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0839 理科教師のための作問入門(18) できるだけ避けたいパターン

ついやっちゃいがちになのだけど、悪い作問のパターンを見ていきましょう。

チェーン問題

 まずは、この出題を見てほしい。

(1)酸化銀を加熱して発生する気体は何か。
(2)(1)の気体を確かめる方法として適切なものを次のア~エから一つ選びなさい。
  ア 火のついたマッチを近づける  イ 石灰水に通す
  ウ 火のついた線香を入れる    エ においをかぐ

 この問題に、Aさんは(1)二酸化炭素 (2)イ と答え、 Bさんは(1)二酸化炭素 (2)ウ と答えたとしましょう。(1)の正解は酸素ですから二人ともバツですが、酸素を確かめる方法はウですよね。そうすると、ウと答えたBさんは○、イと答えたAさんは×となります。
 しかし、Bさんは、「二酸化炭素を確かめる方法として」火のついた線香を入れる、という誤った知識をもっているのに○となってしまいます。一方、Aさんは「二酸化炭素は石灰水を入れれば確かめられる」という正しい知識をもっているにもかかわらず×となってしまいます。
 Aさんが×を食らうのはいいとしても、もののはずみでBさんが○になってしまうのはモヤるのではないでしょうか。
 かといって(1)が×なら(2)はたとえ正解の選択肢であるウを選んでも×にする、という採点の運用はややこしく、ミスを誘発しますよね。

 このような出題をチェーン問題といって、よい出題とはされません。
 (1)が正解でないと、(2)で生徒の学力(酸素の検出法が分かっているか)が測れないためです。
 他にも(2)の問題文が(1)が正解していることを前提にした問題になっているため、結果的に(1)のヒントになっているというパターンのチェーン問題もあります。
 ただしこのパターンはあえてヒントとして使うケースもあります。

ではこういうときはどうするか。

酸化銀を加熱して発生する気体と、その気体を確かめる方法の組み合わせとして、適切なものを次のア~エから一つ選びなさい。

のように両方を組み合わせで問うという方法が妥当です。

問題のための問題

 「問題のための問題」というのは循環論法っぽいですけど、そういう話ではありません。
 複数の容器のラベルが全部はがれてどれがどれだかわからなくなった、だから何とかして中身を見分けよう、みたいな話は理科ではあるあるな設定だけど、複数の容器のラベルがいっぺんにはがれることってありえないでしょ。日本の市町村のどこかとナウル共和国の面積を急に比べなければならなくなるぐらいにありえない状況ですよね。つまり、問題を解くために問題があるとされる状況を無理やり作る、それが問題のための問題です。

 ただ、出題ミスとかそういう話ではありませんし、ある状況が現実的かそうでないかは人の感覚によるグレーなところもあります。なので絶対にいけないというわけではありませんが、リアルでない設定で生徒が問題を解くというのは、理科を学ぶ意義と有用性の観点から、いかがなものかというところはあります。

あなた問題

 「あなたはどう考えますか」というのは、解答者の(価値)判断についてきいています。なので「タコは動物ですか植物ですか、あなたはどう考えますか」と聞かれたら、「私はタコは植物だと考えます」と言われてもバツにはできないことになります。知識を問う場合などはあなた問題は収拾がつかなくなります。このあたりの話は、主体的に学習に取り組む態度のところでやりましたね。
 ちなみに「思考・判断・表現」の判断は価値判断を指しているという話を聞いたことがあります。だから平成20年の指導要領までは「科学的な思考・表現」と「判断」がなかったのですが、平成29年の指導要領では第7単元で「自然環境の保全と科学技術の在り方について、科学的に考察して判断すること。」とあり、明確に判断があります。
 「考察して判断する」ということは「判断」は「考察」の中に含まれないということになります。するとここでいう判断は、たとえば、「風向が南寄りから北寄りになり、気温が下がったから寒冷前線が通過した」という科学的な条件に基づく論理的な判断ではなく、いわゆる「価値判断」なのだろうなと。

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