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0851 弁柄、鉛丹、亜鉛華

酸化鉄(Ⅲ)

酸化鉄(Ⅲ) Fe2O3  Mw=159.69  CAS No.1309-37-1
昔の名前だと酸化第二鉄。暗赤褐色の粉末。

 この物質は「弁柄」とも呼ばれています。インドのベンガル地方で良質のものが取られたとこからこの名前になったらしいです。
 用途としては、顔料が有名ですが、食料や化粧品の材料、さらにはレンズなどの研磨剤などに使われています。

 酸化物なので燃えたり爆発したりする危険性はないだろうな…と思いきや、一酸化炭素と反応し、爆発の危険をもたらします。
 Fe2O3(s) + 3 CO(g) → 2 Fe(s) + 3 CO2(g)
この反応は酸化鉄(Ⅲ)は酸素を奪われて鉄になるので還元された、一酸化炭素は酸素と結びついて二酸化炭素になるという、中学校の定義での「還元」の数少ない例になりますが、いかんせん中学校では酸化鉄の化学式はアンタッチャブルなので、この化学反応式も中学校理科では登場しません。もったいない…。
 赤鉄鉱(写真)から鉄を取り出すときに、この反応をすることがありますね。

また、過酸化水素と混触すると非常に激しく反応します。これは何かというと、Fe³⁺が二酸化マンガンと同じように触媒となって、過酸化水素を分解させるのです。

 他にもグアニジン過塩素酸塩、粉末アルミニウム、マグネシウム、金属アセチリド、さらし粉、ヒドラジン、エチレンオキシドなんかとは一緒にしてはいけません。酸化鉄は隙あらば還元されたいので、酸化されたがっている奴と出会わせるとろくなことがないのです…。

四酸化三鉛

四三酸化鉛、四酸化三鉛 Pb3O4  Mw=685.60  CAS No.1314-41-6
ユニークなのが構造式。3個ある鉛原子のうち、2個はⅡ価で1個はⅣ価という鉛原子の中での格差社会。このため、酸化鉛(Ⅳ)鉛(Ⅱ)とか酸化鉛(Ⅱ,IV)という別名もあります。

その他、酸化鉛テトラ、光明丹、そして「鉛丹」と呼ばれています。

 なぜかこんな構造式が載っているものが複数ありました。これじゃⅣ価じゃなくてⅢ価だよな…。また「親亀(ネタ元)こけた(間違った)ら、みな(コピペ先)こけた(間違った)」ってやつか

 四酸化三鉛も赤い粉末です。ということで弁柄と鉛丹のツーショットを取ってみました。左が弁柄、右が鉛丹です。「赤」といっても並べてみると結構違うもんですね。弁柄が暗めなのに対し、鉛丹は明るいというか、ちょっとオレンジ色っぽい色をしています。
 ということで、古くから日本画の絵の具や陶磁器の釉(うわぐすり)として使用されていました。また、古代ローマでも赤い顔料として使用されており、ポンペイ遺跡で多くの使用が確認されたことから、ポンペイ・レッドなんて名前も頂戴しています。
 他にも光学ガラス,クリスタルガラスなどに使われています。

 この鉛丹の入った試薬瓶、よくある500gの試薬瓶よりは一回り小さいのですが、実際に持ってみるとズシリときます。鉛丹の密度は9.1g/cm3、銅や鉄よりも密度が大きいのです。
                  

 で、酸化物ということっで、不燃性であります。また、弁柄同様に還元剤とまざると、特に加熱までされると還元されてヤバイということが考えられますが、弁柄のように一酸化炭素との反応がヤバい!というような具体的な例は出されておりません。まあ、あっちは赤鉄鉱から鉄を取り出すという、よく使われる反応だから、ということかもしれませんが。

 いっぽう鉛化合物だけに有害性があります。発がんのおそれの疑いとか(おそれの疑いとなると可能性がちょっと低そうに思えるけど甘く見てはいけない)、生殖能または胎児への悪影響のおそれとか、血液系、神経系、腎臓の障害とか、いろいろ有害性はあげられています。そのため安衛法とかPRTRとか、大気汚染防止法とか水質汚濁防止法とかいろいろな法律に目をつけられているのですが、毒劇法については

昭和四十年政令第二号
毒物及び劇物指定令
(劇物)
第二条 法別表第二第九十四号の規定に基づき、次に掲げる物を劇物に指定する。ただし、毒物であるものを除く。
七十七 鉛化合物。ただし、次に掲げるものを除く。
 四酸化三鉛
 ヒドロオキシ炭酸鉛
 硫酸鉛

ということで、首の皮一枚で劇物指定を逃れています。

酸化亜鉛

酸化亜鉛 ZnO 亜鉛華 (Flowers of zinc)、亜鉛白 (Zinc white)なんて異名も。
Mw=81.39    CAS No.1314-13-2

顔料、塗料・印刷インキ・化粧品原料、医薬、ゴム加硫促進剤、陶磁器・ガラス原料、洗剤等、合成樹脂、繊維用添加剤、紙用添加剤、その他電子材料等製品、触媒、メッキ剤

 こちらも酸化物ということで不燃性なので危険性はそれほど目立つわけではありません。
 しかし、臓器の障害として 呼吸器系, 全身毒性があげられ、生殖毒性のおそれの疑いがあるほか、急性・慢性ともに水生生物への非常に強い毒性が指摘されています。が、毒劇の対象外。

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