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0138 【質問】ワインを蒸留すると白っぽい液体になるのはなぜ?

  「身の回りの物質」で行う、赤ワインの蒸留の実験についてのご質問をいただきました。

赤ワインの蒸留実験で、試験管に集めたエタノールが白濁しているのですが、これはなにが原因でしょうか。

 赤ワインを蒸留すると、集めたエタノールが白濁している?
 そうでしたっけ?フフフ。なんてごまかさずに調べてみましょう。
 まずは赤ワインを蒸留します!

しまった!火が強すぎて枝付きフラスコの中がブクブク沸騰!
試験管にたまったエタノールは…あれ?白くない!

そのあと慌てて火を弱めゆっくり蒸留すると…今度は白いのが出てきました。質問にあったとおりです。

ただ、1本目は全く白くなかったのが気になります。

ただぶっちゃけ失敗だったので、2本目はしっかり弱火でやったところ最初から白くなりました。

 さて、どうして白くなったのでしょうか。

 第1の仮説。エタノールと水以外の物質ではないか。
 ワインの場合、エタノールと水以外にも物質が含まれています。特に香りの成分などは沸点も低いものが多く含まれるようです。
 さらに、ワインには有毒な火山ガスの成分、二酸化硫黄(亜硫酸ガス)も含まれていますし、それどころか酸化防止剤としてわざわざ二酸化硫黄を添加することもあります。飲み物にそんなもの入れて大丈夫か心配になりそうですよね。
 そんなわけで水とエタノール以外の沸点の低い物質が出てきている可能性が第一に考えられます。

 第2の仮説、溶け込んだ空気によるものではないか。
 水道水の白濁と同じく中に溶け込んでいた空気が、細かな気泡となって出てきたため、白く濁ったということも考えられます。この場合はほおっておくと無色透明に戻ります。
 が、白く濁った液体はほおっておいてもそのままなのでこの仮説は消えます。

 では、第1の仮説を検証してみましょう。
 もし、水でもエタノールでもない物質で白くなるのだったら、水とエタノールの混合物を蒸留した場合、白くならないはずです。
 水とエタノールの混合物を蒸留してみましょう。

 すると、見事に無色。2回目にやった赤ワインと比較してみましょう。

 では、赤ワインを蒸留して得られるこの物質は何なのでしょうか。エタノールから単離することは難しそうです。

 ただ、1回目の実験で沸騰させたときは白くならず、途中から火力を弱めたら白くなりました。温度が高いと水から逃げて行ってしまうのでしょうか。

 それなら白く濁った液を加熱すると無色になりそうですが、そこはエタノール、危なくて火にかけるわけにもいきませんし、湯せんでもエタノール自体が沸騰してしまいます。手詰まりになってしまいました。ということで今回の探究はここまでです。

ワインを蒸留して集めたエタノールの白濁は、ワインのアルコール以外の成分の原因です。
ただしどの成分が何かまではわかりません。

 余談ですが、この実験に関しては、蒸留する液体を何をするかで2つの派閥があります。 1つは赤ワイン派、2つはエタノールと水の混合物派です。
 赤ワインのメリットは
 ・生徒にとって身近である(飲酒ができない中学生にとって本当に身近なのか?という反論あり)
 ・赤い液体から無色の液体が取り出され、明らかに別の物質だとわかる点
 ・純粋なエタノールを水とわざわざ混合させてから蒸留してエタノールを取り出すナンセンスさ  (それを言ったら、ろ過や再結晶など理科室でやる分離の実験は基本ナンセンスですね)

 エタノールと水の混合物のメリット、というか赤ワインのデメリットは
 ・生徒指導上問題がある(荒れてる学校だと生徒が飲みかねない)
 という点に尽きます。

 つまり理科教育の立場だけからみれば明らかに赤ワインが教材にふさわしいのですが、いざ生徒が実験に使うワインを飲んだ場合、生徒への指導ももちろんありますが、「なんでワインがあるんだ(なんで教材にワインを使うんだ)」と、理科教師が誰か(基本的に理科教育に詳しくない人)からチクりかグサリかわかりませんが、刺されてしまうことも十分考えられます。そのリスク回避には「エタノールと水の混合物」というつまらない組み合わせがむしろ有効といえます。「持続可能な教員生活」のための一つの知恵ですね。 ただ、今回の赤ワインだと白く濁るというのは、エタノールと水の混合物派に有利な話といえます。

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