ようやく作問の前に知っておきたい評価についての話が終わりました。
いよいよ作問についてです。
が、問題を用意するだけなら、適当にどこかの問題集か入試問題から引っ張ってくればことは足ります。にもかかわらず、問題の作り方を知りたい…ということで、こんな場末の過疎ブログのニッチな記事を読もうとするあなたは、もしかして、何らかの試験に使うために作問をしなければならないのではないでしょうか?
どんな問題を作るか、の前に、どんな試験に使われるのか、を確認しておきましょう。
試験によって緩さが違う!
普通の学校の先生でしたら小テストや定期試験でしょうが、学校によっては学力テストを校内で作成することもあると思います。また、私立校の先生やそれなりに力量のある先生の場合、入学試験の問題を作ることもあるでしょう。さらにこのブログをご覧になっている方は学校の先生だけではなく塾や教材制作の関係者も多いようなので、模擬試験や問題集に使う…というケースもあるかもしれません。
小テストや定期試験なら、多少アバウトな出題でも生徒との関係(「生徒理解」ならぬ、生徒による「先生理解」)や「授業でやった」ということで、なんとか許されることもあるでしょう。
それでも最近は、小学校の算数のテストで掛け算の順番が逆だから×になったテストの答案が保護者によってSNSにアップされ、バズるとともにバツにした教師の判断に疑義を挟むようなコメントで埋まるようなこともありますし(実際にこの採点基準がいいか悪いかは別にして)、もっと単純にいえば、そんなことでやっかいなクレームを招いて、対応にこちらのリソースを割くことになるのも面倒ですから、授業で教えた内容ややり方とは違うから(世の中的には正しくても)✖、ということはやめた方がいいかもしれません。
一方、入試問題なら、教科書による有利不利がないような表現も配慮しなければいけませんし、複数の解釈ができるような問題文は避けなければなりません。
月の道筋が図6のように秋分の日の太陽の道筋とほぼ同じになるときの月と地球、太陽と地球の位置関係 出典:2014東京都立高校 学力検査問題(理科)
これは、2014年の東京都立高校の入試問題ですが、出題ミスとして全員正解になりました。全員正解なら公平かというと、決してそうではなく、この問題を見て手も足も出ずにすぐに捨てた生徒が得をし、問題文を何度も読み直すなどして粘り強く取り組んだ受験生がここで費やした時間の分だけ損をする仕様となり(その時間にほかの問題を解けたかもしれない!)、これはこれで微妙な幕引きとなりました。出題ミスがおこると、平等・公平でなくてはならない試験のはずなのに、どう対応しても受験生によって有利・不利が生じてしまうのです。
また、入試問題と言っても、その入試問題で「倍率が高いので、どんどん落としていこう」という方針で、中学校では学習しないはずのマニアックな知識を求めたり、受験生を意図的に引っ掛けるものなのか、「学校で学習してきたはずの学力がきちんと身についているかを測ろう」という学力検査(調査)的なスタンスかによっても大きく変わってきます。
ちなみにこのシリーズでは後者をイメージして展開しています。前者ならそれこそマニアックな事実的な知識を問えばいいだけだし
出題側も「傾向と対策」
特に入試問題や模擬試験などを作る場合、問題の分量や難易度、出題形式などは、いつものパターンを踏襲する場合が多いかと思います。今まで大問の1番が小問集合だったら、意図的に出題傾向を変えるという偉い人の判断がない限り、やはり今回も大問の1番が小問集合になるはずです。
よく受験生の間で入試の「傾向と対策」などといわれていますが、出題する側も傾向をつかんでそれにあうように作問するという対策を立てる必要があるのです。
さらに、1回分の試験を例えば領域や大問ごとに何人かで分担して作問する、という場合もあるでしょう。
そうすると、自分にどんなタイプの問題を求められているのかを押さえておく必要があります。
○出題の単元・領域
○小問の数
○問題文の分量
観察・実験の説明をどれだけ丁寧にするか
○知識・技能か思考・判断・表現か
とくに「思考・判断・表現」はどこまで本気なのか。授業でやった「考察」が(知識として)再現できればいいのか、それとも全国学力調査のように新場面で活用できるレベルを求めるのか。
○出題形式(選択、短答、記述、作図など)
特に記述や作図など、また計算を含む問題などは、過去の試験と大きく違わないか、試験全体でバランス調整が必要になることがあります。
○難易度(正答率)
どんな問題を作ればいいのかは、どんな試験に使われるのかによって変わってくる。
あと、特に組織的に作問している場合、せっかく作った問題が、没になることもあります。
その理由が過去問とか他の作成者が作った問題などと重なったりすれば仕方ないといえるかもしれません。でも、正答率を調整するためなど、大人の事情で不本意な方向に問題を修正せざるをえなくなることや、事務方のような理科教育の専門家でないところから理不尽な理由で没になることもあります。
検証していませんが、東日本大震災の翌年である2012年度の入試には地震に関する出題が減ったという噂があります。時事問題のネタで出題増になるかと思いきや、受験生に被災者がいるかもしれないという配慮だそうです。信じるか信じないかはあなた次第!
それがとっておきの問題だったり自信のある問題だったり思い入れがあったりすると凹んだり、イラっとしたりすることもあるでしょうが、くじけてはいけません。あなたは組織のコマにすぎないのだから、コマらしくせっせと次の問題を作りましょう。そのかわりミスったときの責任はきっと上がとってくれるし…。
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