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0033 植物の分類に関する質問集

植物の分類について、生徒からきた質問と、その答えをまとめてみます。

子葉が3枚以上ある被子植物はないの?

質問:被子植物は必ず単子葉類か双子葉類に分けられるのですか?子葉が3枚以上の植物はないのでしょうか?

回答 
 子葉が3枚以上の植物は「多子葉(たしよう)植物」といい、マツがその例に挙げられます。
 でもマツは裸子植物ですよね。被子植物にあるのかな…と調べてみたら, 日本植物生理学会の植物Q&Aの中に「双子葉植物の中には子葉が1枚の植物もあります。」とか「子葉の数が8〜11と多い植物も外国では報告されています。」という記述を見つけ、先生もへぇ~と思いました。
 もっとも、これは相当マニアックな話なので、ひとまずは被子植物は子葉1枚の単子葉類と子葉2枚の双子葉類に分けられるとしておきましょう。
 しかし、生物の世界って、奥が深いですね。そういう例外っぽい生物は、分類するときは頭を悩ませるものですが、まさに多様性ということで大切にしたいものです。

もっと細かく分類しないのはなぜ?

質問:裸子植物には単子葉類も双子葉類も一切ないのですか。
   単子葉類を合弁花類と離弁花類に分類しないのは
なぜですか。

回答:
 どちらも中学校の授業では普通そこまでふれられない、同じ分類の本質をつく問題なのでまとめて回答します。

 例えば図書館の本はジャンルごとに分類されています。例えばヒマワリについて調べたいと思ったら400自然科学>470, 植物学>479 被子植物>479.4 双子葉植物>479.9 合弁花類>479.99 キキョウ目>479.995キク科 のところをさがせば一網打尽です。
 ところがもし、図書館の本の並べ方が「本の出版日順」とか「本の大きさ順」に並んでいたらどうでしょうか。確かにそのように分類して並べることも物理的には可能です。でも、そんな並べ方(分類方法)の図書館で、ヒマワリについての本を探すのは、すごく不便じゃありませんか。「本の出版日順」は1991年に出版された本を探す、というときには便利かもしれませんが、「1991年に出版された本を探す」必要が出てくる場面は、人生の中でそうそうないんじゃないでしょうか。少なくとも、あるテーマの本を探そうという場面よりはないですよね。だからそれが可能でも「本の出版日順」とか「本の大きさ順」に並んでいないのです。(図書館の文庫本コーナーとかいうあげ足はとらないでください)

 それと同じように、分類の授業の時のように、生物の特徴からみんなが好き勝手に(と言うとアレですが)分類したものをそのまま使おうとすると、出版日順に本が並んでいる図書館で、ヒマワリの本を探そうとする不便さと同じような困ったことが起こることが考えられます。
 それと同じように、生物の分け方自体はいろいろなやり方が可能ではありますが、 「生物学の分類大系」みたいにみんなが使う分類は、それを使う人たちにとって、便利なものを採用し、混乱するようなところは避けたりしているのです。(もっとも、生物学の分類体系も何種類かあって、細かいことを言うと違いがあり不便だったり混乱を招くところもあるのですが、それはおいといて)

 例えば、裸子植物のマツの葉は針みたいですから、平行脈とか網状脈とか以前に、葉脈がありません。すると、葉脈から双子葉や単子葉で分けるのは難しいですね。なので被子植物のように双子葉とか単子葉みたいに分類しない(できない)。

 一方、同じ単子葉類のユリでも、たとえば「カノコユリ」という種類のユリは離弁花、「テッポウユリ」というユリは合弁花で単子葉類の中でユリが両方に分かれてしまい、「ユリ(ユリ科)」としてまとめて扱えなくなってしまうという困ったことになってしまうので、単子葉類を合弁花と離弁花に分類すること自体はできなくはないけれど、混乱を招くし、そこまで分類する意味(必要)があるのか?というところもあり、あえて分類しないでいるのですね。

他に花が咲かない植物はあるの?

質問:花が咲かない植物はコケ植物シダ植物以外にあるのですか?

回答:
 これも、意外に奥の深い質問なんです。
 花が咲かない植物は根・茎・葉の区別があればシダ植物、なければコケ植物と説明しました。だからそれ以外にはない、というのが現在の中学校理科としての答えです。
 でも、生物学の世界では、「植物」の範囲をどこまでにするかという問題があるのですね。たとえば、ワカメやマリモなどは「藻類(そうるい)」というのですが、「現在は」植物ではない(もちろん動物でもない)扱いになっているのですが、30年くらい前までは中学理科の教科書上では「植物」扱いされていたのです。ソウ類を植物に含めれば、花が咲かない植物は「ソウ・コケ・シダ」の3種類となります。

キノコはどうやって殖えるの?

質問:種子で仲間を殖やしたり、胞子で仲間を殖やしたりするそうですが、キノコはなにでなかまを殖やすのか疑問に思いました。キノコに種なんて聞いたことないですし、もしかしたら別の方法で殖やしたりしているのですか?

回答:衝撃の事実。キノコは植物ではありません!
 もちろん動物でもありません。上の質問で出て来たソウ類と同様、キノコは「菌類」といわれる植物でも動物でもない生物の仲間なのです!ちなみにカビも「菌類」の仲間です。
 では、キノコはどうやって仲間をふやすのか。それが胞子でふえるんですね。(「じゃあ植物じゃん」と言われそうですが、2年生で学習する「光合成」ができないのがキノコが植物の仲間に入れてもらえない大きなポイントです)

維管束と、根・茎・葉の関係は?

質問:コケ植物に維管束がないのと根、葉、茎の区別がないのと関係はあるのですか?

回答:
詳しい話は2年生にうつってしまったのですが、水は根で吸収され、茎を通って、葉から出て行きます。このときの水の通り道(栄養分の通り道もありますが)が維管束です。
ところがコケは根のようなところでは水を吸わないです(だから「根」と区別して「仮根」とよばれます)。とすると、体に大量の水が入ってこないので、体内の水の通り道である維管束も必要ないのです。
その代わり、維管束を使わず水が届く範囲までしか体が大きくなれません。だから「高さ1mのコケ」とかありえないのです。

写真で分類しきれるものなの?

質問:教科書の写真を見てヘゴのようなシダ植物と、マツのような裸子植物との区別が出来ませんでした。このような場合、大まかな写真でわかるのには限界があるのでしょうか?

回答:
純粋に写真や実物の外見を分類表のルールに適用させる形だけでは、区別がつかないことがあります。それこそヘゴは本当はシダだから花は当然ありませんが、たまたまその写真に(ヘゴを見たときに)花がさいてなかっただけかもしれませんね。とすると、種子植物の可能性は残るわけです。

 もっとも、たとえば裸子植物だったら、このページ、シダ植物だったら、このページなどでで裸子植物やシダ植物をそれぞれずらっと眺めると、「こういうのが裸子でこういうのがシダか」と裸子(シダ)っぽいイメージがつかめるかと思います。「コケ」も同様に感じでだいたいのイメージをつかめるので、たまに「引っかけ問題」があるかもしれませんが、ぱっと見で大体は分類できます。「被子植物」のなかで双子葉(さらに合弁花・離弁花)、単子葉の分類は学習したように葉や花弁を見ればできますから,これは難しくないですね。

 

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