シリーズ「東京都薬用植物園 2015.5」の番外編です。(2015-07-22更新)
ちょうど「ケシのパネル展」をやっていたので、そこでの解説を紹介します。
植えてはいけない「けし」にご注意
ケシは医薬品原料として重要な植物です。あへんはケシの未熟な果実、いわゆる”ケシ坊主”に傷をつけて得ることが出来ます。
あへんにはガンの疼痛緩和薬として欠くことのできないモルヒネが多量に含まれ、又、喘息薬や感冒剤等に使われるコデインを含む大切な医療薬品です。しかし、これらは使用方法を誤ると、強い依存性が現れる麻薬であるため、各国で法律により使用が厳しく制限されています。
海外で園芸用に品種改良されたケシや野生のアツミゲシもモルヒネを含むため、日本では栽培が禁止されています。
植えてはいけない「けし」と植えてもよい「けし」の見分け方を知って、安心して趣味の園芸を楽しむとともに、不正な「けし」の撲滅にご協力をお願いいたします。
あへん法により栽培などが禁止されている「けし」1
ケシ Papaver somniferum ケシ科 ケシ属
インドから小アジアにかけての西アジア原産とされる1年草で、高さ100~150㎝になります。あへんを採る目的で栽培される「けし」で、いろいろな種類があります。現在、薬用植物園で保存している代表的な品種は「一貫種」といいます。一貫種は昭和の初めに日本で作り出され、従来のものに比べてあへんの収量が多いとされる品種です。
ケシ・アツミゲシは、麻薬の原料となるモルヒネを含有しているため、「あへん法」により栽培等が禁止されています。
あへん法により栽培などが禁止されている「けし」2
ケシ(園芸種) Papaver somniferum ケシ科 ケシ属
海外で園芸品種として改良された系統で、基本的にはケシと同じ種類です。様々な品種があり、イギリスなどでは園芸植物として扱われているところもありますが、日本では規制の対象になっていますから、たとえ鑑賞の目的であっても栽培することは禁止されています。
赤一重
紫一重
紫八重
赤八重
あへん法により栽培などが禁止されている「けし」3
アツミゲシ Papaver setigerum ケシ科 ケシ属
北アフリカ原産の1年草で、愛知県の渥美半島に帰化して大繁殖していたことからアツミゲシの名があります。高さ30~80㎝で、ケシよりも小型です。繁殖力が強、く空き地などにしばしば野生しています。
「麻薬及び向精神薬取締法」により栽培等が禁止される「けし」
ハカマオニゲシ Papaver bracteatum ケシ科 ケシ属
ハカマオニゲシは全草(特に果実・根)にデパインを含有し、「麻薬及び向精神薬取締法」によって、栽培等が禁止されています。通常、国内に出回ることはほとんどありませんが、海外等で入手することも可能ですので、注意が必要です。
草丈370~100㎝になる多年草で、葉は羽状に深く切れ込み、全体に白色の剛毛があります。花は深紅色で、花びらは4~6枚。通常花の下部に苞葉(ほうよう)を5~7枚つけます。
ハカマオニゲシはオニゲシとよく似ていますが、通常は花の色(深紅色)と苞葉(ほうよう)の数(5~7枚)で見分けることができます。
ということで、前編は、植えてはいけない「けし」について紹介しましたが、後編は 法律で規制されていない「けし」 と 植えてはいけない「けし」の見分け方 について扱います。
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