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0831 理科教師のための作問入門(17) 汎用性のある活用問題のパターン

 このシリーズも終わりに近づいてきました。なのでそろそろ私が使いこんでる活用問題を作りやすい出題のパターンをいくつか紹介します。

課題に応じて科学的に探究する

 斑入りのアサガオの葉での光合成の実験で「●●について調べる(確かめる)には葉のどことどこを比べればいいか」(構想または分析・解釈)という問題は、単なる条件制御の問題のようにみえて、「光合成には光が必要だ」「光合成には葉緑体が必要だ」という検証したい仮説によって答えが変わってくる「課題に応じて科学的に探究する」問題と言えます。
 実験操作だけに気にとられてしまうとア~エのうちどれだろう、どれもよさそうだし…と悩むけど、課題、つまりこれを明らかにしたいなら「ア」だよねと、課題を利用することで初めて正解を導ける問題は、いい感じにメッセージ性のある思考問題に仕立てあがりそうです。

モデルたとえ話が自然事象の何に対応するか

 私の授業では、飽和水蒸気量をバケツに例えるなど、抽象的な概念を理解するのによくたとえ話でイメージをもたせることがあります。また、筋肉でできているわけではない肺がどうして動き続けるのか、この肺呼吸の複雑な構造をへーリングの模型で表します。
 これはこれでわかりやすく、楽しいです。が、意外にわかったつもりにしかすぎず、この例えられたりモデルで表されたりして置き換えられた世界が、もともとの自然事象に正しくリンクしていないこともあります。
 「音の性質」で学習する雷や花火が光ってから音が聞こえるまでの時間を使えば、雷や花火までの距離が分かることとは、同じく1年の「地震の伝わり方と地球内部の働き」で学習する観測点から震源までの距離は初期微動継続時間に比例することと登場しているものは違えど、まったく同じ構造です。では、光と音は地震の話ではそれぞれ何に対応するか、このあたりもいろいろ思考が必要になってくるところです。

 飽和水蒸気量と水溶液の溶解度のところでは、この2つで飽和水蒸気量の何が水溶液の何に対応しているかというところを詳しく見ていきました。飽和水蒸気量で出てきたものに対応するものが水溶液にはない、というものもありましたね。

意見を対立させる

 二人を登場させ、その二人が考える探究の過程や、一つの事象や結果に対する分析・解釈が違っている。当然どちらかが間違っている(両方の場合もありますが)わけで、それをストレートに「検討・改善」させることもできはしますが、どちらが正しいかジャッジする方法を構想するというパターンもなかなか憎いです。

誤りがあるまま話を進める

 間違いを含む探究の過程や考えをもとに、その考えを図やモデルで表したり、その考えが正しかったら、どのような実験結果になるかを問うなど、誤りを誤りと言わないでそのまま「だとすると、どうなる?」を聞く問題。例えばこんな感じ。

 もし、亜鉛よりも銅の方がイオンになりやすいならば、硫酸銅水溶液に亜鉛を入れるとどうなる?
 もし、アンモニアが水に溶けにくかったとしても、アンモニアを上方置換で集めることはできる?

 ほらね、ちょっと考えるでしょ?
 「ほらね、」といえば中学生の合唱曲にありますが、そんな曲の存在を知らないまま、担任するクラスの学活で合唱コンクールで歌うクラスの合唱曲が『ほらね、』に決まった話し合いを見守った後、職員室に戻って音楽の先生に「先生のクラスの合唱曲は何に決まりましたか?」と聞かれ、「何だっけ…(え~と、話し言葉で3文字で肯定的な感じのやつだったよな)『それな』」と答えて大笑いされました。なお、他のクラスでは「じゃあね」を歌うと聞いて、「へ~、おニャン子クラブか~なつかし~」とワクテカし、本番でそのクラスの合唱を聴いて人知れずがっかりしたのは秘密です。

じゃあね

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 探究の過程や考えが正しければ、勉強している人は、自分の持っている「知識」で答えてしまうため、本当の意味での「思考・判断・表現」にならない。この、以前も紹介した「思考は2回目以降は知識になってしまう問題」を解決するのが、これなんです。
 つまり、いくらよく勉強している人でも、間違った探究の過程や考えを必死に覚えることはしない。そんなことしたら普通の知識の問題で間違えかねない。だから、間違ったものを前提に話を進めるというのは、この問題を見た時に初めて体験するシチュエーションと言えます。そうすると、単なる知識だけでは解決できず「こういう風に思ってたらこうなるよな」とどうしても考えないといけません。つまりおのづから思考・判断・表現になるわけです。
 もちろん間違えたまま話を進めるので、それを直接「検討・改善」させるのもよいですが、あえて、その間違いにツッコミを入れさせず、その考えのもと実験の計画を立てたり、結果を分析・解釈させていくのも面白いですね。

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