0055 【物質のすがた02】身の回りの物質とその性質(2)  金属の性質

2023年2月2日

 金属にはどんなものがあるでしょうか。
 金とか。

銀とか。

銅とか。

アルミニウムとか。

鉄とか。

いろいろありますね。

では、金属の共通の性質にはどのようなものがあるでしょうか。
 ここでは、前提として、金属と金属でないものを正しく区別できる、金属とは何かが分かっていることが前提になっています。そのうえで金属の性質にはどのようなものがあるか、というのでちょっとモヤモヤしますよね。

課題:金属の性質にはどのようなものがあるか。

 皆さんは、金属の性質としてどんなものが思いつくでしょうか。
 思いついたものが本当に金属の性質か、実験で確かめてみましょう。
 といっても理科室で、簡単に実験できる性質だと「電流を通す」「磁石につく」あたりがありそうですね。

 では、金属は「電流を通す」かどうか、実験を行ってみましょう。

 左は鉄、右は銅の板で実験しています。どちらも豆電球がついています。どちらも電流を通しました。「電流を通す」のは、金属の性質ということができそうです。
 たかだか2種類の金属を調べてうまくいったからと言って、それをすべての金属に共通の性質として言っていいのだろうか、まだ調べていないものの中に例外がないだろうかというツッコミは大変もっともなご意見です。その昔、石井食品から「タマゴにべんり」という卵料理の具?みたいなものがあったのですが、そのCMにある「2種類そろってお好み次第」というフレーズに対し、「2種類しかないのにお好み次第じゃないだろ!」と突っ込まれていたのを思い出しました。

 余談ですが、デコレーションケーキの表面につけられる銀色の小さな粒、あれはアラザンというのですが、あれは砂糖の粒に銀をコーティングしたものなので、電流も通します。

 また、銀色の折り紙は、電流を流すのですが、金色の折り紙は銀の折り紙に黄色いコーティングをしているので、そのままでは電流を流しません。アセトンなどでコーティングをはがせば、銀色(アルミニウム?)の表面で通すことができます。

 次に、金属は「磁石につく」かどうか、実験を行ってみましょう。
 また、鉄の板と銅の板を調べてみます。
 
 右の金属は鉄ですが、こちらは磁石についています。ところが、左側の銅は磁石にくっつきません。
 というわけで、磁石につく金属とつかない金属があるので、「磁石につく」というのは、金属に共通の性質とは言えない、ということが分かりました。

 さて、金属の性質は他にはどのようなものがあるのでしょうか。
 金属といえばあの特有の輝きをイメージする人も多いのではないでしょうか。金属の性質には「磨くと光る」という性質があります。金属特有の金属光沢がありますよね。
 これは、銀です。あまり銀というか、そもそも金属っぽくありませんが、

磨いていくと

金属光沢がみられました!

また、金属は、引っ張ると伸びる性質延性(えんせい)

たたくと広がる性質、展性(てんせい)があります。

 とくに金は延性・展性が特に大きな金属として知られており、延性については、1gの金は3000mの長さの糸にでき、展性については、金をたたいて広げてできた金箔の厚みが約1/10000mmなんという話もあります。

 電気を通す(電気伝導性)は、実験した通りです。
 そして電気だけでなく熱もよく通します(熱伝導性)。

結論
金属には、次のような性質がある。
①磨けば光る(金属光沢)
②引っ張ると伸びる(延性)
③たたくとのびる・広がる(展性)
④電気を通す(電気伝導性)
⑤熱を通す(熱伝導性)

なお、金属は「磁石につく」とは限りません。

ところで、木やプラスチック、水など、金属でない物質を非金属といいます。
なお非金属は金属の性質①~⑤のどの性質も持たない、たとえば「非金属なら電気を通さない」というわけではありません。

 金属なら先ほど述べた「金属の性質」をもつのですが、だからといって「金属の性質(のいずれか)をもつ」ならば「金属」であるというのは、よくある論理的な誤り(逆は必ずしも真ならず)です。木炭(鉛筆の芯)は炭素、非金属ですが、電流を流す性質があります。
 そういう目で見てみると、例えば酸化銅の還元塩化銅の電気分解の実験で、茶色い物質ができますが、この段階で磨いて光っても、電気を通しても金属、まして「銅」と断定するのは証拠不十分で、あくまでも推定にすぎません。原子・分子の考え方が分かって、化学反応式で化学変化の全貌がわかってはじめて、「銅」だと確定できるのです。(もちろん化学反応式を間違えるなど考察に誤りがあれば別ですが)
 平成20年改訂までの学習指導要領でも(4)化学変化と原子・分子の ア物質の成り立ち (ア)物質の分解で「物質を分解する実験を行い、分解して生成した物質いから元の物質の成分が推定できることを見いだすこと」とありました。これも、原子の概念が登場する前なので「原子」ではなく「成分」を「推定」するのみにとどまります。
 似た話はとして、中1で出てくる「有機物を燃やすと二酸化炭素と水ができることから、炭素と水素が含まれる」という説明の「炭素」「水素」という言葉が本来は「炭素原子」「水素原子」というのもありますが、ここでも「原子」の学習前なのでうやむやにしていています。「有機物に水素が含まれている」といわれたら、中1の段階では「水素」といえば気体の水素、つまりH2のことですので、砂糖などの有機物の中に気体の水素が混合していそうな誤概念をもってしまっても仕方ありません。そこまで考える生徒がいないのが幸いですが、もし中1の生徒にその点をつっこまれたら、原子の話をはじめるか、「成分」と逃げるしかありませんね。