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1291 ハンス・セリエは注射が苦手?

 「ハンス・セリエ」を知っていますか。言わずと知れた「ストレス学説」の人です。
R・M・サポルスキー「なぜシマウマは胃潰瘍にならないか―ストレスと上手につきあう方法」では、セリエの意外なエピソードが紹介されています。彼は実験用のラットの扱いが少し下手だった。しかも、そのおかげでストレス生理学が今日あるというのです。
 ちなみにこの本、1998刊の本なのにamazonに限らずどこの古本屋でも高いヤフオクですら6000円で買っている人がいる…一部界隈では有名なのか?!

なぜシマウマは胃潰瘍にならないか―ストレスと上手につきあう方法

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 彼はある卵巣からの抽出物のはたらきを調べるようと、ラットに注射するのですが、いかんせん注射がヘタだった。そのため、ラットを床に落とすわ、追いかけるわ続けているうちに、ラットの消化器官に潰瘍ができていたのです。つまり、セリエの注射技術がヘタだったからラットがストレスで潰瘍になったというわけです。それは抽出物を注射したラットだけではなく、対照群として塩水を入れたラットに対しても起こったわけですから、もはや抽出物の影響ではありません。抽出物のはたらきを調べるという当初の実験目的から言えば失敗だったのですが、ラットの身体における異常な変化が、一般的な不快感に対する身体の非特異的反応によるものではないかと考えつくきっかけとなりました。そしてそれを実証すべくラットをボイラー室や屋根裏の熱いところ寒いところに置いたり、強制的に運動させたり、外科手術したりしてみましたが、どんなイヤなことをしても潰瘍などの特定の現象が観察され、いろいろなストレッサー(ストレスの原因になるもの)に対して、消化器官の潰瘍などきわめて類似した反応を示すことが明らかになったのです。
R・M・サポルスキー「なぜシマウマは胃潰瘍にならないか―ストレスと上手につきあう方法」

 ただ、このセリエが注射が苦手だったという話については、セリエ自身の著書「愛のストレス」「生命とストレス―超分子生物学のための事例」はもちろんのこと、ネットを探しても、図書館を探しても、あげくに東京都立図書館のリファレンスサービスを利用しても、この本以外にウラがとれませんでした。

 事実なら注射が下手だったから大発見につながったという、科学史の話としてとてもおもしろいエピソードなのですが、実際はどうだったのでしょうか。

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