたいと思っています。

と書かれていたメールには、彼女の確固たる意志がはっきりと見えました。

 もしかしたら、再試験までの約半年間は、いろいろもう一度考えてみるよい機会になったのかもしれませんね。

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