デンプンやタンパク質、脂肪は、消化によってブドウ糖、アミノ酸、脂肪酸とモノグリセリドと、比較的小さめの分子となりました。
これなら入れる、ということで、いよいよ吸収についてです。ブドウ糖、アミノ酸、脂肪酸とモノグリセリド、いずれも、主として小腸で吸収されますので、まずは小腸のつくりから見ていきましょう。
小腸のつくり
小腸は細長~い臓器です。どのくらい細長いかというと、個人差はありますが、日本人の平均的な小腸の長さは約6〜7メートル、直径は小腸の最初の部分である十二指腸では5cm程度で、最後の方では3cmまで小さくなります。ただし、体の中にあるときは筋肉の収縮により3m程度まで縮んでいます。なお、大腸は長さ約1.5メートル、太さは5~8cmの管ですから、小腸の細長さが際立っています。
小腸は長さ以上にすごいのが表面積。単純に太さ5cm(0.05m)、長さ6mとちょっと大きめに見積もっても、表面積は
0.05×3.14×6=0.942m2 と、1m2に届きません。
ところが、小腸の壁の表面積として、よく200m2、テニスコート1面分などと言われているのです。
ただし、2014年に成人の腸粘膜の総面積は30m2、テニスコートどころか、バドミントンコートの半分程度の広さしかないという論文が出ています。(日本語はこちら)
もっとも、例えば2021年から使用されているある教科書では200m2のままで記載されています。さすがに教科書の著者集団ならびに教科書調査官がこぞってこの論文の存在を知らなかったということは考えにくいですから、論文に信ぴょう性に欠けるところがあるのでしょうか、それともグリセリンからモノグリセリドに変わったときのように突然教科書の記述が変わるのでしょうか。
いずれにしろ、表面積が何倍にも増えていることには変わりはありません。
どうして表面積がそんなに広いのか。
小腸の内側の壁にはたくさんのひだがあり、その表面にはたくさんの柔毛があります。
柔毛の表面には更に小さな突起が無数に存在していて、「微絨毛」と呼ばれるのですが、ここまでくるとさすがに電子顕微鏡レベルなので、そこまでイラストには描けませんね。
この柔毛及び微絨毛をもじゃもじゃさせることで、表面積を広げ、小腸の壁がたくさんの栄養とふれあい、効率的に吸収できるようにしているわけです。これは肺胞とか、植物でいえば根毛などにも使われている常套手段です。イラストACより
そして「ひだ」の中には毛細血管とリンパ管があります。イラストACより
消化された栄養分の吸収
ブドウ糖は、柔毛の表面から吸収されて、毛細血管に入り肝臓を経由して全身へ送られます。肝臓では、「六角形」ことブドウ糖がデンプンのときとは違うつながり方でつながった(結構枝分かれもある)、グリコーゲンとなって一時的に肝臓に蓄えられ、必要な時にブドウ糖に戻して全身へ送られます。
…ここでピンときた人もいるでしょう、そう、あの会社の名前の由来は…
アミノ酸も、柔毛の表面から吸収されて、毛細血管に入り肝臓を経由して全身へ送られます。肝臓では、アミノ酸の一部が結びつけられタンパク質になります。
脂肪酸とモノグリセリドは、これらとは違う経路をたどります。柔毛の表面から吸収されて、毛細血管ではなくリンパ管に入るのです。しかもせっかく脂肪酸とモノグリセリドに消化したのに脂肪に戻ってリンパ管に入ります。そのリンパ管は血管につながっており、脂肪もリンパ管から血管に流れて全身へ送られるのです。
なお、小腸では、水や塩分の吸収も行っています。大腸でも行っていますが。
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