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0524【化学変化と物質の質量4】質量変化の規則性(後編)

結果と考察2

[結果2]
では、各班で銅やマグネシウムを質量を変えて加熱したときのデータを見てみましょう。


実験では金属と酸化物の質量が測定されますが、課題では「(結びつく2種類の)物質の質量の間」の関係を知りたいのですから、本当に知りたいデータは金属と酸素の質量です。酸素の質量は酸化物から元の金属の質量を引けば出てきますね。
ということで、もう1行、酸素の質量のらんを付け加えました。

この表の、金属の質量を横軸、酸素の質量を縦軸にしてグラフにしてみます。


[考察2]
原点を通る直線のグラフ、つまり比例のグラフです。
比例、y=axということは、酸素の質量yと銅(またはマグネシウム)の質量xの比が一定ということになります。
では銅の質量xと酸素の質量yの比 x:yは何体何でしょうか。マグネシウムでも同様に求めてみましょう。

ちょうど縦軸・横軸の値ともに区切りがよい値の「格子点」をさがすと、
銅は(0.40 , 0.10)があります。つまり4:1ですね。
マグネシウムは(0.60 , 0.40)と(1.20 , 0.80)があります。どちらでみても3:2です。

てなわけで、銅:酸素なら4:1、マグネシウム:酸素なら3:2とそれぞれの質量比は求まりましたが、課題:2種類の物質が結びつくとき、それぞれの物質の質量の間にはどのような関係があるのだろうかに答えるには、4:1とか3:2とか具体的な比を示すのではなく、一般化する必要があります。

結論:2種類の物質が結びつくとき、それぞれの物質の質量は一定の比になる

 といえば、という課題に正対した結論になりますね。これにて一件落着っと。

 よく考えてみると、反応物の片方の質量が2倍、3倍…になれば、相棒の質量も2倍、3倍となるはずですよね。むしろ片方の質量が2倍、3倍…となっているのに、相方がの質量が一定だった方が意味不明だわ。そういう意味では、これも質量保存の法則とあわせてストンと腑に落ちる結論なのではないでしょうか。

補足

[補足1]
たしかに一件落着したのですが、もう少しおつきあいください。
周期表を用意して、その中の酸素のところをみてください。
16という数字がその中にありませんか。詳しいものだと16.00とか15.9994とか書いていることがあります。この数字は「原子量」と呼ばれる量で、簡単に言うと原子1個の質量(の比)です。
次に周期表から銅とマグネシウムを探し、酸素だと16だった数字はどうなっているか探してみましょう。
そしてそこから何かを悟ってください。

  *     *     *

そう、銅は64、マグネシウムは24です。
ということは銅:酸素は64:16=4:1
マグネシウム:酸素は24:16=3:2
さっきと同じじゃないですか。
つまり銅と酸素が質量比4:1で結びついたのは、銅原子と酸素原子の質量比が4:1(それと銅原子1個には酸素原子1個が結びつく)からなのです。

[補足2]
この、「銅:酸素=4:1、マグネシウム:酸素=3:2という比は覚えるべきか」という質問を受けます。

学校の先生的な回答としては、「この手の問題を解くにあたって、必要ならこの比率を導き出せるように作問されているので、その必要はない」となります(必要はないけど、覚えてしまうことはよくありますが)。むしろ、データから比を出せるようにすることが大切なので、比の値はわかるけれど、その求め方がわからないとなると、本質がわかってないということになります。
問題は解ける(テストの点数は取れる)けど本質はわかっていない…こういう状態は学校の理科の先生は嫌う人が多いです。

一方、塾(ここでは受験対策をメインとした進学塾のイメージです)の先生的なら「覚えておくと問題を解くのにかかる時間が短縮できる、問題によっては一瞬で答えられるので、覚えておきなさい」という回答をする方が、「(テストで点をとれるようにしてくれる)よい先生」といえるのかもしれません。

応用問題などで、銅と酸素、マグネシウムと酸素以外のこのような実験の例が出せるとよいのですが、
条件1 現実にある2つの物質で
条件2 理科室でできる程度の実験でそれらを結びつけることと質量の測定ができ
条件3 2つの物質が反応する質量が簡単な整数比になる
という3つの条件を満たす実験は、他にないのが現状なのです。

例えば銀の酸化はAgが108、Oが16、そして酸化銀はAgOですから、
銀を酸化させたときの銀と酸素の比は(108×2):16=27:2になります。
さすがに誤差もそれなりに含まれるであろう実験結果から27:2を正確に求めるのは酷でしょう。
13:1 または 14:1 という判断をしても責められません。

かといって炭素の酸化の例だとCは12、Oは16で
炭素を酸化させたときの炭素と酸素の比は12:(16×2)=3:8になります。
これも比としては簡単かと言われると微妙なところですが、それ以上に気体である二酸化炭素の質量を正確に測ることに難があります。

ということで、この手の問題では銅と酸素、マグネシウムと酸素の組み合わせしか登場しませんから、その比を覚えておく、というのはいかにもな受験テクニックとはいえ、そのようなテクニックに溺れる受験生をたしなめるような術が作問者にはないのです。

そういえば小学校の算数では図のような正方形の中にある「イモ形」の部分の面積を求めよというのがあります。ちょっと答えてもらえますか。ただし円周率は3.14とします。

この問題、Y谷O塚の正会員レベルの小学生なら一瞬で「57cm」と答えられるみたいなんですよ。そう、この出題パターンは算数の問題あるあるなので「イモ形の面積は正方形の面積の57%」と、答えを暗記しているので。
でも、そんな彼らが受験する学校では、こんな「簡単な」問題は入試に出ないので、こんなトリビアを知ることが彼らの人生にとって少しでも役立つのか、素朴な疑問がありますが…

 大学受験でも予備校で体心方格子の充填率は68%、面心立方格子と六方最密構造は74%という数字を覚えろ、と習ったな~。「牢屋(68)に入って面目なし(74)」とかゴロまで教えてくれてたけど。化学を使って大学受験して化学科・化学専攻に進学し、理科教員になったけど、今日まで一度も使ったことはないなぁ…。

前編の「銅の加熱回数と質量変化」、後編の「金属の質量と結びついた酸素の質量」のグラフのエクセルファイル3096CuMg.xlsx

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