0933【水溶液とイオン11】酸・アルカリ(2) リトマス紙を使った電気泳動
前の実験で、酸性の水溶液も、アルカリ性の水溶液も電流を通すということがわかっています。
ということは水溶液中にイオンがあるということがわかります。それなら酸性、アルカリ性という水溶液の性質を示すイオンというのがあるのではないでしょうか。ということで課題です。
課題 酸性、アルカリ性の性質を示すイオンはあるのだろうか。
[構想]
1) リトマス紙の色を変えるものが酸性、アルカリ性だ。
2) 水溶液中に電離している陽イオンと陰イオンのどちらが酸性、アルカリ性の性質を示すイオンかを調べるには、陽イオンと陰イオンをわけ、それぞれがリトマス紙の色を変えるか調べればよい。
3) 陽イオンと陰イオンをわけるには、電圧をかければよい。調べる酸性やアルカリ性の水溶液を一点に置き、電圧をかければ、陽イオンは-極に、陰イオンは+極に惹かれるはずだ。
4) 調べる水溶液以外の部分にも電流が流れるようにするために、調べる酸性やアルカリ性の水溶液のバックには硝酸カリウム水溶液を湿らせたろ紙を使う。
※硝酸カリウム水溶液は中性である。また、電流を流しても硝酸カリウム自体は分解せず、水の電気分解が起こる。同じ特徴をもつ硫酸ナトリウムを代わりに使ってもよい。
5) 水溶液の-極側でリトマス紙の色が変化すれば陽イオンが、+極側でリトマス紙の色が変化すれば陰イオンが、両側でリトマス紙の色が変化すれば両方のイオンが酸性、アルカリ性の性質を示すイオンということになる。
ということで、こんな装置を使います。
まず塩酸でやってみましょう。上側が+極、下側が-極です。
ものの見事に-極側が赤くなってしまいました。
ということは酸性の性質を示すイオンは-極側に引かれるので、+の電気を帯びているはず。つまり陽イオン。
塩酸の電離式は HCl → H+ + Cl–
陽イオンは 水素イオンH+。これが酸性の性質を示すイオンです。
他の酸性の水溶液を見ても
硫酸 H2SO4 → 2H+ + SO42-
硝酸 HNO3 → H+ + NO3–
炭酸 H2CO3 → 2H+ + CO32-
酢酸 CH3COOH → H+ + CH3COO–
と、いずれも陽イオンが水素イオンH+になっています。
ちなみに、水溶液にしたとき、電離して水素イオンH+を生じる化合物を酸といいます。
では、アルカリ性ではどうでしょうか。水酸化ナトリウム水溶液でやってみましょう。
塩酸の時ほど進み具合がよくないですが、でも青く変色した部分が+極側の方に移動しているのがわかります。
ということはアルカリ性の性質を示すイオンは+極側に引かれるので、-の電気を帯びているはず。つまり陰イオン。
水酸化ナトリウム水溶液の電離式は NaOH → Na+ + OH–
陰イオンは 水酸化物イオン OH–。これがアルカリ性の性質を示すイオンです。
他のアルカリ性の水溶液を見ても
水酸化カリウム水溶液 KOH → K+ + OH–
石灰水(水酸化カルシウム水溶液) Ca(OH)2 → Ca2+ + 2OH–
水酸化バリウム水溶液 Ba(OH)2 → Ba2+ + 2OH–
アンモニア水(水酸化アンモニウム水溶液) NH4OH → NH4+ + OH–
と、いずれも陰イオンが水酸化物イオン OH–になっています。
ちなみに、水溶液にしたとき、電離して水酸化物イオン OH–を生じる化合物をアルカリといいます。
[結論]
酸性の性質を示すイオンは 水素イオン H+
アルカリ性の性質を示すイオンは水酸化物イオン OH–
水の電気分解
ところで、特にアルカリ性の方で顕著でしたが、塩酸や水酸化ナトリウムを湿らせたタコ糸を置いた部分ではなく、リトマス紙のはじっこからリトマス紙の色の変化が起こっています。これはどういうことでしょうか。
実は電流を流すために硝酸カリウム水溶液を入れたことで、水の電気分解が起こっています。その時電極では
陽極 2H2O → O2 + 4H+ + 4e–
陰極 2H2O + 2e– →H2 + 2OH–
と陽極側で水素イオン H+、陰極側で水酸化物イオン OH–が発生しています。
これを確かめるため、H字管にBTB液を加えた硝酸カリウム水溶液をいれて、水の電気分解をしてみたところ…
やはり陽極側が黄色く、陰極側が青くなりました。
また、動画からはすぐに陰極が青くなって、しばらくしてから陽極が黄色くなりました。
これは、リトマス紙の実験で、15-16分程度では青リトマス紙の+極側は赤くならなかったのに対し、赤リトマス紙の-極側は青色に変化した部分がだいぶ広がっていることに対応しています。
が、酸性側とアルカリ性側でどうしてここまでの時間差というかアンバランスがあるのかが正直よくわかりません。
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません