前回の結論「空気中の水蒸気を露点まで冷やすと、水滴に変化する。」というのは、露点という新しい言葉を使っただけで、本質的には冷やすと水滴が出てくるという小学校レベルのことと何ら変わりません。
でも、「露点」とわざわざ用語があるということは、何かこの温度は特別な意味を持つはずです。そこで今日は露点という温度の意味を考えてみましょう。
課題:露点とはどのような意味をもつのだろうか。
液体の水を100℃に沸騰させれば、いくらでも気体の水蒸気に変わります。この水蒸気は基本的に純粋な水蒸気です。
ところが、沸騰でなく蒸発の場合、状況が異なります。空気の中に水蒸気が紛れ込むわけです。
このイメージは水溶液に似ています。
水の中に砂糖などの溶質が溶けているように、空気中に水蒸気が含まれているのです。
この図のパワポファイルは以下からダウンロードできます。授業などで好きに使ってくれ!使いやすいように改変するのもOK!
0704 【天気の変化02】霧や雲の発生2 露点の意味~飽和水蒸気量~
さて、水蒸気を含む空気と、水溶液、特に硝酸カリウム水溶液の似ている点は、ここからが本番です。
硝酸カリウムは水にいくらでも溶けるというわけではなく、溶ける量に限度があります。100gの水に溶ける硝酸カリウムの質量が溶解度で、これは水の温度が高いほど大きくなります。
それと同様に、
水蒸気は空気にいくらでも含まれるというわけではなく、含まれる量に限度があります。1m3の空気に含むことのできる水蒸気の質量が飽和水蒸気量で、これは空気の温度が高いほど大きくなります。
単語は違えど、文の構成は全く同じですね。何が何に対応しているかチェックしておくとこの後の話が分かりやすくなります。もう一度画像を載せます・
それでは、横軸に温度、縦軸に飽和水蒸気量にしたグラフを作ってみましょう。
このグラフのエクセルファイルは以下からダウンロードできます。授業などで好きに使ってくれ!使いやすいように改変するのもOK!
飽和水蒸気量のグラフ
なんか、硝酸カリウムの溶解度曲線に似ていませんか。
そして、次に水溶液でいえば再結晶のアレですよ。
温かい水に硝酸カリウムをたくさん溶かしてから冷やしていくと、溶けきれなくなった硝酸カリウムが結晶として出てきます。
温かい空気に水蒸気をたくさん含めてから冷やしていくと、含み切れなくなった水蒸気が水滴として出てきます。
ここも全く同じ考え方ですね。
溶解度のところも苦手な人が多いのでそこを含めて説明すると、
溶解度は(飽和水蒸気量もそうですが)、あくまでもここまでならここにいてOKだよという「枠」というか入れ物の容量を示したものでしかなく、中身、すなわち溶質(飽和水蒸気量の話でいえば水蒸気)がいくら入っているかは全く別の話です。
たとえば、容量20Lのバケツに12Lの水が入っていたとします。その水を容量10Lのバケツに移そうとするとどうなるか。
わかりますね。バケツに入りきらない2Lがこぼれるわけです。
ここでバケツの容量が飽和水蒸気量(つまり、リアルに存在する水の量ではないというイメージをもつことが大切)、バケツに入っていた水が実際に含まれる水蒸気量です。
そうすると、バケツに入らずにこぼれた2Lとは、空気中の水蒸気の話では何にあたるか。この2Lこそ、溶解度というバケツに入らずに水溶液から追い出されて固体の結晶として出て来た溶質であり、飽和水蒸気量というバケツに入らずに空気中にいられなくなった水蒸気が水滴として現れたものです。
水の温度が下がって溶解度が小さくなっても、実際に溶けていた量は変わらない。なので、実際に溶けていた分よりも溶解度の方が小さければその差の分だけ溶けきらずに結晶として出てきます。
それと同じように、
空気の温度が下がって飽和水蒸気量が小さくなっても、実際に含まれていた水蒸気量は変わらない。なので、実際に含まれていた分よりも飽和水蒸気量の方が小さければその差の分だけ含みきれずに水滴として出てきます。
おや、このグラフ、水色の線がうっすらと横に引かれています。これは実際に含まれている水蒸気の量ですが、この線と飽和水蒸気量の線がぶつかるところに★印をつけてみました。
ここは、飽和水蒸気量と、実際に含まれる水蒸気量が同じになる部分です。これより温度が低くなると飽和水蒸気量より実際に含まれる水蒸気量が大きくなるので水滴として出てきますから、この温度こそが露点なのです。
これを言い換えると、露点の温度での飽和水蒸気量は、その空気に実際に含まれる水蒸気量にあたります。
つまり、露点の温度はその空気にどれくらい水蒸気が含まれているかを示す尺度になっているのです。
結論:露点はその空気にどれくらい水蒸気が含まれているかを示す尺度になっている。
なお、水溶液の話では、露点に対応する用語は特にありません。それだけ、水蒸気の話で露点という温度が重要な意味をもっていることがわかります。
あの曲線を式で表したい
そもそも飽和水蒸気量の温度曲線はどっからでてきたのか。もちろん、温度をちまちま変えて飽和水蒸気量を測定したらこんなグラフになった、という実験結果なのかもしれないけど、連続した自然現象を表したきれいな曲線だから、きっと数式で表現できるのではないか。
湿度表の数値は「スプルングSprungの公式」から求められたので、こっちもおそらく式があるだろう。
と思って調べてみました。
湿度と水蒸気量(1): 温度と飽和水蒸気量の関係(音と色と数の散歩道)
湿度の計算1(第一科学)
湿度計算の計算式集 湿度計算を分かりやすく理解するために (VAISALA)
なるほど、Wagner(ワグナー)の式か…
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