1607 空気に質量があることを確かめる実験
気圧、すなわち大気による圧力を学習するにあたり、前提になるのが「空気に質量があること」です。空気に質量があるから、地球上の空気の重さ(重力)というのがあり、その力を一定の面積で受けているとき、その面にかかる圧力が求められるわけです。
またくそめんどくさいことを言うと、圧力は力÷面積、すなわち「単位面積当たりの力」なので力の割合であり、力そのものではありません。ところが「圧力をかける」「圧力でつぶされた」のような日常でよく使われる(理科の時間でもつい言ってしまう)言い方は、「圧力」というものが、重力や弾性力のようなあたかも力の一種であるようなミスリードを誘っているような気がしてなりません。
圧力を表す矢印は「力の矢印」とは違いますし。力と圧力の違いを単なる定義や公式ではなく、概念的に理解することは、意外に難しい。そこまでいかなくてもとりあえず中学校理科の問題なら解けてしまいますし。
ところが、空気に質量があることを確かめるにはどうしたらよいでしょうか。これが例えば水なら、
① 空のコップの質量を測る
② コップに水を入れる
③ 水の入ったコップの質量を測る
④ ③と①の質量の差が入れた水の質量になる。
ということでよいのですが、空気の場合はすでに空のコップには空気が入っているので、この方法は使えません。ならば、紙風船を使ってみてはどうでしょうか。
① ぺちゃんこの紙風船の質量を測る
② 紙風船に空気を入れて膨らませる
③ 膨らんだ紙風船の質量を測る
④ ③と①の質量の差が入れた空気の質量になる。
このようにするとどうなるでしょうか。ちょっと考えてみてください。
(少し行をあけて、その下に実験結果を示します)
実際にやってみたのがこちら。
どちらも質量が2.36gということで変わりません。つまり空気の質量の存在が確認できないのですよ。
もちろん、逆に膨らんでいる状態から押しつぶしても変わりません。
どうしてだかわかりますか。
そもそもはかり(天秤)は、皿の上に載っている物体だけの質量を測っているのではありません。
この図を見ていただければわかるかと思いますが、お皿の上に載っている空気の質量も含めて測っているのです。では、ぺちゃんこの紙風船と膨らんだ紙風船ではどうなっているかというと
紙風船がぺしゃんこだろうと膨らんでいようと、皿の上に載っている空気の量は変わらないわけだ。当然、はかりの値も変わらない。
では、はっきりと空気に質量があることを確認できるようにするにはどうしたらよいだろうか。
はかりが測定できる部分は代えられなさそうなので、うまく空気の量だけ変えられれば良い。
具体的はこういうことだ。
空の(ふつうに空気が入った)容器の質量と、同じ容器にもともとの空気の他にさらに空気を押し込めた状態の容器の質量を測り、そこに差があれば、それが空気の質量ということになる。
容器に空気をさらに押し込めるということは、まさに気圧が高くなるわけだから、安全上、圧力に耐えられるものでないといけない。容器が破裂して破片が当たったりしたら危ないし。
耐圧の容器といえばスプレー缶がある。スプレー缶に自転車の空気入れで空気を入れて質量の変化を測って空気の質量を確かめることができるし、なんなら、スプレーから出した空気の体積を測り、スプレーから空気を出す前後の質量変化も測れば、空気の密度だって計算できてしまう。
空気の密度までは求めず、空気に質量があることだけを確かめればいいのなら、炭酸飲料用の耐圧ペットボトルを使うのも手軽でよいのではないでしょうか。
空気を入れるのはフィズキーパー(ボトルストッパーとか炭酸ぬけま栓とかいろいろな名称があります)を使います。
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新品価格 |
かつては、「商品名AG 炭酸抜けま栓 EZキャップ」というのが400~500円程度で売られていて、しゅぽしゅぽくんにも使われていたのですが、どうも生産終了になったようです。ただ、一部で2000円以上のぼったくり価格で販売しているサイトもあります。一時期は、amazonで4400円とか5980円で売っていて、相場を知らずに買った人もいて、怒りのコメントが書かれていました。
また、現在市販されているフィズキーパーの中には、ちょうどコルク栓のような使い方で、瓶の中に押し込むことで圧をちょこっと上げているだけのものもあり、炭酸は抜けないかもしれませんが、この実験には使えませんので注意しましょう。
さらに、このフィズキーパーは結構構造的には脆いものもあり、ポキッと折れたら接着剤なんか使っても、再使用が難しい(よっぽどうまく修復できればワンチャンあるかもしれませんが)ので、生徒実験などで使う人は、多めに購入しておくとよいと思います。
炭酸用ペットボトルのキャップを外し、代わりにこのフィズキーパーを取り付けます。
今回は左の赤い方を取り付けます。
その状態で質量を測ります。53.01gです。
フィズキーパーで空気を入れ込みます。今回は500mLボトルに60回プッシュしました。
もう一度質量を測ると…、
あらやだ奥さん、53.42gですって。増えてるじゃないの。つまり、その増えた質量が入れた空気の質量ということになります。
これで空気には質量があることが確かめられたわけです。
せっかくなので動画を作ってみました。
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