0008 【生物の観察と分類の仕方5】生物の特徴と分類の仕方

分類しようよ

 世の中にはいろいろな生物がいますが、あまりに種類がたくさんあると、収拾がつかなくなるので整理したくなりますね。
 じゃあどう整理するかというと、似た者同士をまとめて「あんな生物」「こんな生物」とまとめていきたくなります。
 こうやって生物をいくつかの仲間に分けていくことを分類といいます。

課題:生物はどのように分類できるだろうか
 ここの課題設定も難しいところです。具体的な生物を分類することそのものが、ここでの本当のねらいではありません。
 指導要領解説などを見ると、ここで狙いたいことはもう少し抽象的で、こうすれば(この内容はあとで述べます)生物を分類できると理解させたいんだな、ということがわかります。
 で、「こうすれば」の内容が、「いろいろな生物を比較して見出した共通点や相違点を関係づける」ということであり、そもそも比較や分類するにはその観点や基準、特に分類なら区分原理・区分肢が必要になることを理解しておかなくてはいけません。これを理解するには、具体的な分類の場面があるとわかりやすいですね。また、区分原理・区分肢を変えれば分類の結果が変わることを見出させるには、実際に観点や基準を変えて分類をしてみるのが手っ取り早い。
 生物を分類させることはあくまでも手段で、その手段から分類についていくつかの大切なことを見出して理解することが本当の目的なのです。
 それに見合った課題を設定するとなると、単に「分類してみよう」では、課題は達成しても、本当に狙いたかったところまで届かないことがあるので、よろしくありませんね。

実際に分類してみよう

 ためしに、次の8つの生物を、その生物を観察してわかる特徴から2つのグループに分類してみましょう。
スイレン、アザラシ、キンギョ、オオグソクムシ、アリ、サクラ、ナナホシテントウ、タンポポ



たろうさんの分け方

①タンポポ、サクラ、スイレン
②アザラシ、キンギョ、オオグソクムシ、アリ、ナナホシテントウ

 たろうさんはどういう分け方をしたのでしょうか。
 ここで気をつけてほしいのは、「動物」「植物」という分け方はしないでもらいたいのです。「動物」「植物」というのはすでに決められている分類の仕方で、皆さんにとっては観察しないでも知っている「知識」で分類していることになります。
 そうではなく、純粋に生物を観察してわかる特徴、つまり「タンポポやスイレンなどはXという共通点がある」「でもアザラシやアリなどはそうではなくYという特徴がある」というふうに理由づけて分類してほしいんですね。
 では、この分け方(分類の結果)になるように、「動物」「植物」という言葉を使わないで、どのような生物を観察してわかる特徴を基準として①と②の分類をしたか説明できるでしょうか。

 たとえば「①は花があるけど②は花がない」とか「①は根を張ってるので遠くへ行けないけど②は移動することができる」とか説明できそうですね。つまりそれが「動物」「植物」の違いといえそうです。

 注:ここでは登場した植物がすべて花がある種子植物だったため「①は花があるけど②は花がない」という分類の仕方が成立してしまいましたが、もちろんこれは植物と動物を分ける基準としては正しいものではありません。シダやコケなどが動物になってしまいますから。でも、この段階で知識を基に分類の基準を否定するのは、良い指導とは言えません。
 もし植物と動物を分ける基準として深めていきたいならば、「では、イヌワラビはどうだろう」と分類する生物をふやしながら深めていくのがよいでしょう。
 すると、イヌワラビを①のグループに入れるならば、基準を変える必要が出てきますし、あえて基準を変えず②のグループに入れるのなら、②のグループは動物といえませんが、このようなわけ方(イヌワラビがスイレンではなくアリと同じ仲間に分類すること)が適切といえるのか、振り返らせてみるとよいでしょう。

はなこさんの分け方

①タンポポ、サクラ、アリ、ナナホシテントウ
②アザラシ、キンギョ、オオグソクムシ、スイレン

 ①が陸上で生活している生物、②が水中または水上で生活している生物 という分け方です

考察:観点や基準が変わると、結果も変わる

 同じ8つの生物を分けたのに、たろうさんとはなこさんでは、分け方(分類結果)がと大きく異なっていますね。
 このように分類の観点や基準が変わると、分類の結果も変わってくるのです。
 「分類の観点や基準を変えると、分類の結果が変わってくる」というのは、あまりに当たり前の話なので、ふつう生徒もそれに気づいていてもわざわざ言語化して表現しません。なのでこれを生徒が見いだしているかを確認するのは地味に難しいです。そりゃ「分類の観点や基準を変えると、分類の結果はどうなりますか」とまで誘導して質問すれば「変わる」と答えられるでしょうが。「それがどうした」といわれると答えに詰まりそうです。とはいえ現実的な落としどころとしてはこのあたりになるのかな。

 このように、分類するとき、「キンギョ、オオグソクムシは動けるという共通点があるよな」「でもサクラは動けないから別のグループだ」生物どうしを「動けるか」というようなある観点で比べることで見いだした共通点や相違点を基にしています。

結論:生物どうしを比べて見出した共通点や相違点を基にした観点を基準にして分類することができる。

 同じものでも見方は一つではない、というのは最初にやりました。それは生物の分類にもあてはまることなのです。

 ここでの核心は、具体的な生物の分類でもなければ、生物学を離れた図書館情報学でやりそうな分類論を中学生向けにダウンサイジングしたものでもなく、はたまた指導要領解説で留意しろ、と言っている学問としての生物の系統分類の話でもありません。理科の見方である「共通性・多様性の視点」がベースになっている共通点と相違点を利用して生物を分類していきましょ、という話だと考えられます。あえて学問のような権威的な分け方を今回ばかりはお休みして、生徒に区分や体系化まで許したのも共通点と相違点を利用できるようにしたためでしょう。
 これだけだと?な感じがしますが、この「共通点と相違点」という着眼点で、この後に学習する植物の分類、動物の分類をみていくことで、今までになかったご利益がどこかにあるのかもしれません。

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