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0362 講義「環境教育の理想と現実」

大学の「大気と水」という講義でゲスト講師として環境教育のお話しをしてきました。注・2009年の話です

通り一遍の講義でもいいのかなと思ったのですが、環境に対する意識が高い学生さんたちが集まるだろうから、環境教育の特徴の一つである「多面性」を出して、環境教育それ自身のもつ「影」の部分を紹介してみようかな、と思いました。

環境に限ったことではありませんが、「教育が大切だ」と何でもかんでも教育に押しつける割には、そこで思考停止して、教育の中身や方法は具体的に考えない人が多い昨今、「教育もそんなに簡単なことじゃないんだよ」というメッセージも伝えたいかな~と。

そんなことで「環境教育その理想と現実」というテーマで展開してきました。

まず最初に、こんな授業を例に挙げます。

地球温暖化がテーマ
「ツバルが地球温暖化の影響で沈んでしまう」写真やビデオを多用
たくさんの専門用語で話す先生。子どもからも専門用語が飛び交う。
「私たちにできることは?」という問いかけに子どもたちからたくさんのアイデア。
その中に「誰も使っていない部屋の電気は消す」

しかし、授業後、子どもたちの出て行った教室は、電気がついたままだったorz

「何か違和感は感じませんでしたか?」

というところで、自己紹介や本日の講義の概要などのオープニング。

続いて環境教育の概論として、
環境教育の方向性として「環境についての教育」から「持続可能性についての教育」にシフトしてきている点。
ストックホルム会議→ヨハネスブルグ・サミット→ESDの流れ
日本の環境教育 4つの分野・3つの観点

で、ここら辺から仕掛けていく。

子どもの視点から見ると、もの心着いた頃から「地球が危ない」で聞き飽きた。「こういっておけばいい」的な模範解答ができて、予定調和な環境教育の授業展開。だから結構専門用語も断片的に知っている。ところが実際の行動には伴わない…最初に例示した授業の問題点を明確にする。

さらに教師はあまり環境の最新動向に詳しくないことが多い。かといって専門家に授業を丸投げすると。これを教えたい!という熱意だけで進めてしまい、子どもの理解や教育方法の稚拙さから、たんなる授業者の押しつけになってしまったり、子どもが内容をまったく理解できず、失敗してしまうケースが多い。さらにタチの悪いことには、授業者がそれに気づかず満足してしまうという大人の自己満足に子どもがつきあわされている悲劇もしばしばある。
環境の専門家≠環境教育の専門家 だよと。

さらにエコフォビアの紹介、環境ホルモンを例に正しいところがよくわかってないこと、さらに関連して温暖化懐疑論、マスコミの存在、政治的道具としての「環境」など、環境教育を難しくしている要因をいくつか挙げてみました。

その上で理科教育法でも扱った、次の質問「もっと不都合な真実」をぶつけてみました。

(現在の地球温暖化の進展の状況から空気中の二酸化炭素を減らすことは不可能で、温暖化の進展ををスローダウンさせることが精一杯という事実を前提として)
「これで二酸化炭素が減って温暖化が止められるよね」と地道に節電をがんばる子どもにどう答えるべきか。
Yesといえば、ウソをついたことになります。かといってNoといえば子どもの気持ちを踏みにじります。

Yes…14 No…7 意外にYesが多かったなと。
以前理科教育法でやったときはYes…7 No…12 とNo派が多かったのですが。

で、環境教育は子どもの気づき=意識の変革を大切にすべきで、直接の効果を全面に問うべきでない、という話をしました。その成功事例として、KidsISOをとりあげ、気づきを大切にしていながらも、「副産物」として二酸化炭素の削減という数字に見える結果がついてきたケースを紹介して終わり。

ちょっと「影」が濃すぎて、もう少し、環境教育に夢と希望を持たせてもよかったのかな…と反省しました。

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