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1007 【生物の成長と殖え方07】生物の殖え方(4) 無性生殖と有性生殖

染色体で考える無性生殖と有性生殖

 桜で有名なのがソメイヨシノ。何本も植えられているソメイヨシノがパッと咲いてパッと散ります。これは接ぎ木や挿し木などの無性生殖でふえていった全てのソメイヨシノが全く同じ形や性質、あわせて形質を持っているためです。みんなが同じ環境条件で咲いて、同じ環境条件で散るので、一斉に咲いて一斉に散るのです。
 そのソメイヨシノは、エドヒガンとオオシマザクラを両親とした有性生殖でできた品種ですが、だからといってもう一度エドヒガンとオオシマザクラを交配させてできた子は、ソメイヨシノと同じ形質になるとは限りません。どういうことでしょうか。
 無性生殖と有性生殖の違いは受精の有無ということですが。別の見方をすると、親が1個体か2個体かという違いでもあります。自家受粉はとりあえず置いといて。

課題:無性生殖と有性生殖では、どのように形質が受け継がれていくのだろうか

 体細胞分裂のところで出てきた細胞の核にある染色体に注目して考えてみよう

無性生殖の場合

 無性生殖は体細胞分裂によって子を作っています。このときの染色体についてみていきましょう。一つの細胞を○、その中にある染色体を、とりあえず一対(2本)で表したのが次の図です。

そうすると、無性生殖である体細胞分裂は次のように表すことができます。染色体が2つの細胞に分かれる前に、染色体をコピーしてすべての種類の染色体を2本ずつにしておきます。そして細胞が2つに分かれるときにそれぞれの細胞にすべての種類の染色体を1本ずつ律儀に分けて、もともとの細胞にあった染色体と同じ染色体構成にするのです。

ただ、対になっている2本の染色体は、まったく同じものとは限りません。そこで、親の細胞の染色体をA,Bと記号を付けてみると、こうなります。

 したがって、親と同じABという染色体が子に伝わるわけですが、染色体が全く同じということは、親も子たちもみんな形質が同じということになります。
 もっとも、子の形質をどうしようかと考えたとき、親が1個だけなのだからはそれを真似するしかないですよね。

 無性生殖の親子のように、遺伝的に同一である個体や細胞(の集合)をクローンと呼んでいます。

有性生殖の場合

 有性生殖では2つの親がそれぞれ減数分裂をして生殖細胞をつくり、その2つの生殖細胞が受精することでを子をつくります。

それぞれの親は1対あった染色体が、生殖細胞には対の染色体のどちらか一方しかもらえず、染色体の数は半分に減数します。これが減数分裂の減数分裂たる所以です。しかし、受精と称して2個の生殖細胞が合体するので、染色体の数は2倍に増え、結局子の染色体の数は親と同じになります。

子の形質はどうなるのでしょうか。
親は2個体ありますが、一方の親の一対の染色体をAB、もう一方の親の染色体をCDとします。そうすると、ABの染色体からは減数分裂で生殖細胞にAかBかどちらかしか入らず、CDの染色体からは減数分裂で生殖細胞にはCかDのどちらかしか入りません。そして2つの生殖細胞が合体してできる子の染色体はAC,BC,AD,BDの4パターンあります。染色体の数はキイロショウジョウバエでは4対、つまり8本(よく2n=8と書きます)あるので、両親から受け継ぐ4対の染色体の組み合わせは44=256通りあるといえます。他の生物ではたとえばタマネギで2n=16本,ヒトで2n=46本、スギナで2n=216本ありますから、両親から受け継ぐ108対の染色体の組み合わせは4108で、1.05×1065ということになります。意味わかんない。
 つまりそれだけの種類の形質の可能性があるわけですから、多様性のるつぼ!ってことになるわけですね。

 無性生殖と有性生殖の比較

 この両者の違いが分かったところで、いくつかの観点で比較してみましょう。

生殖のしやすさ

 これは無性生殖の圧倒的勝利!
 なんてったって、有性生殖は相手を見つけなくちゃいけない。これはつらい。なぜか実感がこもっている。ほっといてくれ!減数分裂して生殖細胞作るのも手間だし。
 一方、無性生殖は、ひとりでできるもん!

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多様性と環境の変化への適応力

 これは逆に有性生殖が有利なのです。
 繰り返しますが無性生殖は親が1個体なので、子もそのコピーになるしかない。ということはどれだけ子がいても、全部姿かたちや特徴が同じで、多様性の真逆をいきます。
 一方、有性生殖はそれぞれの親からの影響をどのように受けるか生殖細胞からどのような遺伝子を受け継ぐか、そのパターンが無数にある故、同じ両親からの子でも十人十色、多様性の極致なのです。

 ここで、例えば極端に寒くなるような環境の変化が起こったとしましょう。無性生殖でできたこの場合、すべて同じ性質なので、もしその性質が「寒さに弱い」とすると、たくさん子がいても全滅してしまいます。
 これに対し、有性生殖の子はたくさんいればいろんなやつがいます。そこには「寒さに弱い」やつもいれば「寒さに強い」やつもいるでしょう。そうすれば、寒さに強いやつが生き残ります。これがもし極端に暑くなる環境の変化だったとしても、「暑さに強い」やつがいれば生き残ります。いろいろ考えられる環境の変化にどれかが生き残れる、これが有性生殖の強さでなのです。

余談:バナナが危ない!

 私たちが普段食べているバナナは種がありませんよね。ということはお察しいただけると思いますが、無性生殖です。茎の根の脇から出てくる新芽を植えて殖えていくのです。
 で、かつてはバナナといえばグロスミッシェルという種類のバナナでした。香り高く、さっぱりした甘みが特徴で、ちょっと小さめ。皮が薄くて完熟すると皮ごと食べられるんだそうです。
 ところがこのグロスミッチェル、1950年代に世界で流行した「パナマ病」に弱い形質だったため、世界中のグロスミッチェルが一気にほぼ絶滅してしまいました。
 ちなみにその後「タイで食ってるバナナが実はグロスミッチェルだった」「なぜかたまたま種子島にグロスミッチェルが残ってた」なんてことがあったみたいで、現在も少数ですが流通しています。

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感想(1件)

 そこでパナマ病に強い「キャベンディッシュ」という種類のバナナが現在の主流です。ただ、キャベンディッシュも無性生殖なのです。そうすると別の病気にやられてしまう可能性があります。そして、「新パナマ病」が登場し、キャベンディッシュにも危機が迫りつつあります…。

無性生殖も有性生殖もできる生物

 もちろんヒトは有性生殖しかできませんが、無性生殖と有性生殖の両方ができる生物は、意外に多くあります。例えばジャガイモは花が咲いて有性生殖をすることもできれば、種芋を育てて無性生殖で増やすこともできます。農作物の品種改良は、有性生殖でいろいろな形質のものを作り、いい形質のもの(いい品種)ができたら、それを無性生殖でコピーするという方法で、おいしい品種や病気に強い品種などを作っています。

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