というわけで、「化学変化の前後で、全体の質量は変わらない」という質量保存の法則を前回学習しました。せっかくですので、前回とは別の化学変化で質量保存の法則を確かめてみましょう。
[実験]
ケース3 塩酸HClに重曹こと炭酸水素ナトリウムNaHCO3を入れて起こる化学変化
最初は43.12gです。
では、反応させてみましょう。動画をどうぞ。
あれ、42.95gです。はかりの誤差というレベルでなく質量が減ってしまいました。
改めて実験しても同じように減っています。(前にも同じ実験の動画を撮ってたorz)
むむっ。これは事件(問題)だ!これでは「質量保存の法則」が成り立ちません。
そういえば前回の授業で、具体的な化学変化の例をたった2つ、それもなんか理由つけて指定された化学変化を見ただけで、「すべての化学変化は…」と強引に一般化していたけど、実は「質量保存の法則」は成り立たないんじゃないか、という発想はたいへんもっともなご明察なのですが、そこはオトナの事情ということで、どうかご容赦願います。あくまでも「質量保存の法則」は正しい、という前提の下で話を進めさせてください。
課題:塩酸と重曹の化学変化でも質量保存の法則が成り立つことを確かめよう。
[検討・改善]
ケース1,2と同じように実験したのに今回、結果が違っていたということは、ケース3の実験は、ケース1,2と何か違う点があったはずだ。そこに何か隠されているはずだから、それを探そう。
(これも「見方・考え方」の一種といえますが、新学習指導要領の「見方・考え方」に比べて具体的すぎるので私は個人的に「攻め方」と呼んでいます。こういう戦術を系統化してまとめられるとすごい便利なものができそうですが、まったくの未着手です)
そこで、現場百篇。もう一度実験動画をみて、ケース1,2と違うケース3の特徴を見つけてみましょう。
おわかりいただけただろうか?
ケース3だけが化学変化によってジュワーッと泡が発生しています。泡、つまり気体が発生しています。
この化学変化を化学反応式で表すと
HCl + NaHCO3 → NaCl + H2O + CO2
やはり気体が発生していますね。CO2、二酸化炭素です。
では、発生した二酸化炭素はどこに行ったのでしょうか。実験後に測った質量には二酸化炭素の質量は含まれているでしょうか?
目を背けてはいけません。戦わなくちゃ現実と。
発生した二酸化炭素が逃げたため、質量が減ったと考えられます。
だとしたら、発生した二酸化炭素が逃がさないようにすれば、質量は変化しないはずです。でも、どうやって?
全てを閉じたペットボトルの中で化学変化させるのです。
塩酸の入ったペットボトルに、重曹を入れた小さな試験管を倒さないように入れて、ふたをしっかりする。この状態で質量を測った後、ペットボトルを倒して重曹と塩酸を反応させる。落ち着いたところで質量をもう一度測る。
つまりこういうことです。
ケース3改善版 塩酸HClに重曹こと炭酸水素ナトリウムNaHCO3を入れて起こる化学変化 in ペットボトル
最初35.53gだったのが、やはり35.53gに。
塩酸と重曹の化学変化でも質量保存の法則が成り立つことを確かめられました。
「塩酸と重曹の化学変化でも質量保存の法則が成り立つことを確かめよう。」という課題が解決できました。これにて一件落着!
※以前、課題を解決しようとする授業展開を生徒に明確に意識させるために、毎回課題が解決するたびに「これにて一件落着!」と決め台詞を言おうと思ったのですが、今の子どもは「遠山の金さん」を知らなかった…。
ちなみに、動画では、そのあとペットボトルのふたを開けています。その瞬間、プシュッと小さな音がして、35.43gと0.10g減ってしまいました。ペットボトルの中の気体の一部が逃げてしまったわけです。
やはり質量保存の法則は正しかったのですね。
コメント