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0977 【化学変化と電池09】化学変化と電池(5) ダニエル電池の仕組み

では、ダニエル電池の仕組みを見てみましょう。

ボルタ電池との違いは水溶液の中に透析膜や素焼き版のような「壁」をつくって+極側とー極側の金属板と触れる水溶液を変えている点です。
-極側の亜鉛板には硫酸亜鉛の水溶液を、+極側の銅板には硫酸銅水溶液をあてがっています。

では、ボルタ電池のときのように、-極、+極での化学変化を考えてみましょう。

まず、-極の亜鉛では亜鉛板の原子がイオンになります。これは、ボルタ電池と同じですね。
Zn → Zn2+ + 2e

+極では電極表面付近の水溶液のイオンが原子になります。硫酸銅水溶液ですから銅イオンが銅原子になるわけです。
Cu2+ + 2e → Cu

ここで「あ!」と思った人は鋭い。ボルタ電池ではここで水素が発生していました。ボルタ電池が長持ちしない元凶はこの水素にあったのですが、それが今度は銅原子に変わっています。これがダニエル電池の秘密です。もともと電極も銅板でしたから、そこに銅原子がくっついても、やっぱり銅板です。

ここで、
だったら、わざわざ壁をつくって水溶液を2種類にしなくても、水溶液を硫酸銅にしたボルタ電池で事が済むのではないか?という悪魔的発想・・・!

ざわ・・・ざわ・・・

以前木炭電池で食塩水の代わりに硫酸銅水溶液にしてみましたが、食塩水にくらべ性能は落ち、アルミニウム箔の部分が茶色くなっていく始末でした。どういうことでしょうか。陰極の金属であるアルミニウムがイオン化し、代わりに水溶液中の銅イオンが原子化したのです。だって、イオン化傾向は銅よりアルミニウムの方が大きいから。

同様に、水溶液を硫酸銅にしたボルタ電池も金属亜鉛と硫酸銅水溶液(銅イオン)の間でイオンと原子の入れ替わりが起ってしまい、電池としての効率が悪いんだな。
ガッデム!

というわけでやっぱり2つの水溶液の間に壁が必要だということがわかりましたが、それはさておき、それぞれの電極と水溶液の間で反応が進んでいくとどうなるでしょう、

まず亜鉛側。どんどん電極の亜鉛原子が少なくなって水溶液中に亜鉛イオンが増えていきます。亜鉛が溶けているってことですが、無限に溶けるというわけでもありません。そう、溶解度ってやつです。飽和したらもう溶けないので電池として終わりです。ジ・エンドです。

だから
1.硫酸亜鉛水溶液は濃度が薄いほうがよい (飽和するまで時間がかかる→電池として長持ちする:とはいえ気持ち長くなる程度らしい)
2.亜鉛イオンは「壁」を通って硫酸銅水溶液側に送り込む
 Zn → Zn2+ + 2e だけだったら塩化亜鉛水溶液は陽イオンの亜鉛イオンだけ増え、陰イオンは増えないことになる。するってぇと水溶液自身が+の電気を帯びるってことかい?馬鹿言っちゃいけねぇ。増えすぎた亜鉛イオンは硫酸銅水溶液側に送り込んじまいな。あるいは向こうさんから陰イオンがやってくるとか。

一方銅板側は、水溶液中の銅イオンがどんどん少なくなっていきます。そうすると、いつか、銅イオンは無くなってしまいますね。なくなったらまさに電池切れです。

だから
3.硫酸銅水溶液は濃度が濃いほうがよい (なくなるまで時間がかかる→電池として長持ちする:とはいえ気持ち長くなる程度らしい)
4.硫酸イオンは「壁」を通って硫酸亜鉛水溶液側に送り込む
Cu2+ + 2e → Cu
だけだったら塩化銅水溶液は陽イオンの銅イオンだけ減り、陰イオンである硫酸イオンの数は変わらない。するってぇと水溶液自身が-の電気を帯びるってことかい?馬鹿言っちゃいけねぇ。余った硫酸イオンは硫酸亜鉛水溶液側に送り込んじまいな。あるいは向こうさんから陽イオンがやってきてもいいけどな。

というわけで、硫酸亜鉛と硫酸銅の2つの水溶液、それぞれ別々のビーカーに入れるのではなく、透析膜や素焼きのような中途半場に2つの水溶液を行き来できそうな「壁」になっているのは 亜鉛側から銅側へ亜鉛イオンが流れ、銅側から亜鉛側へ硫酸イオンが流れていくわけさ。

そして、硫酸銅水溶液は濃い、硫酸亜鉛水溶液は薄いと吉というわけだ。

じゃあじゃあ、硫酸亜鉛が薄いほうがいいなら、究極の薄い、精製水を入れればいいんじゃね?うはwww俺天才wwwww

ところが実際につくってプロペラモーターにつなげてみると、これが全然回らない!
いとわびし!

その理由はあれこれ言われているけれど、中理の範疇じゃなさそうなので飛ばすとしても、ある程度のイオンは必要なのですね。

Check it out!
高性能ダニエル電池 ~電解質溶液の最適濃度~
この研究だと 硫酸亜鉛の濃度は 0.5mol/L がベストでそれより薄いと初期電圧が低くなってしまうらしい。だからプロペラモーターが回らなかったのか。

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