PR

0743 理科教師のための作問入門(6) 主体的に学習に取り組む態度

 今日は身もふたもない結論を最初に言います。
 「主体的に学習に取り組む態度」の評価はペーパーテストでは厳しい
 ただし、何でもアリでいいならばできなくはない

 いやあ、「指導と評価の一体化」のための学習評価に関する参考資料の中学校理科版に関わって、その関係で偉そうに全国理科教育研究会・現職セミナー「指導と評価の一体化」オンライン研修会に偉そうに講師で参加しておきながらなんなのですが、正直、「主体的に学習に取り組む態度」については、できれば主体的に関わりたくないんですよね。

 のテーマはみんなが困っていて、万能な解決策を求めようとしています。ところが、これはたぶんどう扱っても完璧にはならず、何らかの欠陥が残ってしまいます。
 それを知りつつ私も以前「主体的に学習に取り組む態度」の評価実践2例なんて書いたら、多くの方に参考にしていただけた半面、案の定、一部でツッコミの対象となってしまいました。
 ある学校でこうやったらうまくいきました、という実践を紹介すると、確かにその学校ではうまくいったのかもしれないけれど、「そのやり方ではうちではできない」とか、実践したときには起こらなかったレアケースを挙げて揚げ足を取られたりするのはぶっちゃけ不愉快だったりします。まして一般化しようものなら「それではこの要素が欠けてる」とか「これだけの労力をかけて評価することは無理だろう」と集中砲火を浴びてしまいます。
 そうなると、よほどの自信がないと実践事例なんて出せなくなるよねぇ。にんげんだもの。みつを

 なので、某出版社から「主体的に学習に取り組む態度」の評価実践2例みたいな事例を各単元からもあげて40個ほど紹介する単著を書きませんか、というオファーをいただきましたが、そんな火中の栗を拾うような案件、他の条件も厳しかったこともあり速攻でお断りしました。

 それはともかく、ペーパーでの態度の評価の話です。「主体的に学習に取り組む態度」では例がないので、前の指導要領下での「自然事象への関心意欲態度」で考えてみましょう。

 平成14年から相対評価から絶対評価に代わるとともに、観点別評価が導入されました。その直後から、自治体レベルでの学力テストなどで「自然事象への関心意欲態度」を測るペーパーテストが出ては消えていきました。
 というのも、前向きな言葉が書いてあれば○なので、記述で問えば、生命尊重とか環境保全とか、その問題に応じた道徳的な耳障りのいい言葉を並べれば○がもらえますし、選択式で問えば正解の選択肢も間違いの選択肢もわざとらしい内容ですぐどれが正解かわかってしまうような問題しか作れません。
 これは都市伝説ですが、当時、そのような出題の無意味さにブチ切れた先生が、出題した教育委員会に「あなたはこの問題で生徒の自然事象への関心意欲態度が測れると良心に誓って言えるのか」と問いつめ、担当者は「ご理解ください…」とひたすら平身低頭していたなんて話がありました。
 ちなみに全国学力調査の中学校理科は平成24年からですので、この頃はまだやっていませんでした。
 その後、全国学力調査が始まりましたが、平成24年、27年は「自然事象への関心意欲態度」の観点の問題が出題されず、「ま、そうだよね」と思っていた矢先、平成30年には「自然事象への関心意欲態度」の観点の問題が1問だけですが出題されました。
 令和4年では出題されていません。

どんな問題でしょうか。問題の流れは出題冊子を見ていただくとして、当該の小問はこちらです。

8 (3)夏希さんはアルミニウムは水の温度の変化に関係していることは分かりましたが 【新たな疑問】をもちました。
 あなたならアルミニウムについてどのような新たな疑問をもちますか。 その疑間を書きなさい。

 疑問を書け、というのは通常見ないタイプの問題形式ですが、平成27年度にも課題を書く出題がされています。これらの出題は当時は一部の関係者にインパクトを持って迎えられたものの、そのような出題に対応できるような方向への授業改善という意味では、現場や教材会社の間ではそれほど響かなかった(もしくはそれに対応する手立てがなかった)ように思えます。少なくとも、課題や疑問を書かせるような問題は相変わらずとんと見かけません。

 さて、この問題は「自然事象への関心意欲態度」と「科学的な思考・表現」の2枚看板となっています。
 「自然事象への関心意欲態度
○ 【視点Ⅰ】「解決した課題を更に深めることに対する関心・意欲・態度」
○ 【視点Ⅱ】「解決した課題を学習内容と関連させることに対する関心・意欲・態度」
○ 【視点Ⅲ】「解決した課題を日常生活と関連させることに対する関心・意欲・態度」
など、書いてある内容の正誤で評価するのではなく、どんなことが書いてあるかで分類しているにすぎません。そういう意味では書いていればマルなのでしょう。

 そもそも問題が「あなたならアルミニウムについてどのような新たな疑問をもちますか。」とあります。
 作問の基本の一つと言えますが、通常、問題文には「あなたなら」という言葉はつけてはいけない、という掟があります。この掟を破ると、「あなた(解答者)」がそう思ったなら、その答えは当然正しい!となるわけですから、たとえ非科学的な妄想みたいなことを書いてもバツにはできない、したがってなんでもマルになってしまうからです。

 ただし、「あなたの疑問」を質的に担保したのが「科学的な思考・表現」としての解答です。
次のような基準で正答、準正答が決められます。もちろん、何かが書いてあっても条件を満たさなければ×になるわけです。

(正答の条件)
探究の過程を振り返り,アルミニウムが水の温度変化に関係していることについて解決した課題を更に深める新たな疑問で,次の(a)~(d)を満たしているもの。
(a)「アルミニウム」に関する記述であること。
(b)温度変化に関する記述であること。
(c)新たな疑問であること。
※最初の疑問「アルミニウムが入っているのはなぜだろうか」以外であること。
(d)疑問,もしくは探究の意欲を表現した文章であること。
※(例 「なぜ~だろう」,「~かしら」,「~だろうか」,「~なのか,調べてみたい」,「~について」など)

(a)~(d)を満たしているもの。  ◎(正答)
(a),(b)及び(c)は満たしているが,(d)を満たしていないもの   ○(準正答)
(a),(c)及び(d)は満たしているが,(b)を満たしていないもの。  ○
(a)及び(c)は満たしているが,(b)及び(d)を満たしていないもの。 ○

こうしてみると、「知識・技能」「思考・判断・表現」に努力を要するの人を少しでも救うために、その生徒の良いところをでっちあげる見つけるために「主体的に学習に取り組む態度」で何とかしよう、というときには使えるかもしれませんね。そこまでやるかどうかは別問題ですが。
 ところで、「知識・技能」「思考・判断・表現」でCな人を「主体的に学習に取り組む態度」で何とかBにすると、三観点の並びがCCBとなりますが、その字面を見るとRomanticが止まらないのは私だけでしょうか?

C.C.B7’シングル国内盤ロマンティックが止まらない筒美京平 作曲家 魅せられて 木綿のハンカチーフ また逢う日まで

中古価格
¥4,000から
(2024/3/23 17:07時点)

コメント

タイトルとURLをコピーしました