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0421 【火山と地震10】地震の伝わり方と地球内部の働き(3) P波とS波

2つの地震波

初期微動と主要動、時間差で2つの揺れが始まるということは、震源から速さの違う2つの揺れの原因となる波(地震波)が伝わっているということになります。

初期微動をもたらす地震波がP波(Primary wave ; 第1波)で、
主要動をもたらす地震波がS波(Secondary wave; 第2波)です。
何がどう違うのでしょうか。

P波

まずはP波

P波は、波が振動する方向と、進行方向が一致しています。このようなタイプの波を「縦波」といいます。地震波が震源から上に向かって伝わり、進行方向、つまり縦方向への揺れ、縦揺れを起こします。
ちなみに、音も縦波の一種です。

波が振動する方向と、進行方向が一致している、つまり振動しながら波自体がまっすぐ進んでいるので、速い波になりますが、周囲へのインパクトは小さい。まさに早く到着して小さく揺れる、初期微動らしい波ですよね。

S波

では、S波はどうでしょう。

波は、波が振動する方向と、進行方向が垂直になっています。このようなタイプの波を「横波」といいます。
地震波が震源から上に向かって伝わり、進行方向と垂直な、つまり横方向への揺れ、横揺れを起こします。

横波は、寄り道しながら進んでいるので、まっすぐ進むP波に比べれば遅くなって波になりますが、周囲への影響は大きい。酔っ払いがあちこちぶつかって迷惑かけながら進んでるような感じです。こちらは遅れて到着して大きく揺れる、主要動というのも想像がつくと思います。

余談ですが、近年、超音波エラストグラフィという、超音波を用いて生体組織の固さを計測する技術が実用化されています。そこでは、計測したい組織の中に横波(剪断波)を発生させ、その進む速さが速いとその組織は固く、遅いとその組織は柔らかいことが分かります。

P波とS波

P波とS波の両方をいっぺんにやってみましょう。

地震波については、以下の過去の記事でも取り扱ってます~
地震の波
地震波 ゴムひも綿棒モデル
気象科学館 2015.8

初期微動継続時間と震源距離の関係

ところで皆さん、音のところでやった、雷が光ってから音が鳴るまでの秒数で雷までの距離がわかるという話、覚えているでしょうか。

あの話で、雷の発生場所が震源、速い光をP波、遅い音をS波、とすると、雷が光ってから音が鳴るまでの秒数は初期微動継続時間ということになります。

てことは初期微動継続時間から、震源(雷)までの距離がわかるわけですよ。

実際の地震を例にで考えてみましょう。
ちょっと古いですが1978年(昭和53年)の伊豆大島近海地震の記録です。

これを、各地点ごとに初期微動と主要動の起こった時刻をグラフに表していきましょう。横軸は時刻。縦軸は震源からの距離です。
赤は初期微動、青は主要動が起こった時間グラフです。

グラフ上の横に並んだ赤と青の点の距離は、ある場所での初期微動開始と主要動開始の時間差ですから、初期微動継続時間(PS時間)と呼ばれるものです。
この二つのグラフは震源からの距離0、まさに震源でぶつかり、その時の時刻こそが、地震が発生した時刻となります。

また、グラフの傾きから初期微動を起こすP波、主要動を起こすS波の速さが求まります。だいたいP波は6~8km/s、S波は4km/s前後です。

そして、震源距離は初期微動継続時間に比例します。

数学が得意な人のために詳しく言うと、たとえば、P波の速さを8km/s、S波の速さを4km/sとすると、震源距離L(km)と初期微動継続時間T(s)の関係は L=8T となります。(なぜそうなるかは考えてみてください)

この、初期微動の継続時間から震源距離を求める公式を大森公式といいます。日本人の地震学者・大森房吉に提唱した公式です。ここでの比例定数8は大森定数といいますが、その定数は場所によって変化します。

緊急地震速報

 緊急地震速報は地震の発生直後に、各地での強い揺れの到達時刻や震度を予想し、可能な限り素早く知らせる情報です。
P波は早いけれども揺れとしては小さい、S波は揺れは大きいけど届くまでに時間がかかるのを利用して、震源の近くでP波を検知した段階で、「これから地震が来るぞ~」と危険がデンジャーなことを知らせています。震源付近だと地震速報が間に合わないこともありますが、離れたところだと、緊急地震速報からS波到着(主要動の発生)まで十秒以上の猶予ができることもあり、その間に身を守る行動をとることができます。

そういえば、課題を忘れていませんでしたか。
課題:地震の揺れはどのように伝わっていくのだろうか

これに対して結論で回収しましょう。

結論:地震の揺れは震源からP波とS波が同心円状に伝わっていく。
P波は初期微動をS波は主要動を起こす

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