地球を柱とする領域
かつて受験漫画「ドラゴン桜」で東大を合格させるために生徒に選択させたのは、文系ではなく理系、しかも理科はまさかの「物理・地学選択」でした。断片的にしか読んでいないのでなんでこうなったのか説明したページを読んでいないのですが(覚える量が少ないとかそういう理由かなと思ったのですが、だったらなんで社会はよりによって覚えることの多い世界史なんだ、地理にでもしとけば地学と連携できるのではないかという疑問が残る、と共通一次を「倫理、政治・経済」で挑んだ奴が言ってみる)、理由はどうあれ、当時、物理・地学選択をした人が微増したという噂を聞きました(ファクトチェックはしていません)。なお、その数年後、センター試験の理科は物理と地学が同じ時間に試験が行われ、この組み合わせは選択できなくなりました。
でも理系で大学受験というと「物理・化学」か「化学・生物」が現実的ですよね。ちなみに平成10年版指導要領の「生物Ⅰ」から平成20年版指導要領での「生物」への改訂により、内容が一気に増えたということで、受験生から「生物」が敬遠され、センター試験の受験者数が「生物Ⅰ」は「物理Ⅰ」より少し多かったのが、「生物」は「物理」の半分以下となってしまいました。(少し弁護すると「生物Ⅰ」は文系の受験生も受験するけど、「生物」は理系だけ(文系は「生物基礎」をとるから)という事情もあります。)
一方、地学系科目はというと文系は「物理基礎」「化学基礎」「生物基礎」「地学基礎」から必ず2科目選ばなくてはいけないので、「物理基礎」をわざわざ選ぶんだったら最初から理系に行っているはずだから除外すると、「化学基礎」「生物基礎」のどちらかがすごく苦手だったとすれば「地学基礎」を選ばざるを得ません。そういう目でもう一度平成24~26年度の地学Iの受験者数(これは文系も理系もいる)が18000人前後なのに対し、平成30~令和2年度の地学基礎の受験者数(文系だけ)が49000人前後ということをみれば、いかに地学受験者、もっというと高校での地学履修者が増えたかがわかるでしょう。
ただし、あくまでも「地学基礎」の話で理系科目の「地学」は相変わらず物化生にくらべてけた違いに少なく、下手すると地学は理系より文系の受験生の方が詳しいかもしれません。
大きな本屋の高校の参考書のコーナーに行って、理科の棚を見てみると棚一つ全部「化学基礎・化学」となっているのに対し、地学は基礎がちょこっとあるだけで、「地学」の参考書に関しては本屋にはなく、メ●カリなどで絶版になったチャー●式などの参考書が高値で取引されています。教科書は1社のみ、副教材の資料集は2社から出ていますが、高校を経由せずに入手するのは難しいかもしれません。
教員採用試験も高校理科は物理・化学・生物で募集しているところがほとんどで、地学採用してるとこはあったかな(思いつかない)…という感じです。(ただし教員採用試験の問題は、地学からも出題されます)
物化生に負けないくらいは面白いし、学ぶ価値のある科目だと思うんですがね。
「地球」領域の学習内容
地学領域の新指導要領での変更点のポイントは、現行で3年の第7単元でやっていた「自然の恵みと災害」が1・2年の内容に関連する「火山災害・地震災害」「気象災害」をそれぞれの学年に移行させたところです。こうなると、例えば台風の仕組みを学習したうえで、台風からの防災を考えることがやりやすくなりますね。以前私がぼやいていたことが実現化したというわけです。なお、1年で津波発生の仕組みについて触れるというのですが、すでに教科書では津波に触れているところが多いです。
指導のポイント
学習する中身を理解しているかという点は別にして、火山や宇宙、化石などに興味・関心を持っている生徒は少なからずいます。その気持ちを失わせないことがまず第一かと考えます。特に宇宙は星の美しさや星座の話題などで、興味があったのに、授業では星の動きと地球からの見え方で頭の中がこんがらがってしまったあげく、興味を失ってしまうのでは、何のために授業をしていたのかわかりません。まずその点を気をつけましょう。
また、地学は環境や防災にも密接に関係する領域です。時間的・空間的スケールが大きくあまり身近ではない場面も多いですが、ここでの学びがこれからの社会に密接につながっているということで、理科を学ぶ意義や有用性を感じ取ってもらいたいところです。
高校で地学基礎さえやっていないですし、教職課程の「地学」「地学実験」では、中高生に教える中身とかけ離れていたり、網羅していなかったりするので地学領域を教えるのに不安があります。とりあえず地学は何やったらいい?というご質問を受けることがあります。さすがに中学の教科書を1からはじめる必要がある人はそもそも理科の教員なんて目指さないでしょうし、かといって、中学理科の問題集をやってみて、間違えたところやわからなかったところ補充するというのも、高校受験ならともかく、中学校の理科教員になるためには、ちょっと違うんですよね。問題集によくある問題と、学校の授業で大切にしたいところって結構ずれているのですよ。
一つの提案としては、NHKの高校講座地学基礎あたりから始めてはいかがかと思います。これがマスターできれば中学地学の基礎は何とかなるかと。
「シベリア高気圧」と「シベリア気団」は、何が違うの?
