前回の記事では、相違点に比べて共通点は軽視されやすいけど、大切なことが隠されていることもあるよ、という話でしめました。
共通点は問いにくい
ですが、例えば中間・期末テストで
被子植物と裸子植物の違いを説明しなさい
という問題は出せても、
被子植物と裸子植物の共通点を説明しなさい
という問題は出しにくいです。出したらあとが大変です。
というのも被子植物と裸子植物の違いの説明だったら、子房の有無の指摘があるかないかに注目すれば、適切な採点ができるでしょう。でも、被子植物と裸子植物の共通点の場合は、
解答例ア どちらも植物である
解答例イ どちらも生きている
解答例ウ どちらも地球上に存在する
どれも被子植物と裸子植物の共通点といえば共通点なのでバツはつけにくいですね。
でもなんでしょう、このぐぬぬ感は。「違う、そうじゃない」と鈴木雅之状態になります。
そりゃそうなんだけれど、そういう答えがほしいんじゃないんですよね。やはりこういうときは「どちらも花が咲き、種子をつくる」とか書いてほしいものですね。
しかし、単に共通点は何か、という問い方では、こちらが期待する言葉を導けないのですよ。
こんな共通点が(答えて)ほしかった!
比較する目的にもよりますが、一般論として、望ましいAとBの共通点は、AとBだけの共通点、AとBの共通の特徴であるのです。
そしてそれは、分類上AとBをまとめたグループと同レベルの別グループ、被子植物と裸子植物の例だとそれらをまとめた「種子植物」と同レベルの別グループである「花の咲かない植物」グループの仲間であるシダやコケとの相違点でもあるのですね。
この第3の比較対象がネコだとか石ころだとか太陽だとかだと解答例アイウのようになるのですが、比較対象が2つから離れれば離れるほど「ふざけてんのかオイ」ということになります。
そういうわけで共通点を考えるときは、単なる共通点ではなく、それらにごく近くて非なるものとの相違点という視点で考えていくと、より価値のある共通点が見いだせるわけです。
では、どう問えばいいのか
ただ、そのように生徒に考えさせるためにはどうしたらよいのでしょうか。
それには先ほどの「第3の比較対象」を使っていくのです。
たとえば、酸素と二酸化炭素の共通点を考えてみましょう。第3の比較対象を用意します。ここではあえてかけ離れた「民主主義」で行ってみましょう。
(1)「酸素と二酸化炭素」と「民主主義」との違いは何か?
⇒「酸素と二酸化炭素」は物であるが、「民主主義」はそうではない。
間違っていませんね。次に、「物である」けれども「酸素と二酸化炭素」ではないものを探してみましょう。「石ころ」でいきますか。そうすると、次は第3の比較対象を「石ころ」で考えてみるのです。すなわち、
(2)「酸素と二酸化炭素」と「石ころ」との違いは何か?
⇒「酸素と二酸化炭素」は純物質であるが、「石ころ」はそうではない。
そして次に、「純物質」であるけれども「酸素と二酸化炭素」ではない何か、「塩化ナトリウム」と比較してみましょう。
(3)「酸素と二酸化炭素」と「塩化ナトリウム」との違いは何か?
⇒「酸素と二酸化炭素」は常温で気体であるが、「塩化ナトリウム」はそうではない。
そして次に、「常温で気体」であるけれども「酸素と二酸化炭素」ではない何か、「水素」と比較してみましょう。
(4)「酸素と二酸化炭素」と「水素」との違いは何か?
⇒「酸素と二酸化炭素」は空気より密度の大きい気体であるが、「水素」はそうではない。
どうでしょう。(1)(2)(3)(4)と進むにつれ、物である⇒純物質である⇒常温で気体である⇒空気より密度の大きい気体である …とだんだんいい感じの解答になってきているでしょう。
このようにしていくと、やがて「第3の比較対象」が出せなくなります。それこそが、究極の共通点、すなわち、AとBだけの共通点が導けるのです。
まぎれもなく、共通点というのは(第3の比較対象との)相違点なのですね。
あ、ただし、一つ注意しておきたいことがあります。
比較する2つのものABと第3の比較対象Cの間の関係を考えるとき、第3の比較対象Cとして、ABCで三位一体になるようなCや、BよりもAに近いCは避けましょう。CがABと近すぎると、今度はABとCとの相違点が挙げられなくなってしまうからです。
例: 「犬とキジ」と「サル」との違いは何か?
3つとも「桃太郎の家来」という共通点がありますから、「桃太郎の家来」という視点からは「犬とキジ」と「サル」との違いがありません。
また、「犬とキジ」よりもむしろ「犬とサル」の方が同じ哺乳類で近く、鳥類の「キジ」の方が離れているので、脊椎動物の分類の視点からも、「犬とキジ」と「サル」との違いがあげられないのです。
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