前回は太陽系の8つの惑星、水金地火木土天海を2つのグループ「地球型惑星」と「木星型惑星」に分け、それぞれの特徴を見てみました。
ところでかつてはもう一つ1930年にアメリカ・アリゾナ州のローウェル天文台のクライド・トンボーによって発見された冥王星(Pluto)が惑星とされていました。これもNASAの写真です。
ところが、2006年に惑星の仲間から外されたのです。何があったのでしょうか。
冥王星のデータを前回の地球型惑星と木星型惑星のデータとくらべてみましょう。
すると、微妙なことに気がつきます。
太陽から遠く、そのため公転周期も長く、表面温度も低いのは木星型惑星の特徴と同じです。一方、直径や質量は小さく、むしろ地球型惑星に近いものがあります。冥王星発見当時は、その大きさや質量は地球よりほぼ同等かやや小さい程度かと考えられていましたが、その後、直径が約2274km、月より小さいことがわかりました。
もちろんこれは2つのグループのどちらにも合わないというだけで、なんなら「冥王星型惑星」という第3のグループを作ればよいだけの話です。月より小さいとなると、少し小さすぎる感じもしますが…。
しかし、冥王星には別の問題が上がってきました。ライバルが次々に発見されたのです。
1950年ごろ、ケネス・エッジワースとジェラルド・カイパーはそれぞれ
「冥王星くらいの距離のところに氷の星がたくさんあるんじゃね?」
と予想していたのです。なので、このエリアをエッジワース・カイパーベルト the Edgeworth-Kuiper belt 、そこにある天体を
エッジワース・カイパーベルト天体Edgeworth-Kuiper Belt Object 略してEKBO(えくぼ?)というのですが、このときはまだ、単なる仮説の段階です。
ところが、望遠鏡などの性能が上がり、1992年、エッジワース・カイパーベルト天体が1,000個以上も発見されました。さらに21世紀に入ると冥王星と同じ程度の大きさの天体が発見されます。特に2003年に発見された2003 UB313(のちに「エリス Eris」と名前がつく)は冥王星より直径が大きく、太陽系10番惑星かと注目されました。
そうなってくると冥王星だけを「惑星」と特別扱いにしておていいのかという疑問が生じてきます。
そうして、2006年、国際天文学連合の総会がチェコのプラハで開催され、惑星を次のように定義しました。
A “planet” is a celestial body that
(a) is in orbit around the Sun,
(b) has sufficient mass for its self-gravity to overcome rigid body forces so that it assumes a hydrostatic equilibrium (nearly round) shape,
and (c) has cleared the neighbourhood around its orbit.
日本学術会議の和訳では
1) 次の3つの条件を満たす天体を planet と呼ぶ。
(a)太陽のまわりを回っている
(b)質量が十分大きいため自己の万有引力で強くまとまり、ほぼ球形(流体力学的平衡の形状)になっている
(c)その軌道の領域で他の天体を力学的に一掃している
(c)の「一掃」がわかりにくいので補足すると、その軌道周辺にある他の岩石を自分のところに集めてしまうか、弾き出して一掃するということ。それには圧倒的な質量のある唯一の天体でなければならないというわけです。
冥王星は軌道周辺にたくさんの天体があるため、一掃してないじゃんということで、この(c)に引っかかってしまって惑星の座を追われたのです。
で、冥王星はエッジワース・カイパーベルト天体とともに、新しいカテゴリー「太陽系外縁天体 trans Neptunian objects(略してTNO ちなみに直訳すると「海王星の向こう側の天体」)」というグループに所属しています。
ちなみに冥王星は英語でPlutoですが、plutoは他動詞として「~を降格させる、~の価値を低く評価する」という意味で使われるようになりました。日本語でいえば「冥王星する」と表現するようなものでしょうか。
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