新企画。
「良問」ではなく「美問」
うまく伝わるかどうかわからない(多分伝わらない)のですが、整合性というか、シンプルながら作り込まれているというか、「いい仕事してますね」というか、ある種の「美しさ」を感じる問題を取りあげて、その魅力を味わってきましょう。名付けて【美問鑑賞会 〜 ただ問を解くだけでなく 〜】。
第1回は、「天気とその変化」のなかでも、軽く流されてしまう「水の循環」からの出題です。
この第1回のブログ記事更新が2018-07-13。それ以降これに匹敵するような美問には出会えても、いわんや作れてもいません。なので少なくとも「5年に一度の美問」といえます。
下図は、水が大気中を循環する様子を模式的に表したものである。
図中の数字は移動する水の量を表している。
図中の数字を用いてXの値を求める式(方程式でもよい)を2通り示し、Xの値を求めなさい。
(ヒント:2通りの式のどちらで求めてもXの値は同じになるはずですね)
問題自体は、それほど難しいものではありません。
「水の循環」のこの図の基本、陸・海・空(大気)のそれぞれで
入ってくる水の量=出ていく水の量
ということがわかっていれば難なく解ける問題です。
解答
式 (例)78+8=X 22+78=14+X
値 86
Xの値を問うだけでも問題は成立します。でもそれでは面白くない。
78+8=86 と計算しただけでは何の感慨もありませんし。
この問題で注目させようとしているのは
陸・海・空(大気)のそれぞれで 入ってくる水の量=出ていく水の量
というポイントです。
つまり、単にXの値を求めようとして多くの人が計算する
78+8=86は、
海に入ってくる水の量=海から出ていく水の量
ということですが、あえてもう一つ、別の求め方をきくことで、
大気中に入ってくる水の量=大気中から出ていく水の量
にも、すなわち陸・海・空(大気)のそれぞれに注目させ、さらに実際に計算させて
「どっちで計算してもも86だ。 なるほどうまくできてる」
さらにただ問いを解くだけでなく、聞かれても(出題されても)ないのに、
陸地に入ってくる水の量=陸地から出ていく水の量
で、22=14+8 と計算して「おお、たしかに!」と思ったりすれば
もう出題者の術中に落ちているも同然です。
「水の循環」の問題だけになんというか「一周して元に戻る」的な「輪になっている」的な美しさを彷彿させます。わかりますかねぇ。
ただ問いを解くだけでなく、この「(自然は)うまくできてる」「おお、たしかに!」と腑に落ちる感覚を味わってもらいたいと思います。
ちなみにこの問題は、新3観点の学習評価完全ガイドブックにも取り上げたくらいお気に入りの問題なのですが、これに匹敵するような【美問鑑賞会】の第2弾のネタが思いつきません…。
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