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0907 精製水

水 H2O Mw=18.02 CAS No.7732-18-5

そういえばまだこのブログで取り上げていませんでした、精製水。

SDSを見てみよう

なんてったって、ただの水ですから、危険有害性といっても特にない。そこでSDSをどうするかに試薬会社各社の個性が出てきます。

ほほう、と思ったのがタイキ薬品工業株式会社の純水のSDS。人の健康に対する有害性で経口の場合について、こう書いています。

無機塩類などの不純物をほとんど含有していないので、飲み込むと下痢、むかつき、胃痛、腹痛、嘔吐の障害が現れることがある。
人間の腎臓が持つ最大の利尿速度は毎分 16ml であるため、これを超える速度で水分を摂取すると体内の水分過剰で細胞が膨化し、低ナトリウム血症を引き起こす水中毒に陥る可能性がある。

 今回初めて見た会社ですが、溶液中心の商品ラインナップなので、今までの情報収集ではひっかからなかったのかな。とはいえ、どこの試薬会社とは言いませんが、いざというときの責任のがれのためか、コピペで手抜きしたのかわかりませんが、今回の水の場合でもSDSに「皮膚に付着した場合 すぐに石鹸と大量の水で洗浄すること 。 症状が続く場合には、 医師に連絡すること 。」とか「環境に対する注意事項 漏出した製品が河川等に排出され、環境への影響を起こさないように注意する。汚染された排水が適切に処理されずに環境へ排出しないように注意する。」とか「設備対策 屋内作業場での使用の場合は発生源の密閉化、または局所排気装置を設置する。 取扱い場所の近くに安全シャワー、手洗い・洗眼設備を設け、その位置を明瞭に表示する」とか「残余廃棄物 廃棄は地域、国、現地の適切な法律、規制に則る必要がある。」など、cannot help ツッコミing、ツッコまずにはいられない一品に仕上がっているところがある中で、「危険性はほとんど無い。」「有害性は極めて低い。」「【廃棄】下水放流。」と常識的なことが書いてあり、さらに「pH 約5~8 大気下で純水は、空気中の二酸化炭素を吸収しやすくpH が低下しやすい。」のような丁寧な解説に好感をもちました。こういうところ、意外に知らない人は多く、純粋のpHは7.0と思い込んでたりする人もいるんですよね。

蒸留水じゃなくて?

 私が子供の頃はきれいな水のことを「蒸留水」といっていましたが、蒸留水は精製水の一種です。精製法として蒸留したら蒸留水なわけですね。そういえば、大学の卒研ではコロイド・界面化学の研究室にいたのですが、そこでは「交換水」と呼んでいましたね。イオン交換で水をきれいにしてたからですね。ちなみにそこで使ってた交換水を作る装置は日本ミリポア社(その後メルクに吸収されてしまいました)のものだったのだけど、壊れて他の研究室から水を分けてもらい「ミリポアに 金だけ取られて もらい水」という一句が研究室に貼られていました…。

 で、一般的な精製水の他に、日本薬局方で規定される「精製水」もあります。さらにその「精製水」を滅菌したり、発熱性物質(エンドトキシン)試験をクリアしたものは滅菌精製水とか注射用水とか、グレードアップします。

水道水との違い

 当然ながら精製水は水道水より高いわけですが、なぜ水道水ではいかんのか。硝酸銀水溶液の実験でもあったように、水道水ではわずかに含まれている塩化物イオンに反応してしまいます。むしろ水道水に一定の塩素が含まれてない方が消毒の観点からどうなの、ってことになりますし。
 そのような不純物はわずかですが電気を通してしまいます。そうすると水溶液の導電性を調べる実験では使えません。逆に、伝導度がどれだけかによって、その水がどれだけ純粋な水かという、純粋の品質が分かってしまいます。

 あとちょっと怖い話として、コンタクトレンズを洗うのに水道水を使ってはいけない理由として、①水道水に含まれる鉄・カルシウムイオンなどでコンタクトレンズが汚れてしまう②塩素による眼障害を発症する③精製水でなく、水道水のように何かが溶けている水だと、浸透圧でレンズ内部から水分が抜け出し、レンズが変形してしまう…この辺りはそれほど怖くないのですが、④水道水に含まれるアカントアメーバによって普通の抗生物質が効かない、治療が困難な感染性角膜炎となり、最悪失明の可能性も…!
 アカントアメーバ角膜炎でググるとたくさんの眼科のサイトがヒットします。どこでもいいので説明を読んでみてください…。軽く震えますから…。

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