1228 扇風機で涼しく感じるのは

夏に扇風機などで風がふくと涼しく感じますが、あれはどういうことなのでしょうか。

まず、実際に風をうけると気温が下がるのかを確かめてみましょう。
乾湿計を2つ用意します。

乾湿計を2つ並べていますが、どちらも、乾球温度(気温)は21℃くらい、湿球温度は19℃。湿度表を見ると、湿度82%です。

このうち、左側の乾湿計を扇風機の風に当てます。背景のカオスな状態については、ほっといてください。

風に当てた後の左の乾湿計を見てみましょう。乾球温度(気温)は21℃のままですが、湿球温度は15℃まで下がっています。湿度は49%まで下がりました。

気温(乾球温度)は変わっていないということは、風が止まっている状態と、風がふいている状態では気温に変化がないということです。でも、湿球温度が下がっているところが気になりますね。ここに謎を解くカギがあります。

まず、最初の風がふいていない状態でも、乾球温度(気温)は21℃くらい、湿球温度は19℃と、わずか2℃ですが確実に温度差があります。
乾球と湿球の違いは、乾球はそのままの温度計ですが、湿球は湿ったガーゼに被われています。このガーゼの水が蒸発して気体になるときには、気化熱が必要になります。その熱はどこからもってくるか…そう、周りの空気、そして温度計の球部からです。温度計の球部は熱を取られた分だけ、温度が下がります。これが2℃の温度差の原因です。

では、風がふくとどうして湿球温度がもっと下がるのでしょうか。
風がふいていないとき、湿球の周りの気温は19℃でした。これ以上温度が下がらないで安定しているということは、湿球の周りは、水蒸気が飽和水蒸気量いっぱいあり、湿度100%、これ以上蒸発できない状態からだと考えられます。
この気温19℃、湿度100%のうすい層(流体力学の世界では「境界層」と呼ばれています)が湿球の周りを取り囲んでいるのです。そしてこの層と、気温21℃、湿度82%の普通の空気は、案外、きちんと分かれているのです。

ところが、風の力で湿球温度の周りにある湿度100%の空気の層を吹き飛ばし、湿度82%、つまり湿度100%に達していないのでまだ水蒸気を受け入れられる空気-を送り込むとどうなるでしょうか。そう、さらに蒸発が起こります。さらに蒸発が起こるということはさらに周囲から熱を奪うということです。したがって、湿球温度もさらに下がるのです。

この湿球を、汗をかく私たちのからだと考えてみたらどうでしょうか。気温(乾球温度)が下がらなくても、からだ(湿球)の温度は風によって下がっていくのです。

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