いや、これもややこしい話。
刺激と反応で「意識して起こる反応」と「意識せずに起こる反応(反射)」があるけれど、前者は手を握られたら握り返す、後者は熱い夜間を触ったときに手を引っ込める例がよく挙げられます。

両者の違いは、信号が「意識して起こる反応」が脊髄を経由して脳まで往復するのに対し、「反射」では信号が脊髄に到達した時点で手を放せという反応の信号が、脳ではなく脊髄から行われるということです。一応脳には事後報告が行くものの、そのときには脊髄からの信号は出ているというわけです。
脳までいかず、脊髄で反射することによって、刺激から反応までの時間を短くすることができ、命にかかわるような刺激から逃れる反応するときは、この時間短縮で間一髪助ったってこともあるかもしれません。
しかし反射の場合、「刺激Aをうけたら反応Bをする」と刺激と反応が単純に1:1で対応していなければなりません。たとえば左手を握られた、という刺激を受けたときに「①左手を握り返す②右手を握る③左手を振り払う④何もしない⑤何か言う…」などのたくさんの選択肢からどれにしようか選べる、というか選ばなくてはならない場合は反射ではなく意識をして起こる反応です。刺激を受けたときの反応をいくつかの選択肢から「選ぶ」ことは脊髄ではできず、脳の仕事です。
さて、ここで2018年の徳島県の入試問題を見てみましょう。
感覚器官で刺激を受けとって反応するしくみについて. (1)~(5)に答えなさい。
感覚器官で刺激を受けとってから反応するまでの時間を調べるために、次の実験を行った。
実験
①図1のようにじろうさんは長さ30cmの物差しの上端を持ち、みかさんはものさしにふれないように0の目盛りの位置に指をそえた。
②じろうさんは合図なしにものさしを落とした。
③図2のように、みかさんはものさしが落ち始めるのを見たら、すぐにものさしをつかんだ。
④ものさしが何cm落ちたところでつかめたかを読みとり,記録した。 ⑤①~④を合計5回繰り返した。表はその結果をまとめたものである。

(1) ヒトが感覚器官で受けとる刺激と,その刺激から生じる感覚との組み合わせとして誤っているものはどれか,ア~エから1つ選びなさい。
ア. 熱さ,温覚 イ.音,聴覚 ウ.光,視覚 エ . 味,喚覚
(2) 脳や脊髄から枝分かれして体の中に広がっている感覚神経や運動神経などを、まとめて何というか、書きなさい。
(3) 実験で,みかさんの体において. 信号が目から手の筋肉まで伝わる経路を,図3のA~Fから必要な記号を選び、左から順に並べて書きなさい。
(4) 図4は、ものさしが落ちた距離とものさしが落ちるのに要する時間との関係を表している。実験の結果の平均値を求め、その平均値をもとに、みかさんが、ものさしが落ち始めるのを見てからつかむまでにかかる時間を、図4から読み取って書きなさい。
(5) 熱いものにふれたときに思わず手を引っこめるような反応を反射という。反射は、刺激に対して無意識に起こる反応であり、意識して起こす反応に比べて、刺激を受けてから反応するまでの時間が短い。このようなことから、反射はヒトの体にどのように役立っていると考えられるか、書きなさい。
解答:(1)エ (2)末梢神経 (3)ADE (4)0.2s (5)危険から体を守ったり、体の働きを調節したりするのに役立っている。
(1)(2)(5)は知識問題。(4)は問題の指示通り実験の結果の平均値を求めたところ、ちょうど19cm。横軸19cmだと、縦軸は0.2sのところにグラフがある。それほど大したことはない。
そう、ここでとりあげたいのは(3)です。
この問題のポイントは、目の神経(視神経)や耳の神経(聴神経)などは脊髄には行かず脳と直結しているというところです。
このケースは前半は目からの刺激なので脊髄を通らずに直接脳に行きます(A)が、反応するときは手の筋肉を動かすことになるので脊髄を通って筋肉へ行きます(DE)。この問題はこれでOK
しかしこれが、たとえば、目に強い光を当てると瞳孔が収縮するという対光反射を例とした場合、刺激側も反応側も目ですから脊髄を通らないことになります。
とすると、「意識して起こる反応」だろうと「意識せずに起こる反応(反射)」だろうと刺激の信号が脳まで行き、そして脳から反応の信号が返ってくることになり、信号の経路の違いがみられなくなってしまいます。
ま、大脳と中脳を分ければわかる話ですが、中学理科ではそこまでは細かすぎるしな…。


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