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0158 【エネルギーと物質03】エネルギーとエネルギー資源(3) 熱の伝わり方

 エネルギーの変換効率が100%にならないのは、どうしても目的のエネルギーのほかに、熱エネルギーも勝手に発生してしまうからです。

 もちろん、熱エネルギーを別のエネルギーに変換するのも、100%というわけにはいきません。特に熱エネルギーから仕事や使いたいエネルギーへの変換効率、すなわち熱効率は、技術の日産が本気でがんばってやっと50%に到達した、というところです。つまり最先端の技術をもってしても、約半分の熱エネルギーが無駄になるのです。

 つまり、他のエネルギーから熱エネルギーは簡単にというか勝手に変換されるものの、熱エネルギーから他のエネルギーにはなりにくいという、なんつーか、あまりうれしくない性質たちのエネルギーです。それは、熱が温度の高い方から低い方へ勝手に伝わって、拡散して逃げていくからですね。
 2年生の時にやった電熱線に電圧を加えて水を温める実験でも、電気エネルギーが熱エネルギーになったものの、その熱エネルギーは水を温めるものもありますが、カップや空気中など外へ逃げていく熱エネルギーもあるので、電熱線が消費した電気エネルギーより、水を温めた熱エネルギーの方が小さいのでしたね。

 熱の伝わり方は3つのパターンがあります。一つずつ見ていきましょう。

伝導
 木のさじでは冷たくて硬くなったアイスクリームをすくいとることは難しいです。でも同じことを銀のスプーンでやると簡単に掬い取れてしまいます。銀は熱を通しやすいので、体温がスプーン全体に伝わって、アイスクリームをとかし、掬い取ることができるのです。
 このような熱の伝わり方を伝導(熱伝導)といい、固体で顕著に起こります。
 物質の伝導による熱の伝わりやすさを熱伝導率といいますが、次の資料のように、熱伝導率の値は、固体に比べて液体は小さく、気体ではさらに小さくなります。
 参考 熱伝導率(W/m・K) ※資料によって多少の幅があります。
銀 419 > 鉄 52 > ガラス0.97 > 水0.6 > 空気0.022
 気体では熱伝導がほとんど起こらないといったほうがいいでしょう。寒い冬の日に裸足で木の床を歩くと大変冷たいですが、ウールの靴下をはいて歩けば冷たく感じません。これは、床と足の間に熱伝導率の低い空気を多く含んだウールの靴下をはさむことで、足から床への熱伝導がほとんどおこらなくなったためです。
 もう少し熱の伝導という現象を原子レベルで見てみましょう。
 そもそも熱とは、原子(分子の場合もあります、以下同じ)の運動の激しさ(運動エネルギー)ということができます。そして固体の場合は、原子はお隣の原子との結束が強く、規則的な配列で並んでおり、液体や気体のように周囲の原子の並び方を気にせず動き回る、ということはできません。
 ちょうど何人かが「はないちもんめ」をやるときのように一列に並んでおててをつないでいる時を想像してみてください。その中の一人が手をつないだまま大きく動きまわろうとすると、その人の隣の人も引っ張られたりして振り回されます。さらにその隣の人も…とだんだん影響が伝番していく。
 手をつないでいる人、一人一人を原子と考え、動きが大きいと熱が大きいと考えると、最初の大きく動き回っている人が高温の原子ということになります。そして動き回るエネルギーが隣の原子、さらに隣の原子…と伝わっていく、これが伝導というわけです。
 これが液体や気体だと隣の人と手をつないでないので、お隣さんに動き回るエネルギーが伝わりにくいというわけです。
 そう考えてみると、伝導は固体で顕著だ、ということが分かってもらえると思います。
 

対流
 水の入ったビーカーの底の端っこの方を加熱すると、加熱したあたりでは水は上に移動しますが、そこから離れたところで水は下に移動します。おがくずとかお茶の葉とかを入れるとわかりやすいですね。暖かい空気や水は膨張して密度が小さいので上に行きたい、冷たい空気や水は密度が大きいので下に行きたい。ところが暖かい部分が下で冷たい部分が上にあるとどうなるか。そう、場所をチェンジしようと移動するわけです。この空気や水がその塊の中で移動し、その結果の熱の移動を対流といいます。これは液体と気体に限られ、規則正しく原子が並んでいる固体ではできない芸当です。 
 ちなみに、地上から10km程度の高さまでの大気の層を対流圏といいます。 雲や雨などの気象現象は対流圏で起こります。地表付近が温かく、上に行くほど冷たくなるため、上昇気流やら下降気流やら思いっきり対流していますね。対流圏の上は成層圏というのですが、こちらは上に行くほど暖かくなり、対流は生じにくいので、雲なんかできず気象現象が起こらないわけです。

放射
 太陽の熱が地球に届きますが、太陽と地球の間には固体はないため伝導もできず、液体や気体もないため、対流で熱を伝えることもできません。では、太陽の熱はどうして地球に届いているのでしょうか。
 物体は温度に応じて波長の違う(エネルギーの量の違う)電磁波を出しています、それを別の物体が吸収すると、その物体はエネルギーを得て温度が上がります。このように熱を出す側から受ける側に電磁波というかたちで熱を伝える方法を放射といいます。
 ところで、電磁波って何でしょうか。「電場と磁場が相互に作用しながら空間を伝播する波」といっても???でっしょう。放射線(γ線、X線)や光や電波などがありますが、とりあえず原子とか電子とかの「粒子」ではない、と言うところがミソ。「もの」ではないんですよ。
 なので、「放射」は物(固体・液体・気体)を介さなくても熱を伝えることができるのが伝導や対流との決定的な違いです。
 熱源から輻射される熱量は、絶対温度(ケルビン)の4乗に比例します、ってのは、思いっきりどうでもいいことですね。

 ちなみに、温度が高い物体は波長が短く(エネルギーが大きく)なります。太陽から地球に伝わる電磁波は波長の短い紫外線や可視光、赤外線の中でも比較的波長が短い物なのに対して、地球から放出されるのは波長の長い赤外線です。
 で、温室効果ガスは太陽から地球に入る紫外線はスルーするものの、地球から宇宙へ出ようとする赤外線はブロックする。これがごく簡単な地球温暖化のしくみです。
 また、温度による波長の違いから、この物体の方向からこんな波長の電磁波があった、ということはこの物体の表面温度は何℃だ、と温度を測定しているのが放射温度計で、体から離れていても測定することができるので、コロナ時代に多数の人の体温を測るときにはすごく便利なわけです。

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