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0085 有機物と無機物の定義・分類

 以前、化学が専門だった、という方から「水素や炭素のような単体を、無機物と言っていいのか」というご質問を受けたことがあります。一瞬「はぁ?」と思ったのですが、おそらくその方は、無機物を「無機化合物」の意味で定義していたのでは、と推測しました。そりゃ、水素は無機「化合物」ではありませんよね。

 一方、炭素単体は無機物扱いとすれば、論理的にすべての有機物は化合物ということになります。だから有機物=有機化合物 は成り立ちます。

 でも、有機物、無機物の定義(分類)というのは、意外に難しいものがあります。

 もともと、有機物というのは、その合成には生物の力が必要で、人工的には作れないという物質であるという考え方でした。これを「生気説」といいます。ところが、1828年、ドイツのFriedrich Wöhlerがシアン酸アンモニウムの水溶液を加熱したら、有機物であり合成できないはずの尿素ができてしまったため、この後、生気説は衰退していきます。

 そして現在では有機物・無機物は、生気説時代の分類との齟齬がなるべく出ないように、炭素に注目して定義しているのだと思いますが、二酸化炭素、炭素の単体のような例外もあることのほか、中には「この分類で本当にいいの?」と専門家の中でも違和感を持つ物質もあるようです。そうすると、シロートにはわけのわからない有機物・無機物の定義を議論しそうです。

 しかし、明らかに分類できる物質はともかく、微妙な物質を捕まえて有機物か無機物か、という話は、木と草の違い・果物と野菜の違いのように、本質ではない、単なる無粋な屁理屈に思えてしまうんですよね。

 かくして、あいまいな定義のまま新聞に載るのでした。教科書も同じだけど。
(2012年04月15日公開)


事は、何かの本で、一般に有機物は分子をつくると書いてあった(らしい)ことから始まる。それに対して「すべての」ではなく「一般に」ということは例外はあるんだろ、それ、つまり分子を作らない有機物って何だ?といういちゃもんに近い疑問を呈した人がいたらしい。

それは、ふつうなら有機物・無機物の正確な定義があいまいだからそういう表現になっているだけだろうとスル―するような問題でしょう。化学大辞典も明確な分類は避けています。
しかし、話はいつの間にか有機物と無機物の定義に移り変わっていってしまうのです。

中学校的には、有機物をよく「炭素を含む化合物」と説明し、でも二酸化炭素は例外的に無機物、とすることが普通です。

この他の例外、すなわち炭素を含む化合物である無機物としては、
二酸化炭素の兄弟分の一酸化炭素
二酸化炭素を水に入れてできる炭酸
炭酸が塩基と反応してできる炭酸塩
この辺りは異論はないと思うのですが…

じゃ、酢酸ナトリウムCH3COONaはどっちよ?
酢酸は文句なく有機物だけどなぁ。ナトリウムってところが無機物感を醸し出しています。

あるいはC-H結合が有機物の条件とする向きもあります。実際問題としてほとんどの(中学校で扱う範囲ではすべての)有機物に、水素が含まれていますし、これは一見よさそうな感じがします。
そもそも水素のない四塩化炭素CCl4や二硫化炭素CS2、ホスゲン COCl2あたりは有機物っぽくないので(※個人の感想です)無機物になるのはよいとしよう。
しかし、シアン化水素HCNが有機物になる?でもシアン化ナトリウムNaCNは無機物?いや、HとNaの違いで有機物無機物が変わるのはおかしくないか?
さらには、シュウ酸 HOOC-COOH を無機物とするのもなぁ…と

そこで出てきた有機物の斬新な定義
有機化学者が扱う物質が有機物、無機化学者が扱う物質がである!
では、酢酸ナトリウムは?
有機化学者も無機化学者も扱っているそうです。。。チーン♪

有機物と無機物の線引きは?事態は、まったく解決しそうにありません。(2012年10月24日公開)

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