0527 マグネシウムの粉末は危険物でリボンは危険物でない?!

危険物の分類のお話。

『理科の教育』にもちょこっと書いたのですが、マグネシウムの粉末は危険物第2類ですが、マグネシウムリボンは消防法上、危険物に指定されていません。

なんで?今日はこれを検証してみましょう。
「危険物」は消防法で規定されています。

消防法 第二条  この法律の用語は左の例による。
⑦  危険物とは、別表第一の品名欄に掲げる物品で、同表に定める区分に応じ同表の性質欄に掲げる性状を有するものをいう。

で、その別表第一には次のように示されています。

消防法 別表第1
類別     性質            品名
第二類  可燃性固体     六 マグネシウム
               八 前各号に掲げるもののいずれかを含有するもの

ところが、その備考で、

備考
六 マグネシウム及び第二類の項第8号の物品のうちマグネシウムを含有するものにあつては、形状等を勘案して総務省令で定めるものを除く。

とありますが、その総務省令というのがこれです。

危険物の規制に関する規則 第1条の3
3 法別表第1備考第6号の形状等を勘案して総務省令で定めるものは、次のものとする。 
一 目開きが2mmの網ふるいを通過しない塊状のもの 
二 直径が2mm以上の棒状のもの

これによりマグネシウム粉末は「形状等を勘案して総務省令で定めるもの」に入らないので危険物第二類となりますが、マグネシウムリボンはマグネシウムでも、どうみても目開きが2mmの網ふるいを通過しそうにないので「形状等を勘案して総務省令で定めるもの」に該当し、危険物から除かれます。

ところで、俺のマグネシウムリボンの箱を見てくれ。こいつをどう思う?

すごく・・・危ない・・です
「消防法危険物第二類金属粉A」と書かれていますから、あれ、やっぱり危険物じゃん、という声が聞こえてきそうです。

しかし金属粉A、金属粉Bという区分は昭和46年に改正された消防法(消防法の一部を改正する法律 昭和46・6・1・法律 97号)で出てきた区分だと思われます。

別表備考を次のように改める。
備考
一 金属粉Aとは、マグネシウム及びアルミニウムの粉、箔及びリボン(写真撮影用その他に用いるせん光粉を含む。)をいい、金属粉Bとは、マグネシウム及びアルミニウム以外の金属粉をいう。

これなら、マグネシウムリボンはどうみても金属粉Aですね。しかしこの文面をよく読むと、アルミニウム箔も金属粉Aとなってしまいますし、銅粉(現行消防法では非危険物)も金属粉Bとなってしまいます。さすがにちょっとやりすぎの感がぬぐえません。

だからなのかどうかはわかりませんが、昭和63年の改正(危険物の規制に関する政令等の一部を改正する政令 昭和63・12・27・政令358号)で別の言葉に置き換えられ、死語となったみたいです。それに伴い、マグネシウムリボンの危険物指定が外れたようです。つまり、この箱のマグネシウムリボンは昭和につくられたもの、少なくとも27年前にあったということ?…理科室に新品であったぞ(汗)

新しいマグネシウムリボンは危険物なんて書いてありません。ただし「可燃性」を示す古いピクトグラムが示されています。

※あくまでも現行の消防法の分類上でのお話で、マグネシウムは危険じゃないという話ではありません。

消防庁のこの資料が参考になります。
平成26年度火災危険性を有するおそれのある物質等に関する調査検討会
マグネシウム等における消防活動阻害性等について