PR

0890 この部屋の空気に含まれる水(水蒸気)の量

コップに入れた水が減っていく。濡れたタオルが乾いていく。
実際に重さ質量を測ってみると、確かに減っている。

減った水はどこに行ったのだろうか?
原子・分子の学習あたりであの手この手で形成したイメージの一つとして「決して物はなくならない」ということがある。
だから質量保存の法則あるのだし、粒子のモデルをかくときは粒子の数は変わらないようにかくし、化学反応式では苦労して係数を立てるのである。
なので、減った水はなくならない。見えなくなったかもしれないけれど、なくなったわけではない。

そう、空気の中に水蒸気として含まれている。
水蒸気は見えないので、
見える湯気をさして「水蒸気」というのは、「言葉だけでは7%しか相手に伝わらないので身振りや口調のほうがずっと大切だよ」とかいってるメラビアンの法則の解釈に並ぶあまりにも有名な誤概念なので、うっかり湯気を水蒸気と言ってしまうと、どや顔で突っ込まれてしまうことがあるので注意
見ただけでは空気中にどれくらいの水(水蒸気)があるのか、わからない。
ではそれをちょっくら計算してみよう。

まず気温と湿度(ここでいう「湿度」jは「相対湿度」のこと)をチェック。

 考えてみると湿度ってのは、温度がないとあんまり意味がない。
 湿度の定義は 湿度(%) = 1m^3の空気に含まれる水蒸気の質量 / その空気と同じ気温での飽和水蒸気量 × 100
 分母の値が温度に依存する。当然、湿度も温度の影響をうけるのである。
 だから「気温30℃で湿度30%の空気」と「気温30℃で湿度60%の空気」というのなら気温が同じで、「湿度60%の空気は湿度30%の空気の2倍の水蒸気を含んでいる」みたいに比較がしやすいけれど、「気温30℃で湿度60%の空気」と「気温15℃で湿度60%の空気」はどちらも湿度60%で同じだけれど含まれている水蒸気量は等しくないし、まして例えば「気温30℃の空気は気温15℃の空気の2倍(あるいは1/2)の水蒸気を含んでいる」みたいなことは言えない。
 それは「銀座一丁目」と「銀座四丁目」なら「同じ銀座でもちょっと違うね」みたいな言われても「うんそうだね」みたいに自然なリアクションできるけど、「銀座一丁目」も「青山一丁目」も「六本木一丁目」を取り上げて「同じ一丁目でもちょっと違うね」と言われたら「銀座と青山と六本木なんだから違うのが当たり前だろ!」と突っ込みたくなるのと同じだ。
 気温は湿度の前提条件のようなものといっていい。
 そう考えると湿度計ってある意味不思議かもしれない。気温が違っても湿度が同じなら同じめもりのところを指す。「気温30℃で湿度60%の空気」と「気温5℃で湿度60%の空気」では、実際に含まれている水蒸気の量は全く違うのにも関わらず、だから。本郷三丁目と四谷三丁目と新宿三丁目も同じ三丁目で扱ってくれる。全然違うのに…。

例えば、デジタルの温度・湿度計でこんなふうに表示してあったとする。

気温が25℃。そしたらまず、この温度の飽和水蒸気量を調べてみよう。

25℃の飽和水蒸気量は23.1g/m3
もし湿度が100%なら、1m3 の空気にこれだけの水蒸気が含まれていることになる。

そして湿度は75%
飽和水蒸気量にこの湿度をかけると、 1m3の空気に含まれる水蒸気の質量が出てくる。
23.1g/m3 × 75% = 17.3g/m3

あとはその部屋の容積をかければよい。
 ざっくりと 縦8m、横8m、高さ3mとして 8×8×3=192m3
 17.3g/m3 × 192m3 = 3321.6g
ざっと3リットルちょっとの水が含まれていることになる。
これを多いとみるか、少ないとみるか。
「こんなに?」「でも部屋の広さから考えると多いとは言えないのかなぁ」

さらに、その量の水蒸気の体積を計算してみる。
高校化学ではおなじみだが、1mol=18gで22.4Lに相当するので、3321.6gの水は
3321.6/18×22.4=4133.5L
1m3=1000L だから 4.13m3  ということになる。
これは部屋の容積(192m3)の約2.2%分に相当する。

そういえば空気の成分ってだいたい、窒素が78%、酸素が21%、アルゴンが0.93%、二酸化炭素が温暖化して0.04%に増えた…とかそういう割合にだ。
でも水蒸気は2%を超える。二酸化炭素はおろか、アルゴンより多いじゃん!なんで水蒸気はないの?

実は、窒素が78%、酸素が21%…というデータは乾燥空気の成分の割合。空気中に含まれる水蒸気の割合は変化が大きいので、水蒸気は考えないことにしているのだ。実際には、今計算したようにそれなりの割合の水蒸気があるんだけどね。

コメント

タイトルとURLをコピーしました