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0127 高圧ガス保安講習会ノート

私は直接使わないのですが、大学の高圧ガス危害予防委員というのになっているので、高圧ガス保安講習会というのを受けてきました。そのまとめをこちらにアップします。

1,高圧ガスとは
「高圧ガス」の定義は高圧ガス保安法の第2条で定められています。

第2条
1.常用の温度において圧力(ゲージ圧力をいう。以下同じ。)が1メガパスカル以上となる圧縮ガスであつて現にその圧力が1メガパスカル以上であるもの又は温度35度において圧力が1メガパスカル以上となる圧縮ガス(圧縮アセチレンガスを除く。)
2.常用の温度において圧力が0.2メガパスカル以上となる圧縮アセチレンガスであつて現にその圧力が0.2メガパスカル以上であるもの又は温度15度において圧力が0.2メガパスカル以上となる圧縮アセチレンガス
3.常用の温度において圧力が0.2メガパスカル以上となる液化ガスであつて現にその圧力が0.2メガパスカル以上であるもの又は圧力が0.2メガパスカルとなる場合の温度が35度以下である液化ガス
4.前号に掲げるものを除くほか、温度35度において圧力零パスカルを超える液化ガスのうち、液化シアン化水素、液化ブロムメチル又はその他の液化ガスであつて、政令で定めるもの

2,高圧ガスの種類と分類
(1)容器内部の状態による分類
A 圧縮ガス  酸素、水素、窒素、アルゴン、ヘリウムなど
B 液化ガス  炭酸ガス 液化石油ガス アンモニア 塩素 亜硫酸ガス 硫化水素
C 溶解ガス  アセチレン
D 低温液化ガス 液体酸素(-183℃) 液化窒素(-196℃) 液化アルゴン(-186℃)
  液化ヘリウム(-269℃)  液化水素(-253℃)
 ※常温において液体で容器に充填されているガスを液化ガスという
  低温の液体で容器に充填されているガスを低温液化ガスという

(2)ガスの性状による分類
a 可燃性ガス  水素 アセチレン LPG 特殊高圧ガスなど
b 支燃性ガス  酸素 空気 亜酸化窒素 塩素など
c 不活性ガス  炭酸ガス 窒素 アルゴン ヘリウム
d 毒性ガス   塩素 アンモニア 特殊高圧ガス 一酸化炭素 硫化水素 など
e 腐食性ガス  アンモニア 硫化水素 塩素 塩化水素 など
3,高圧ガスによる災害
(1)高圧であるための災害
 高圧ガスはその名の通り高圧の状態で容器に充填されている。特に圧縮ガスでは14.7MPa(最近では19.6MPaもある)にもあるので、不適当な取扱をすると、容器あるいは設備・配管などの破裂事故が起こることがある。

(2)可燃性であるための災害
 高圧下に充填された可燃性ガスは、圧力のない場合に比べ、その燃焼の速さ・強さはきわめて著しく、時としてガス爆発を起こす事例が多い。
 ※破裂≠爆発

(3)支燃性であるための災害
 酸素ガス中では、有機物はもちろん無機物もはげしく燃焼する。とくに油脂等は爆発的燃焼を起こす。酸素容器に油を付着させたり、油の付いた手袋でこれらを操作してはいけない。可燃物の近くで酸素ガスを貯蔵または消費したり、あるいは容器を火に近づけたりすることは絶対に避けなければならない。

(4)毒性であるための災害
 高圧容器に充填された毒性ガスは、高濃度のものが多いので、たとえごく少量のガス漏れでも人命に関わる場合があり、慎重にしなければならない。

(5)窒息性であるための災害
 窒素炭酸ガスなどは、少量でも吸入した場合危険性があるが、短時間に高濃度のガスを多量に呼吸すると、酸素が肺に達することができなくなって窒息死するおそれがある。作業現場で大量の消費を伴う場合は、通風に十分の配慮が必要。

(6)低温であるための災害
 温度の低い液化ガスは、直接手や皮膚に触れると凍傷になるおそれがあるので、その取扱には革手袋が必要。また、誤って液配管の前後のバルブを閉めると液封現象を起こし、内部の液が膨張することによって高い圧力が発生し配管が破裂することがあるので、安全弁をもうけて加圧を防止することが必要。

4,容器の重さ
一般ガスの充填量 47L容器で14.7MPa(35℃)
ガス充填量 7000L (→7000L÷22.4=312.5mol)
ガスの重さ 酸素なら10kg (312.5mol×酸素の分子量32=約10000g)
容器の重量にガスの重さを加えると酸素ガス充填の全重量は約65kgになります。→転倒防止は確実に!