この話はある理科の先生方のメーリングリストで出てきた質問に私が答えた話をもとにしています。いろいろ思うところのあった一件でした。
まあでも、特に理科の先生は理科が好きだから、つい理科の説明をしてしまうんですよね。
「火山岩は斑状組織、深成岩は等粒状組織」ということを暗記すればいいよね。
火成岩の話としてはここで説明したのですが、この話の奥には、指導する先生が知識についてどこまで理解させてどこから暗記させるのかのスタンスが問われているように思えます。確かに暗記させれば教える時間も短いし、考える必要もない。しかし一方で時間がたてばどっちがどっちだったっけとなるし、応用が利かなくなるのでやっぱり理解させたいというのが理科教師としての矜持というか意地です。
定期テスト、せいぜい高校入試さえクリアすれば、その後そんな知識一生使わないんだから、とりあえずテスト前に語呂合わせでもなんでもいいから暗記すればいいじゃないの、その方がコスパよく点数取れそうだし。という考え方も(認めたくないけれども)あるだろうなと。
とはいえ暗記だと、メンテナンスなしで時間が経ってしまうと「どっちが斑状でどっちが等粒状だっけ?」となってしまいがち。それを防ぐために仕組みを理解したり、ゴロで覚えたりすることで暗記よりも記憶に残るようになるのですね。とはいえ、「花崗岩」「安山岩」のように地名や人名が由来のものとか、どっちが正断層でどっちが逆断層かなど、人間がテキトーに決めたものなんかは理屈で説明できないので、覚えるしかないもの(せいぜい語呂合わせ)もあります。
もっとも、かつて化学が無茶苦茶好きな生徒がいて、その生徒は原子番号順にすべての元素を暗記しているのですが、「水へ、リーベ…とかで覚えたの?」と聞いたら「普通に覚えました。そんな方法で覚えるのは化学への愛が足りないです。」と憤慨していました。
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地学雑誌に掲載された明治から昭和40年にかけての日本の地学史です。
日本地学史編纂委員会,東京地学協会:西洋地学の導入 (明治元年~明治24年)「日本地学史」稿抄 ,地学雑誌
その1 1992 年 101 巻 2 号 p. 133-150
その2 1993 年 102 巻 7 号 p. 878-889←教育関係の記述アリ
その3 1994 年 103 巻 2 号 p. 166-185
日本地学史編纂委員会,東京地学協会:日本地学の形成 (明治25年~大正12年)「日本地学史」稿抄,地学雑誌
その1 1995年 104 巻 4 号 572-588←教育関係の記述アリ
その2 1996年 105 巻 2 号 215-237
その3 1997 年 106 巻 3 号 p. 386-412
その4 1998 年 107 巻 5 号 p. 735-761
日本地学史編纂委員会,東京地学協会:日本地学の展開 (大正13 年~ 昭和20 年) 「日本地学史」稿抄
その1 地学雑誌109 (5) 719-745 2000←教育関係の記述アリ
その2 地学雑誌110 (3),362-392,2001
その3 地学雑誌112 (1),131-160,2003
その4 地学雑誌113 (3),383-408,2004 ※その4のみ著者表示が日本地学史編纂委員会,東京地学協会ではなく、「今井 功, 藤井 陽一郎, 石山 洋, 黒田 和男, 谷本 勉, 山田 俊弘, 八耳 俊文」と個人名になっている。
その5 地学雑誌113 (6),848-860,2004
その6 地学雑誌115 (1),96-109,2006
日本地学史編纂委員会,東京地学協会:戦後日本の地学(昭和20年~昭和40年) : 「日本地学史」稿抄
その1 2008 年 117 巻 1 号 p. 270-291 訂正
その2 2009 年 118 巻 2 号 p. 280-296←教育関係の記述アリ
その3 2010 年 119 巻 4 号 p. 709-740
その4 2016 年 125 巻 2 号 p. 269-290
その5 2017 年 126 巻 5 号 p. 641-652
その6 2018 年 127 巻 6 号 p. 835-860


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