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0067 「最小目盛りの10分の1」の謎・出題編

※本記事は旧ブログ2016年3月17日公開の記事をリライトしたものです。古い情報である点ををお含みおきください。

 理科教育界の一部で白熱した議論がくりひろげられております「最小目盛りの10分の1」の謎の続報です。

 3月10日に行われた愛知県立高校(Aグループ)の入試問題に、電流計の目盛りを読ませる出題があったという情報をいただきました。
 理科4(1)で、-端子を5Aにつなげてある電流計で、電流の大きさを読ませる問題がありました。

 「最小目盛りの10分の1」ルールにのっとれば、1.20Aが正解であることは疑う余地もありません。

 では、正解を見てみましょう。中日新聞・佐鳴予備校・河合塾と解答速報を発表していました。
理科 4(1)のところを見てください。答えは…1.2A??

 ナ ナンダッテー!!
 Ω ΩΩ

 小学校では近い方の目盛りを読ませていること、そして、一つ前の記事にあるように、例の10分の1は権威によるルールではないので、1.2Aは間違いとは言い切れないのでしょうか。

 でも、現行の中学校理科の教科書(24年本)・全5社のものを調べてみると、すべての教科書で、メスシリンダーと温度計については10分の1まで読むことの記述があります。
 電流計については、大日本図書、学校図書、教育出版の3社が「10分の1」ルールの記述はないものの、目盛りの読み方の具体例を挙げ、そこで最小目盛りの10分の1まで読んでいます。
 それでは…と、今年(2016年)の4月から使われる28年本を調べてみると、啓林館、大日本図書の2社が電流計にも「10分の1」の記述がされています。学校図書、教育出版は24年本同様、最小目盛りの10分の1まで読んだ例を示しています。東京書籍は電流計のところでは記述がありませんが、巻末で科学で扱う量のはかり方として丁寧な記述があります。

 なお、平成24年度の全国学力・学習状況調査【中学校理科】でも、次のような電流計の目盛りを読ませる問題が出題されています。

 こちらは、218mAと読ませていますが、読み取り誤差を考慮して、217,219mAでも正解としています。
 ただし220mA、テメーはダメだ。

 なんなんでしょう、この違いは。

 これはひとえに、問題の目的の違いかと。
 入試問題の目的は、答案を点数化して生徒の合否を分けることです。「1.2A」という解答が10分の1まで読んだ本当の正解1.20Aと、白紙無解答やワケの分からない解答のどちらに近いか(どちらと同じ扱いにしたいか)と言えば、そりゃ1.20Aの方が近い、と考える人の方が多いでしょう。
 逆に、最後の一桁、0をつけ忘れただけでほぼ電流計の目盛りが読める生徒を、電流計何それ?勉強やる気ありましぇーん!という生徒と同じく0点扱いにするのは、そこまで致命的なことなのかとちょっと疑問を感じませんか。
 ならば、完全に正しくないにせよ、正解に近い答えを「正解扱い」とする措置は、それなりに理解できることではないでしょうか。
※「部分点を与える」という選択肢もありますが、ここでは考えないものとします。
※ただし、本来なら 正解は1.20A、ただし1.2Aも可 ということなのでしょうが…。
※大本営発表が1.2Aとするなか、わざわざ解答を作成した河合塾あたりが答えを「1.20A」として採点基準のあり方に一石を投じてくれたら、心から称賛したんだけどな。1.2Aと答えた受験生は混乱すると思うけど。

 一方、この点を忘れている教育関係者があまりにも多いですが、全国学力調査の目的は入試のように生徒同士で点数を競うことではありません。学校間や自治体間で点数を競うことでもありません。
調査の目的はパンフレットに

◇義務教育の機会均等とその水準の維持向上の観点から,全国的な児童生徒の学力や学習状況を把握・分析し,教育施策の成果と課題を検証し,その改善を図る
◇学校における児童生徒への教育指導の充実や学習状況の改善等に役立てる
◇そのような取組を通じて,教育に関する継続的な検証改善サイクルを確立する

と書いてあります。
 簡単に言えば、子どもの学力の状況をつかんで、授業をはじめとした教育活動を改善していこう、ということです。

 だから学力調査は、生徒の解答を最大10個の解答類型で分類しているわけです。電流計の問題だと、「10分の1までキチンと読んでいる(解答累計1)」「10分の1まで読んでいないが目盛りは読めている(解答類型2)」「ケタの間違い(-端子の間違い)(解答類型3・4)」「ワケわかんない解答(解答類型9)」「無解答(解答類型0)」と分類して、そのうち解答累計1を正解としているわけです。
「10分の1まで読まなくていい」という解答類型2は、指導としては適切と言えませんから、不正解として扱っていいわけです。
※解答類型は平成24年度 全国学力・学習状況調査【 中学校 】報告書368ページ参照。

 もし、全国学力調査を目的外使用して競争に使ったりすると、無理に自分のところの生徒の得点を上げようとして「220mAも正解にしてよ~」とかごねる教育関係者もいそうですね。中間・期末テストで記述問題にピントのずれた解答をしておきながら、「ほら模範解答と僕の解答似たようなもんじゃない、マルにしてよ」と食い下がる生徒を彷彿させます。。。似てないっつーの!

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