初めての生徒、初めての試練
4月ではまだ寒かったり雪が残っていて植物がみられない地域でなければ、日本のほとんどの学校で、最初にやる理科の内容のまとまり(大単元)は「いろいろな生物とその共通点」でしょう。だとすると、理科の授業を始めて2~3回くらいの時点で、屋外に出て身近な生物を観察を行います。
ここでの最大のリスクは、生徒がわけのわからない植物を持ってきて「先生、これは何という植物ですか?」と質問されること。
2年生や3年生、あるいは高校生のクラスに前学年の先生と交代して新たに担当する場合でも、初回、もしくは初回から数回目の授業で生徒からちょっと難しそうだったり困りそうな質問をしてくることがあります。この真意は、その質問に先生がどう返す(切り抜ける)かで先生としての資質・能力を見るところにあります。それによりその後のクラスとの信頼関係・立ち位置(または生徒視点での先生のキャラづけ)が大きく変わってくるため、なかなか気が抜けないところです。
でもそこは入学したての中学1年生。先生を値踏みする、という気持ちはないでしょう(そう信じたい)。だからこそ、純粋な疑問を先生にぶつけたのに明快に答えられないのは、生徒を悲しい気持ちにさせてしまいます。これが重なると「この先生、実はあまり理科に詳しくないな」と思われ、残念なことになってしまいます。
回避方法を考える
そうならないためには、どうすればよいのでしょうか。
危険回避の方法は、正攻法から姑息な手段まで、いくつかあります。
優等生的な正攻法
優等生的な正攻法は、あらかじめ校庭にどんな生物がいるかチェックして、知らない生物は事前に調べておくことです。表向きは本当にこれにつきるのでしょうが、現役の先生ならお判りですね、学校の4月ってめちゃくちゃ忙しいよね。まして1年担任だったら新しいクラスを軌道に乗せることに気をつかいまくりで、なかなか授業の方にまで手が回らないでしょう。そんななか苦労して校庭をチェックしても、生徒が質問するのは、事前にみたときには気にもかけなかった植物だったりします…。
普通の正攻法
普通の正攻法は、「なんだろうね、調べてみよう」と、その場で調べるという方法です。先生と一緒に調べるやり方と、あるいは完全に生徒に調べさせるというやり方があります。最近ではgoogleレンズなどネットでの検索も容易になりましたから、有効な方法の一つです。ただし、ネットでのAI検索も、たまに「そりゃちがうだろ」という結果が返ってくることもありますから気をつけましょう。また、「先生も知らない」と察されると、特によく見かける植物だった場合、ちょっと悔しい感じもします。
なのでこの方法をちょっとアレンジしてみましょう。名前を聞かれたら「ああ、これね」とおもむろにスマホやタブレットを取り出し、手際よく調べ、「ほら、これだよ、〇〇っていうんだ」と画面を見せ、さらに解説があればそれを読んで補足すると、「あ、この先生はわかっていたけど、わざわざ自分のために見せてくれたんだ」とかなりの確率で勘違いしてくれます。できれば分厚い図鑑でパラパラとすでに見たことがある項目を探すようにやると、成功率がアップします。
高度な方法
さらに高度な方法としては、校庭に行く前に「(先生が知っている)この植物を探してみよう」というような課題を設定する方法もあります。とくにビンゴなどのゲーム形式でやると、そこに載っている植物以外には目もくれなくなるので、わけわからない植物の名前に疑問をもつようなことがなくなります。ただし、本来のここで学習したいことの目的からそれるかもしれません。
正直がいいとは限らない
正直だけど意外にダメなのが、わからないから次回までに調べる、という方法。たぶん次回の授業で答えても、生徒はそのことについての興味を失っています。かといって次回の授業で答えなかったら、「ごまかされた」と質問をスルーされたことを覚えているものです。どちらにしてもあまり面白くない展開です。なんといっても、中1の最初の時期に先生がこの程度の質問に答えられないことを認めるのは避けたいところです。
もちろん、「知らん」ですませたり、適当に言ってごまかすのは論外です。
関係性の構築
なお、もう少し生徒との関係性(と先生のキャラの確立)ができている場合や、そもそも中学校理科の範疇から逸脱するような内容の質問なら素直に知らないことを認めてもかまわないでしょう。
ただ、中1の4月という、教師と生徒の関係性が確立しておらず、また生徒は中学校の期待と不安が入り混じっている時期に、たかが校庭の生物の名前程度の質問に答えられず「理科の先生なのにわからないんだ…」と生徒を失望させるのは、たとえ嘘で塗り固めても避けたいところだと思うのは私だけでしょうかねぇ。
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