平成29年告示の中学校学習指導要領において、水溶液は、平成20年告示の中学校学習指導要領にあった(ア)物質の溶解 の内容のほとんどが小学校に移行し、(イ)溶解度と再結晶が新指導要領で(ア)水溶液となって残りました。なのでこの辺りの内容を中学で扱わなくていいということになります。ただし、内容の取扱いにある「粒子のモデル関連付けて扱うこと」と「質量パーセント濃度に触れること」は、(ア)水溶液の中に扱うことになりました。(ただし、削られたはずの部分が教科書にまだ残っている可能性はあります。)
水が100g入っているビーカーに10gの砂糖を加えてよくかき混ぜました。砂糖はもう見えません。ただの水のようです。砂糖は無くなったのでしょうか。
そんなことない?それなら、どこへ行ったのでしょうか。
・水の中しか考えらえれない。
・水に溶けた。
ほほう、砂糖は見えなくなったのにこの中にあると。証拠はありますか。
・溶かした水をなめると甘くなっている。
・砂糖の重さの分増えて、110gになっている。
たしかになめると甘く、砂糖を溶かした分重くなっていますね。
でも見ただけでは砂糖が溶けている様子はわかりません。そこで、砂糖が水に溶けている様子が見てわかるように図で表わしてみましょう。このような、特に見えなかったり複雑だったりする現象を説明するために用いられる図や模型などをモデルといいます。
課題:砂糖が水に溶けている様子をモデルで表わしてみよう。
さて、モデルで表わしてみようといっても何をどう表せばいいのかわかりませんね。
モデルで表わしたいことの一つ目は
・溶けた砂糖はなくなったのではなく、水の中にあること
それからこれは、カラメルの茶色い色がついている砂糖を溶かした砂糖水ですが、色の濃さは上と下で違いますか。
同じですね。これは,溶けている砂糖が下の方にたまったりせず、上も下も均一に広がっていることを意味します。
これも表したいところです。
モデルで表わしたいことの2つ目は
・砂糖が水の中を均一に広がっていること
それをもとにいよいよモデルをかいてみたいと思います。
水の入ったビーカーの図がありますから、これに砂糖が溶けている様子をかいてみましょう。
それともう一つ、溶かす前の砂糖のかたまりのモデルもかいてみてください。って、砂糖の粉のスケッチを描くんじゃないですよ。水の中の砂糖をこう表すならば、溶かす前の砂糖はこうかけばいい、と考えてかいてみましょう。
ヒント:砂糖の小さな粒を〇で表わしてみましょう。
かいたモデルを班でお互いに見てみましょう。もし違ったら、どこが違うのか、それはどんなことを意味しているのか考えるとより、正しいものに近づけるでしょう。
水溶液の中で、砂糖の粒があって均一に広がっている様子を、砂糖の〇の粒が均一に広がっているようにあらわしました。
溶かす前の砂糖のかたまりは、砂糖の粒がたくさん集まっているのですね。
ちなみに、砂糖のかたまりの○の数と、ビーカーの中の○の数はどちらも16個でそろえているのもちょっとしたこだわりです。
つまり、砂糖が水に溶けてもなくなったりしないと。だから100gの水に10gの砂糖を溶かすと110gの砂糖水ができるわけじゃないですか。
そして、当たり前のように触れませんでしたが。水に溶けている砂糖も、溶ける前の砂糖も同じ砂糖です。何が違うのかというと、その大きさです。水に溶けている砂糖は小さくて目に見えません。理科室にある顕微鏡で拡大しても見えません。とてもとても小さいので、目に見えないのですが、でもしっかりいますので、なめると甘いのです!
ということで、砂糖が水に溶けている様子をモデルで表わしてみることができたわけですが、こういう発想をする人もいるんじゃないでしょうか。
「砂糖も粒で表わすなら、水も粒で表わすべきなんじゃないの?」
おっしゃる通りです。ってことで、試しに表してみました。青い〇が水の粒です。
なに、見づらい?こっちはかくのが大変だったです…。粒が2種類あってわかりづらかったりするので(そもそもモデルで表わす目的はわかりやすく示すことですから)、特に水を注目するのでなければ、砂糖だけの粒の図でいきましょう。
今回は砂糖を例にしましたが、これが食塩だったらどうなるでしょうか。
水中でナトリウムイオンと塩化物イオンに電離してしまうので、食塩の粒を〇と1種類で表記することが、ちょっと微妙な話になります。とはいえ、中1段階では電離の話もできないので、非電解質で水に溶けても同じ分子のままである砂糖が例に挙げられます。
それでもナトリウムイオンや塩化物イオン自体は何らほかの物質に変化するものではありませんから、ナトリウムイオンと塩化物イオンも〇で表わすという少々乱暴な点に目をつぶると、モデルとしてはギリギリセーフなのかもしれません。平成24年度の全国学力調査の中学校理科では水溶液のモデルの問題が出ていましたが、食塩水の設定で食塩の粒を〇と1種類で表記していました。
しかし、二酸化炭素を溶かしたとなると、溶質が水と化学変化して炭酸イオンなど別の化学種になってしまいますから、もはや今回のような表し方では難しいものがあります。
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