0210 「躍動の翼」を科学的に探究する

国立公文書館 平成30年秋の特別展

明治150年記念「躍動する明治-近代日本の幕開け-」

を観に行こうとしたら、エントランス横(屋外)にフォトスポットの案内があったわけですよ。

これ、「躍動の翼」というらしいんです。

フラッシュをたいて撮ると…なんと!

何だこのカラーは?! 
自然の事物・現象に関わり、それらの中に問題を見いだしてしまいました。

課題:どうしてフラッシュをたくと黒い文字がカラーになったのだろうか。

とりあえず、脳裏に浮かんだ可能性を一つひとつつぶしていこう。

仮説1
ベンハムゴマのように脳が色を認識するときに錯覚したのではないか

→カラーの写真がきちんと撮影できたので錯覚ではなく、物理的に色がついていることになる。つまり仮説1は間違い

仮説2
目に見えないけど、赤外線が出ていて、デジカメには写った

→実物がカラーになっている状態を肉眼で見えたので、可視光である、はい論破。ということで仮説2も間違い

仮説3
黒い部分に、虹ビーズのようなものがはってあり、フラッシュの光を反射して虹色に光った

→虹ビーズなら同じ部分でも光の当たる角度によって色が変わるはず。

しかし、同じ「跳」の字を左から右からと角度を変えてフラッシュ撮影しても

赤・黄・青・紫の部分は変わらなかった。よって、仮説3も間違い。

その他、観察したこと
「躍動」の黒い文字のところに凸凹があるものの、パネルは完全な平らで曲がっていない。

そういえば、たとえば紫色の部分は境界付近を除き、どこもとっても同じ紫色}

さっき見たこの画像も、上ののびた画の左端の赤も、黄色に程よく近い部分も同じ赤。虹のような自然なカラフルさとは違い、なんか人工的なものを感じました。

そうすると、屈折とか反射とか幾何光学的なトリックではなく、インクに秘密がありそうだ、と思うのですが、
化学専攻だった割にはその先が思い浮かびません。。。

そこで、現代人の悪いクセ、すぐ検索に頼る…
すると出てきたのは

ニンジャインク 

これかぁ~(たぶん)
再帰反射性カラーインクで仕様を見ると白、赤、緑、黄、青、紫の6色あるので、この絵では赤黄青紫を使っているのだろう。そういえば橙色の部分がないし。

ニンジャインクの再帰性反射の仕組みはこのページに説明があります。
「従来反射インクはシルバー色に限られていましたが、反射 のメカニズムを変えることによってフルカラーに反射するイン クの開発にも成功しました。」とありますが、シルバー色に限られていたのは金属光沢で鏡のように反射させていたからでしょうか(激しく憶測)
ガラスビーズ型の再帰性反射なら、ガラスビーズの表面が黒ければ、フラッシュなしの場合、普通に黒くなる。しかしそこに強い光が当たれば、その光はガラスビーズの中の色の光が再帰性反射し、カラーに見えるということですかね。
光を当てる角度を変えても同じ色になる、というのもガラスビーズの中の色の光が再帰性反射したといえば説明がつきそう。

とはいえ企業秘密で詳しいことは教えてくれないだろうなぁ…おもしろかったけど。
(ここまで書いてニンジャインクじゃなかったらどうしよう。特に類似品だった場合…)

後日談

 再帰性反射というキーワードが出てきて、そういえば…と思いあたるフシがあります。

 「躍動の翼」の写真を何枚も撮っていたら、途中で展示を見終わったらしいカップルが入り口から出てきたので、一旦撮影をやめて二人に「躍動の翼」を譲りました。そして、女性が「躍動の翼」の絵の前に立ち、それを男性が正面からカメラで写します。

 彼らもフラッシュなし、フラッシュありと撮影していたようなのですが、「躍動の翼」を横に近い斜め前から見ている私には、「躍動の翼」がカラフルに光っているようには見えなかったのです。でもカップルは写った写真を見て「わー♪カラーだ!」と満足していたのです。

そっか、これが再帰性反射か!と実感を伴った理解をしてしまいました。

ということで、もう一度、カメラの他、今度はペンライトをもって国立公文書館に行って再実験。

まず、正面からペンライトの光をあててフラッシュなしで撮影してみます。
光が強く当たっている部分は、紫や赤の色が反射しています。

次に、同じ場所を、下からペンライトの光をあててフラッシュなしで撮影してみます。
再帰性反射ならば、光源とは離れた角度にあるカメラには色のついた光が反射しないはずです。

やはり再帰性反射のようですね。