湿度は、空気の湿り具合を示す尺度で、飽和水蒸気量に対する実際の水蒸気量の百分率をさします。
たとえば、30℃の空気1m3に水蒸気が9.4g含まれているときの湿度は、30℃での飽和水蒸気量が30.4g/m3ですから、9.4/30.4×100=30.9%となります。
バケツのイメージでいえば、湿度とはバケツの大きさに比べて何分目くらいまで水が入っているか、ということです。 (2006年に書いた原稿に使った写真を流用)
気温と湿度の関係も見ていきましょう。
気温が変化しても、実際に含まれている水蒸気量は変化しません。変わるのは、飽和水蒸気量だけです。
つまり、枠の大きさは気温によって変化しても、青い部分は変化しません。
気温が高くなれば枠は大きくなるので、枠に対する青い部分の割合、すなわち湿度は小さくなります。気温が低くなれば、枠が小さくなり青い部分が占める割合、すなわち湿度は大きくなるのです。、特に露点に達すると枠いっぱいに青い部分が占めますから、湿度は100%となります。これ以下の温度では結露しますが、湿度は100%です。
晴れた日は気温が低いときは湿度が高く、気温が高いときは湿度が低くなります。これは、雨が降らないので空気中に実際に含まれる水蒸気量が変わらないという前提でを考えると、この湿度の公式から説明ができますね。
絶対湿度
ここからの話題は中学理科から逸脱します。
中学校理科でいう「湿度」は、実際の水蒸気量ではなく、実際の水蒸気量の飽和水蒸気量に対する割合という相対的なものです。なので「相対湿度」ともよばれます。とすると、これとは別に「絶対湿度」というものもありそうですね。
それって、何のことはない、「実際に含まれる水蒸気量」のことです。
そう考えると相対湿度より便利そうな値なのですが、中学校理科では湿度の計算式で「実際に含まれる水蒸気量」として出てくるだけであまり注目されません。
でも、絶対湿度の値は、露点がこっそり教えてくれているのです。だって、露点の温度での飽和水蒸気量が「実際に含まれる水蒸気量」、すなわち絶対湿度ですから。というのは前回やりましたよね。
湿った空気と乾いた空気ではどちらが重い(密度が大きい)か
学生時代のはなしです。学部3年で理科教育法を履修するときに、自分の所属する化学科の理科教育法の講義だと、とりたかった専門科目(選択科目でしたが)と時間が重なるので、物理学科で開講している別の先生の理科教育法を受けようと思い、初回の授業に出席しました。そしたらその先生の、今だったらパワハラ認定されるような言動に「うわーこの先生厳しい!」とビビッて、素直に化学科で開講している穏やかな先生の理科教育法を受けることにしました。ちなみに「理科教育法」の試験は別の先生、別の試験問題に関わらず、なぜか同じ教室の物理学科が左側と化学科が右側と別れて行われたのですが、化学科は30分くらいでさっさとみんな答案を書き終えて退室したのですが、物理学科の連中は時間いっぱいギリギリまでやっていました…。
時は流れ、私も理科教師になりそれなりの経験を積むようになった頃、風の噂で、その物理学科で理科教育法を担当されていた怖い先生が、「最近の学生は、湿った空気と乾いた空気ではどちらが密度が大きいか、答えられない」と嘆かれていたという話を聞きました。やっぱ怖ぇ~と思いましたが、そんな私が今、理科教育法を教えてるっていうのは、一体どういうことなんだぜ。
ええ私はマニアだから当然正解を知っているけど、堅気の学生は迷うんじゃないかな。
というのも、湿った空気は乾いた空気に比べて、
A:空気(窒素や酸素)の量が同じで、水蒸気の量が多い
B:水蒸気が多い分だけ空気(窒素や酸素)の量が少なくなる
という、どっちのイメージが正しいのを知識としてもってないと、考えたところで迷うばかりでしょう。もちろんここまで到達しない人も残念ながらいるでしょうが。
Aならば明らかに水蒸気の分だけ湿った空気の方が大きいし、
Bならば空気(窒素80%、酸素20%として)の分子量は28.8、水蒸気は18ですから、湿っているということはそれだけ分子量の小さい気体を多く含んでいることになるので乾いた空気の方が大きいということになります。
さて、正解はどっちなのでしょうか。
正解はB、乾いた空気の方が密度が大きいのです。
水蒸気「圧」
そもそも空気も水蒸気も気体なんだから、水蒸気「量」(g)ではなく、水蒸気「圧」(Pa)の方が扱いやすいのですよ。
実際高校以降では蒸気圧も出てくるし。
中学理科のようにg単位の水蒸気量や1m3の空気と考えると、先ほどのAとBのイメージのどちらが正しいか判断がつきにくいですが、1気圧の「湿った空気」「乾いた空気」で考えると、湿った空気は水蒸気圧が大きいわけだから、その分、窒素や酸素の分圧が小さくなる、ということで先の質問も自信をもってBを選べるんじゃないでしょうかね、先生。
…とあの先生に意見するなんて今でも怖くてできない。ブルブル。(小心者)
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