5,容器の塗色
アンモニア→白  液化塩素→黄  水素ガス→赤  液化炭酸ガス→緑  酸素ガス→黒
アセチレン→茶  その他(窒素など)→灰色
これらの色の理由(憶測)はこちらに。

6.容器の元弁を開けるときはポンピングで
ポンピングとは、ゆっくりバルブを開けることではなく、ガスを段階的に入れることです。
例 14.7MPa充填のボンベ元弁を開けるとき
①0→約3MPaまでガスを入れてバルブを『閉』にする。
②10秒待つ。
③約3→6MPaまでガスを入れてバルブを『閉』にする。
④10秒待つ。
⑤約6→9MPaまでガスを入れてバルブを『閉』にする。
⑥10秒待つ。
⑦約9→12MPaまでガスを入れてバルブを『閉』にする。
⑧10秒待つ。
⑨約12→14MPaまでガスを入れてバルブを『閉』にする。

これには理由が2つあります。
・断熱圧縮による温度の上昇を最小限に抑えるため。
 ※ガスが一瞬に加圧されると圧縮熱が生じます。断熱圧縮による温度上昇はガスによって200℃~1000℃以上に達します。そうすると、バルブのシート、パッキンなどが分解、とける、焼ける、燃えることがあります。
・はやい流速による摩擦熱や静電気で発火する可能性があるため。

7.事故事例
N県A消防署救急車 … 圧力調整器の破裂事故
2010年6月7日焼津港の廃船の甲板で酸素ボンベが破裂…容器は海水に弱い実例
2010年9月17日 自治医大研究室で窒素ガスボンベ破裂
1992年9月18日 アセチレンガス爆発事故…死者1名
このほか、意外に多くの大学でも事故があるらしいです。

1.酸素欠乏症とは
空気中の酸素濃度が低下することを酸素欠乏といいます。酸素が不足すると酸素欠乏症にかかります。
人間が耐えられる酸素濃度の限界はおよそ18%といわれており、酸素欠乏症にかかるとめまいや意識喪失、さらには死に至る場合があります。酸素不足は特に脳への障害が大きく、命が助かっても言語障害や運動能力障害などの後遺症が出るケースも数多いです。

2.酸素濃度による影響
60%以上12時間以上吸入すると肺の充血
保育器の中で未熟児の網膜剥離・失明、死亡
(悪質な活性酸素が増加)
40%以上異常燃焼(木綿の織物は空気中の3倍の燃焼速度
2倍の燃焼温度)
25%以上酸素富化状態
22%以下火気取扱い作業上限
20.9%空気の組成
18%以上作業環境基準値(酸素欠乏症等防止規則)
16%正常人の適応限界
16%以下脈拍・呼吸数の増加、頭痛、吐き気
13%相当富士山山頂(3776m)酸素分圧換算
10%以下失神、けいれん
7%相当エベレスト山山頂(8848m)酸素分圧換算
6%以下数呼吸で失神、昏睡、呼吸停止、心臓停止
0%1回の呼吸で死(2秒以内に脳の活動低下、停止)

3.酸素欠乏危険箇所
1.雨水やわき水などが滞留し、または滞留したことのあるマンホール、ピットなどの内部。
2.ガス管などの地下に埋設するものを収容するためのマンホール、ピットなどの内部。
3.相当期間密閉されていた鋼製のタンク、船底など内壁が酸化されやすい施設の内部。
4.空気中の酸素を吸収する物質を入れてあるタンクなどの貯蔵施設の内部。
5.屎尿、腐泥等の腐敗・分解しやすい物質を入れ、または入れたことのある槽、マンホール、ピットなどの内部
6.アルゴン、窒素などの不活性の気体を入れてあり、または入れたことのあるタンク等の内部。

北海道大学の液体窒素での事故事例、NTT厚木研究所の研究室内で、液体窒素ガスの取り出し中の事故事例があります。


このエントリーにあたっていろいろ調べていたら、詳しい資料が。
北海道大学理学研究院極低温液化センター
これを見れば、3回にわたる「高圧ガス保安講習会ノート」の記事を見る必要がなくなりますorz

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