1273 はじめてのリスクアセスメント @school (7) いつやるか?今でしょ!

今回のテーマは、リスクアセスメントはいつやるか?実施時期の話です。

法令上の実施義務

実施時期については、まず、労働安全衛生規則(通称「安衛則」)には、次のように規定されています。

(リスクアセスメントの実施時期等)
第三十四条の二の七 リスクアセスメントは、次に掲げる時期に行うものとする。  
一 リスクアセスメント対象物を原材料等として新規に採用し、又は変更するとき。  
二 リスクアセスメント対象物を製造し、又は取り扱う業務に係る作業の方法又は手順を新規に採用し、又は変更するとき。  
三 前二号に掲げるもののほか、リスクアセスメント対象物による危険性又は有害性等について変化が生じ、又は生ずるおそれがあるとき。具体的には、以下の(ア)、(イ)が含まれること。
 (ア)過去に提供された安全データシート(以下「SDS」という。)の危険性又は有害性に係る情報が変更され、その内容が事業者に提供された場合
 (イ)濃度基準値が新たに設定された場合又は当該値が変更された場合

 一は、新規に物質を使う場合。たとえば平成29年度の告示の学習指導要領により、ダニエル電池の実験をするようになった。そうすると、リスクアセスメント対象物である硫酸銅(Ⅱ)五水和物を新たに使うことになる、なんてケースが考えられます。
 二は、塩化アンモニウムと、水酸化バリウム八水和物を使った吸熱反応の実験を例にしてみましょう。この実験は、湿ったろ紙をふたにして、ビーカーの中で両物質を混ぜて反応させます。発生したアンモニアは湿ったろ紙の水に溶けるので臭くならない、という算段なのかもしれませんが、かき混ぜるガラス棒と温度計のためにろ紙には2か所も穴を開けなくてはなりません。さらにガラス棒でかき混ぜるうちに、ろ紙の穴が広がって、そこからアンモニアが漏れ出て、臭くなるという問題点がありました。
 そこで、傘袋で温度計ごと閉じ込める、アンモニアがにおわないようにするやり方に変えた、としたら、リスクアセスメント対象物である水酸化バリウム八水和物を取り扱う業務に係る作業の方法を変更したわけですから、リスクアセスメントを実施する必要があります。
 三は、この物質は、人畜無害な顔して実はやべー奴だったことが分かったというケースですね。考えてみればあのアスベストだって、昭和時代には、理科室でも熱に強くて丈夫だから「石綿つき金網」として使われていました。その後、セラミックにとってかわられるわけですが、「理科室の金網に石綿のやつが残っていませんか」みたいな上からの通達があって調査したのを覚えています…。
 ※本題からそれますが、アスベストの普及と規制についての変遷についてはここがおすすめ

 で、やべー奴だとわかったという情報源は、あのSDSです。ちなみに濃度基準値を設定するような物質は、小・中学校では普通置いていないものばかりです。

リスクアセスメント指針による実施努力義務

 「リスクアセスメント指針」というものがありまして、正式には「化学物質等による危険性又は有害性等の調査等に関する指針という文書です。
 もともとは、平成12年3月31日 基発第212号による「化学物質等による労働者の健康障害を防止するため必要な措置に関する指針」から始まり、平成18年3月30 日 基発第0330004号による「化学物質等による危険性又は有害性等の調査等に関する指針」、平成27年9月18日付の基発0918第3号による「化学物質等による危険性又は有害性等の調査等に関する指針」を経て、令和5年4月27日 基発0427第3号「化学物質等による危険性又は有害性等の調査等に関する指針の一部を改正する指針」についてによって現在に至ります。ふぅ。

で、それによると既述した安衛則の義務の他に、次のアからウまでに掲げる場合にもリスクアセスメントを行うよう努めること、と努力義務を課しています。
 そうそう、たまに、「努力義務」というと、マストではない、単なるお題目だ、と思っている人もいるかもしれません。確かにやらないことによる罰則規定があるわけではありませんが、だからといって努力を怠っていると、「努力」すれば防げた事故が起こったりすると悔やんでも悔やみきれません。努力しましょうね。
 一般論として、努力義務に反することで、社会的な信用を失うことや、行政指導や損害賠償請求の可能性がないとはいいきれません。

ア リスクアセスメント対象物に係る労働災害が発生した場合であって、過去のリスクアセスメント等の内容に問題があることが確認された場合
イ 前回のリスクアセスメント等から一定の期間が経過し、リスクアセスメント対象物に係る機械設備等の経年による劣化、労働者の入れ替わり等に伴う労働者の安全衛生に係る知識経験の変化、新たな安全衛生に係る知見の集積等があった場合
ウ 既に製造し、又は取り扱っていた物質がリスクアセスメント対象物として新たに追加された場合など、当該リスクアセスメント対象物を製造し、又は取り扱う業務について過去にリスクアセスメント等を実施したことがない場合

 ま、なんか変わったことがあれば、もっというと、やった方がいいのか迷ったら、やっておくといいよという感じでしょうか。リスクアセスメントをやらなくて怒られることはあっても、やって怒られることはないでしょうから。

 もちろん、一度もリスクアセスメントをやってなければ、今やりましょうね。

今日のまとめ
 今使っている物質、今やっている方法、今の危険性又は有害性に関する情報に追加や変更があったときにリスクアセスメントを行おう。他にも、なんか変わったことがあって「やった方がいいのかな」と思ったらやったもん勝ち。

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