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0356 【理科教育法】教員免許がほしいのは?(前編)

 中学校・高校の理科の先生になるためには、教員免許を取らなくてはなりません。教員免許を取るには、大学で教職課程の科目を履修しなければなりません。そして、中高理科の教職課程では、理科教育法が必修科目になります。

 で、理科教育法の第1回目の授業はアイスブレークをかねて、「なぜ、理科の教員免許がほしいのか」というテーマで受講する学生の意見を聞き、それに対してコメントをしていました。(最近は扱う内容が増えたのでこれはやっていません)ここではいくつかのカテゴリーに分けてみましょう。

カテゴリー1 身内の影響

(1)身内に教員がいる
・両親が教師
・親が教師
・おじいちゃんが校長先生
・親が教員免許を持っている
・親が教師で興味があった

(2)家族の勧め
・母が生物教員で免許取得を勧められた
・親から取れって言われた
・家族の勧め
・両親にも資格を取った方がいいと言われたから

 やはりご家族の影響は大きいですね。特に、身内に教員がいて、自分も目指したいと思うということは、きっと教員をされていた親やおじいちゃんが、あこがれとなる素敵な教員生活を送られていたものと推察します。一方、「家族の勧め」と一口に言っても、なぜその家族の方が教員を勧めるかはいろいろありそうです。家族の方自身が教員だったという方もいれば、この大学で取れそうな資格が教員免許しかないからなのか、あるいは教員免許を取っておけば安泰とかんがえていらっしゃるのか…。いろいろな想いがありそうに感じました。
 いずれの場合も、ご家族の方と教職について、じっくり話し合ってみることは、とても有意義なことだと思います。

カテゴリー2 (積極的に)教員になりたい

(1)学校の先生になりたい
・教師になりたい
・理科にかかわらず教師になりたいが今とれるのが理科教員免許だった

(2)理科を教えたい
・高校の理科教員になりたい
・母校で生物を教えたい
・自分が理学部であることを生かして子供に理科は楽しい!と教えたい
・理科の教員になりたい(博士課程まで進んだ自分にできる教育について考え、実践したい)

 このカテゴリーの方にお勧めしたいのは、「あえて、教職に関係なさそうな経験をしよう」。教職志望が強ければ強いほど、どうしても視野が狭くなりがちです。でも本当は、一見無関係な、教職課程でもやらない、採用試験にも出ないようなことが現場で役に立ったりするんですよね。

 そういえば自分もかつて教員採用試験の面接で志望動機をきかれたときに「理科を教えたい!」という趣旨の答えをした記憶があります。とはいえ、本気で「理科を教えたい!」という気持ちだけで教員になると、生徒指導や畑違いの運動部の部活動顧問、必要性が実感できない研修などで時間と心の余裕が奪われたときに「こんなはずじゃなかった…」「こんなことをするために教員になったわけじゃない!」という気持ちに襲われる危険性があります。

 ちなみに、母校で教員になるというのも、あこがれるかもしれませんが実際はそれほどでもなさそうです。母校の知らない方が幸せだったことを知って幻滅したりするかもね。

カテゴリー3 必要になるかもしれないから、とりあえず

(1)保険
・保険のため
・一つの選択肢としての「教員」
・可能性を残しておきたい
・いざとなったら教師になるかも

(2)資格
・資格としてほしい
・他にとれる資格がないから
・いざというときに、使える資格だから
・大学で何か免許をとっておこうと思い、他の学芸員の資格のように他資格で代用できない資格を取ろうと思った。

(3)将来的に可能性がある
・非常勤でのアルバイト
・子育てが一段落してから中学や塾などで再就職したいから
・免許を持っておけば将来的に困らないと思ったから

 積極的に教員になるつもりはなく、資格だけ取っておこうというのも、一種の「保険」かなととらえて、一緒のカテゴリーにしてみました。

 それにしても今はいい時代で、採用試験の倍率が低いので、「保険」でもそれなりに教師になれてしまうケースもよくあります。
 話はそれますが、私が採用試験を受けた時は、無茶無茶倍率が高かった時代でした。東京都の高校化学では88人受験して採用1人とかで、本当は高校に行きたかったのですが、あきらめて200人受けて4~5人採用されている中学校理科にして、今日に至ります。しかしあの頃、私の周りには他教科を含めて自分よりもはるかに優秀な人がたくさんいたのに、なぜか自分だけが教員になったのは、申し訳ないというか心苦しいというか、「めでたさも中くらいなりおらが春」的な感覚に襲われたのを覚えています。このころの話はまたブログで記事にしたいな。
 話を戻すと、女性の場合、産休・育休を利用しながらバリバリ専任教諭として頑張っておられる方も多いですが、一方で、お子様がある程度大きくなったので、空いている時間に非常勤講師をされている方もよく見かけます。
 一時期、教員免許は10年で更新しなくてはならなかったのので、そういえば免許あったから、手が足りない学校で講師をしよう、と思ったら免許が切れてた…ということもありましたが、免許更新制がめでたくなくなったので、昔取った杵柄ならぬ昔取った教員免許を使う、ということもやりやすくなりました。

 また、理科の先生は深刻な人手不足なので、他業界から転職して専任教員になる場合こともあります。30代半ば以降に初めて教員になる場合、こんな展開に注意してください。それぐらいの年齢になると、周囲(生徒や保護者)からはベテラン、つまりそれなりのスキルを当然持っていることを期待してくる。しかし実際は学校という組織、教員という職業では経験が浅いので、特に担任業務などは失敗したりうまくいかないことも多い。その結果、若手だけれども、大学を卒業してすぐに教員になったために経験年数としては長く、校内である程度活躍されている先生と比較されて「使えないやつ」扱いされてしまう…。周囲もつらいけど、本人にとってもいたたまれない事象です。プロパー組と比べた時の「売り」を用意しておくと同時に、こういう展開を防ぐ方策が必要です。

 それから非常勤講師を「アルバイト」というと、意識が低いと思われるのか、眉をひそめる先生が多いのでやめた方がよいと思います。実際はアルバイトなのかもしれませんが…。

 長いのであとは後編で。

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